働かないおじさんが即戦力になる一石二鳥の真実 埋もれたままの知識やスキル、人脈を再活用する
その後、40代や50代になると、他者理解の能力が最も高まる。ハーバード大学医学大学院のローラ・ジャーミンとボストン・カレッジのジョシュア・ハーツホーンは、こう指摘している。
「人は何歳でも、ある種のことが上手になりつつあり、ある種のことが下手になりつつあり、ある種のことに関しては伸び悩んでいる。ある年齢で、すべての、あるいはほとんどの能力が頂点に達することはないのだろう」
長寿化は、高齢層の働き方にまつわる課題を生み出しているだけではない。職業人生を通じて輝き続けるために、人々がどのような選択をすべきかにも大きな影響を及ぼしつつある。人生が長くなると、職業人生の流れも当然変わる。
人が仕事で成功するためには、新しい世界に適応する能力に自信を持っていることが必要だ。そうした自信がある人は、仕事の中でより高度な課題を行えるようにアップスキリングに励んだり、まったく異なる職に転換するためのリスキリングに取り組んだりできる。
企業が社員のアップスキリングを手助け
一方、不安を抱いている人は、自信を持っている人とは比較にならないくらい学習と適応に苦労する。特に年齢を重ねていくと、それまでの自分たちが培ってきた知識やスキルが時代に合わなくなって、組織の中でも疎外感や無力感を覚えることは少なくない。
新しい知識やスキルを覚えられないからと言って、彼らを「給料泥棒」「お荷物」と責めても、何の解決にもならない。
働き手が新しい働き方に前向きになり自信を持つためには、自分の職種でどのような知識やスキルが必要とされるのかを知らなくてはならない。あくまでも本人が意欲的に行動することが大前提ではあるが、一部の企業は、社員がアップスキリングやリスキリングに取り組む手助けをしようとしている。
アメリカの通信大手ベライゾン・コミュニケーションズでは、スキルを持った人材の不足が大きな問題になっていた。現場の技師は、光回線のような新しいテクノロジーと銅線ケーブルなどの古いテクノロジーの両方をサポートしなくてはならない。古いシステムは次第に姿を消しつつあるが、新しいシステムに完全に置き換わるまでにはまだ長い期間を要する。