前後、左右では一通りには定まらない
3つ目は、2004年に行われた千葉県立高校入試の国語で、地図を見ながらおじいさんに道案内する文を書く問題が出題されたが、約半数の生徒が0点だったのである。
そもそも地図の説明では以下の点が大切である。
図の表現で用いるものについては、それが一通りに定まるものであるか否かを常に確かめなくてはならない。改札口がいくつもある駅では、「改札口を出て左に行く」というような表現では一通りには定まらない。
前後、左右という言葉を用いるときは、それが自分の立場なのか、あるいは他人の立場なのかを確かめなければならない。向き合っている2人のそれぞれの方向を見れば、その理由は明らかである。
進む方向だけではなく、進む距離も述べる必要がある。「東京スカイツリーの方向に歩いていくと、目標の建造物が左側にある」と伝えるよりも、「東京スカイツリーの方向に約1km歩いていくと、目標の建造物が左側にある」というような距離を与える表現も必要である。
進む距離だけではなく、進む方向も述べる必要がある。「東京スカイツリーまで約1kmの距離にいる」と伝えるよりも、「東の方向に東京スカイツリーが見えて、そこまで約1kmの距離にいる」というような方向を与える表現も必要である。
上記の地図の説明力を育む学びで特に重要なのは、中学数学で学ぶ作図文である。
作図とは定規とコンパスで、正多角形や線分の垂直二等分線、角の二等分線などを描くものであるが、それらの手順を一歩ずつ述べる作図文こそ重要である。
それにもかかわらず、定規とコンパスで図を描くところまでは覚えるものの、昔と違って作図文の学びは省くことが多い。
だからこそ最近の中学生は、地図の説明などの論述力はあまり育まれないのである。ちなみに筆者が、拙著『新体系・中学数学の教科書(上)』(講談社ブルーバックス)で作図文の学びのところを相当詳しく述べたのは、その気持ちが強かったからである。