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長時間の大音量で聴力が落ちる 世界の若年層の約11億人は要注意の「騒音性難聴」

NEWSポストセブン / 2023年1月8日 16時15分

ヘッドホン難聴が増加しているという(イラスト/いかわやすとし)

 ヘッドホンやイヤホンを使い、大音量で音楽などを聴き続けることで発症するのがヘッドホン難聴だ。これは騒音性難聴の一つで、WHOでは世界の12~35歳の約11億人に難聴リスクがあると推計している。騒音性難聴を発症すると4000ヘルツの音が聞き取りにくくなり、日常生活にも支障をきたす。音楽ライブの翌日などに耳が塞がった感じが残る場合は早急に耳鼻科を受診すべきだ。

 騒音性難聴は10~20年かけて騒音が激しい職場、例えば炭鉱や造船所などの従事者が発症していた。現在は音を遮断するヘッドホンの着用や定期的な聴力検査が義務付けられており、職場での騒音性難聴は減少している。

 その一方で増加中なのがヘッドホン難聴である。ヘッドホンなどを長時間使用し、スマホや音楽プレイヤーなどから大音量で音楽を聴き続けたりすると発症するのだが、当初は難聴を自覚しにくい。

 JCHO東京新宿メディカルセンター耳鼻咽喉科の石井正則診療部長に話を聞いた。

「ヘッドホン難聴は内耳の蝸牛にある有毛細胞という聴毛の一部が傷むことで起こります。なぜか4000ヘルツの音域だけが落ちるので、か行、さ行、た行、は行の声帯を使わずに発声する無声子音が聞き取りにくくなってしまいます。例えば“さとう”が“かとう”に聞こえ、“しちじ”が“いちじ”に聞こえるため、日常生活でトラブルになることもあります」

 調査によればヘッドホンなどを使い、スマホや個人用音楽プレイヤーで音楽を聴く人は音量を105デシベル以上に設定するケースが多いという。

 ライブ会場でも100~112デシベルの音量の中に長時間滞在するせいで騒音性難聴のリスクが高まる(成人の聴力許容レベルは80デシベル。電車内や飛行機の機内といわれている)。さらにライブ終了後、会場の外に出た際、耳がぼわ~んと塞がったように感じる時は要注意だ。翌日になっても耳が塞がった感じが残っていたら難聴の初期が疑われるため、耳鼻科での受診が欠かせない。

 WHOはヘッドホン難聴予防の目安として80デシベルの音は1週間に40時間内にとどめようと啓蒙し、90デシベル(オートバイの爆音程度)は1週間に4時間以内と厳しい条件を推奨している。

「電車の中など周囲がうるさい環境で音楽を聴く場合、どうしても大音量になりがちです。これを防ぐにはノイズキャンセリング機能が付いたヘッドホンやイヤホンが効力を発揮します。周囲の騒音をカットするので、音量を下げることにも繋がります。大音量で障害された聴毛は元に戻りません。だからこそ、ヘッドホンやイヤホンなどの使用時間を短くし、意識的に耳を休ませることが大切となります」(石井診療部長)

 ヘッドホン難聴だけではなく、突発性難聴患者も年齢を問わず増えてきている。また難聴は耳鳴りの原因であり、耳鳴り患者も多い。その中には聴力検査で難聴がないのに耳鳴りを訴える患者がいる。

取材・構成/岩城レイ子

※週刊ポスト2023年1月13・20日号

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