社会で子どもを育てるという発想が母親を救う

今西:素晴らしい活動だと思います。大山さんご自身の子育てはいかがですか。

大山:この1年間、無事に育って欲しいとただそれだけが願いでした。ただ、忙しくてほとんど記憶がないんです。やはり想像以上に多胎児の育児は大変でした。

今西:ぜひその辺を詳しく聞かせてください。双子となると、授乳もひっきりなしですよね。

大山:授乳とおむつ替えで全然眠れないと聞いていたので、覚悟していました。私はそこまで大変ではなかったですが、離乳食もお風呂に入れるのも2人分。どうやって回していくかということが常に頭の中にあります。脱衣場のすぐそばにベビーバウンサー(赤ちゃんをあやしたり寝かしつけたりできるベビーチェアのこと)を置いて、いつでも顔が見えるように話しかけられるようにしておき、1人を入浴させる、終わったら交代するという感じですね。

愛犬のだいずくんとも仲良しの双子ちゃんたち。写真提供/大山加奈
 

今西:パートナーの方は助けてくれていますか。

大山:はい。彼はフリーランスのメディカルトレーナーの仕事をしているので、時間の融通が効きます。私は双子のお世話に集中するから、家事分担は夫9、私が1というルールにして食事を作るのも彼が担当でした。

ただ、彼が仕事で出張という日もありますし、帰宅が遅くなることもあって、そういうときにはほとんどワンオペです。ただうちは、マンションのご近所さんが、愛犬・だいずを散歩に連れ出してくれたり、双子のお風呂を手伝ってくれます。実は、だいずの散歩をしているときに出会った方たちなんです。面倒見が良い方々ばかり。昭和の時代の人情づきあいみたいなことができているので、私は本当に恵まれています。

1歳のお祝いの家族写真。手前は双子の面倒をこまめに見てくれる大山さんの妹さん。写真提供/大山加奈

今西:それは、社会で子育てするという、理想的な形ですね。

大山:さらに、妹が近くに住んでいるので、妹夫婦も一緒に子育てをしてくれます。コロナ禍だったこともあり、妹はテレワークでしたので週2、3回は来てもらって、仕事をしながら双子の面倒を見てもらえました。多胎児の育児は、夫婦2人では厳しいときも多いですね。双子を連れ夫と2人で産後健診に行ったときに痛感しました。トイレにも行けないのです。常に、もう1人手が欲しいというのが正直なところですね。

今西:少し前に、3人の子どもが犠牲になった母子心中の事件がありました。子どもの年齢は0歳、2歳、4歳でした。授乳もし、保育園に通う子もいるという状況。こうした年齢の組み合わせは産後うつ病のリスクが高まります。特に相談できる環境にない方、ワンオペ育児の方は、ひとりで悩みを抱え込んでしまう。

また、家庭で起こる虐待の約6割は、親子心中につながるというデータもあります。大山さんが、今語ってくれたように、家庭によって子育ての状況や負担は違います。手伝ってくれる「手」の数も違うわけです。母子心中は、母親を逮捕しても解決する問題ではありません。支援が必要なときに十分な支援を受けられ、安心して誰かに頼っていいという社会にならないと、母親はどんどん追い詰められますよね。