NHKネット進出の欺瞞 稲葉新会長が取り組むべき小泉政権の“宿題”とは
ITmedia ビジネスオンライン / 2023年1月9日 7時53分
政治家のスタンスも基本は似たようなもので、やはり民間メディアが民営化反対である以上、彼らを敵に回すことになるような言動は避けたいという保身から、あえて火中に栗を拾うような者は出てこなかったというのが過去の流れなのです。
中でも強烈に記憶に残っているのは、NHKの民営化議論が最大に盛り上がった小泉純一郎政権下の2005年の出来事でした。この折には、NHK職員の不正問題やセクハラ問題、さらにはやらせ報道が立て続けに発覚したことで「NHKの経営体制見直しを検討すべし」との過去にない世論の盛り上がりがありました。
郵政民営化論を持論とする小泉首相の政権運営は「聖域なき構造改革=小泉改革」の真っただ中にあり、NHK問題も複数の有識者会議で議論がなされ、軒並み「公共放送見直しすべし」との結論が出されてもいたのです。
●メディアを味方に 印象操作に長けた“小泉劇場”
ところが、公共放送見直し機運が現実のものになろうかと思われた矢先、小泉首相は「NHKの民営化はしないという閣議決定(01年の「特殊法人等整理合理化計画」でのNHKは特殊法人のまま維持するというもの)を踏まえた方がいい」と突如NHKの経営形態見直しはしないという趣旨の発言をしたのです。
突然の心変わりの裏に何があったのかは知る由もなく、NHKも民放もこの発言に胸をなでおろして無言を貫き、盛り上がりかけた見直し機運はあっけなく終息しました。メディアを味方に付けての印象操作が上手かった小泉政権だけに、民放との関係を重視した結論だったのではと思うところではあります。
●変化する公共放送の役割 ネット業務拡大は生き残り策
以後、公式の形で公共放送としてのNHKの存在意義を問う機会はほとんどないまま、17年の月日が流れました。公共放送としてNHKが発足したのは、戦後間もない1950年のこと。発足当時は民間放送局もまだ存在せず、戦後日本の復興を情報面から支えるという大役を担った公共放送としてのスタートでした。
それから70余年、民放の多局化、メディアの多様化、ネット媒体の隆盛に伴うライフスタイルの変化などを受けて、公共放送の役割も大きく変わって当然です。その抜本的な見直し議論をすっ飛ばして、自己の生き残り策としてネット業務の拡大を求める現状のNHKの姿勢には疑問符しか浮かばないのです。
●仏→受信料廃止方針、英→受信料全面見直し
海外でも今年、公共放送のあり方についての議論は活発化しています。フランスではマクロン大統領の選挙公約として公共放送の受信料廃止方針が示され、国の税金で賄う方法に移行される見通しとなりました。NHKが開局以来、手本としてきた英BBCも、そのあり方を全面的に見直す白書が今春提出され、受信料の徴収を2年間凍結して組織運営の抜本的見直しに入ったと伝えられています。
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