柿の実が色づく季節である。その木を目にすると、幼いころの記憶がよみがえる。木の下で遊んでいて手が葉っぱに触れた瞬間、電気が流れたような痛みに襲われた
▼イラガの幼虫に刺されたのだ。ガの一種で、幼虫には無数のトゲがある。刺されると「痛っ!」では済まない。「うわぁ!」と叫びたくなるような激しい痛みだ。しびれたような嫌な痛みに数日悩まされることになる
▼インターネット上にはイラガのトゲをはるかに上回るような言葉があふれる。先日の本紙おとなプラスは、ニュースサイト「ヤフーニュース」のコメント欄に多数のヘイトスピーチが書き込まれていると報じていた
▼広島県の朝鮮学校を取り巻く差別についての記事には200件以上のコメントが付いた。大半が朝鮮学校を中傷し、在日コリアンを差別する内容だったという。サイトの運営企業は11月中旬から、投稿には携帯電話番号の登録が必要になる対策を導入する
▼芸能人やスポーツ選手が中傷されるケースも相次ぐ。被害者の心の痛みはイラガに刺されたものとは比べものにならないはずだ。数日我慢すれば消えるものでもない。中傷に苦しんだ女子プロレスラーが自殺し、被害を訴えた母親も中傷されたケースも記憶に新しい
▼三重県議会は議員による差別投稿を禁じた条例改正案をまとめた。その発端は県議の差別的な言動だった。選挙でえりすぐられたはずの人物の言動を正すため、条例まで必要になるとは。この状況に暗たんたる思いになる。