ネットでバズった…東大卒・元Googleエンジニアの、百人一首を「五文字変換」の凄ワザ

すとう けんたろう プロフィール

猫の手も借りて5文字に

要約は、なるべく複数の句から意味を拾うように心がけています。その上で5文字に納めるには、結論だけを述べる、意味を逆から捉えてみる、隠喩や掛詞を使う、ことわざや慣用句をアレンジするなどが有効でした。

いい要約を思いついた時はかなりうれしいです。

特に気に入っているのは、前述の「洗濯日和だ」のほかに、

「契りきな かたみに袖を しぼりつつ 末の松山 波越さじとは」→「幻のなみだ」、

「君がため 惜しからざりし 命さへ 長くもがなと 思ひけるかな」→「死ぬの中止」、

「ほととぎす 鳴きつる方を ながむれば ただありあけの 月ぞ残れる」→「鳥見逃した」、

「見せばやな 雄島のあまの 袖だにも ぬれにぞぬれし 色はかはらず」→「涙で服変色」

あたりです。

 

反対に、

「ももしきや 古き軒端の しのぶにも なほあまりある 昔なりけり」→「古きを偲ぶ」

は、本当は「古きをしのぶ」にして「忍ぶ」と「偲ぶ」と「忍」の掛詞であることを強調したかったのですが、削るところがなくて止むなく漢字にしました。

要約以外の部分では、全ての歌に解説をつけるのが大変でした。特に、難しい単語も凝った表現技法もなく、作者にこれと言ったエピソードがないような歌は、話題をひねり出すのに苦労しました。

『5文字で百人一首』より

かと思えば、まれに清少納言のような、ネタが多すぎて余白の方が足りなくなる人もいます。解釈が参考書によって違うことがあるのも厄介でした。最終的には、よくわからないときは多数派または自分が好きな解釈を採用しています。

直訳は、いろんな本を参考にしつつも私なりのこだわりを反映したオリジナルのものです。

まず、語順をなるべく原文と同じにし、どうしても文として通じない場合だけ言葉を付け足しました。掛詞や序詞など、和歌ならではの表現も、意味を踏まえつつ自然な言い方になるように工夫しました。

また「~だろうか、いやない」とか「~であることよ」のような、いわゆる「古文の翻訳」でしか見たことがない不自然な言い回しは嫌いなので避けました。

さらに、元の歌の同じ箇所に同じ種類の傍線が引かれるようにしてもらいました。古語と現代語の対応を見つけやすくして、わざわざ文法を解説しなくても、古文と現代文の違いと共通点を感じてもらおうという目論見です。

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