最高時速85キロの“三輪自動車”イセッタの魅力 69歳オーナーの夢は「北海道一周」
世にも珍しい“三輪自動車”でドライブを満喫。見た目がキュートで小さな、1961年式の「BMW イセッタ 300 ブライトン」を駆る、岐阜県瑞浪市の伊藤博之さん(69)のカーライフとは。
「BMW イセッタ」が愛車 ドイツ国旗のカラーリング「メッサーシュミット」も相棒
世にも珍しい“三輪自動車”でドライブを満喫。見た目がキュートで小さな、1961年式の「BMW イセッタ 300 ブライトン」を駆る、岐阜県瑞浪市の伊藤博之さん(69)のカーライフとは。
「もともと冷蔵庫メーカーが開発したんだよ。排気量は300CCで、最高速度は85キロぐらいかな。これでも2人乗りができるよ」
前輪が2つで、後輪が1つ。鮮やかなブルーの車体が印象的だ。「Isetta」の文字、BMWのロゴマークは外装をおしゃれにカスタムしたのだという。
伊藤さんは「いわゆるバブルカーが好きなんです」。コックピットのような小型ドイツ車「メッサーシュミット」も大好き。高校1年ぐらいの時に、「映画『危いことなら銭になる』を見て、メッサーシュミットが出てきて、『こんなすげえやつがあるんだ』と興味を持ったんだよ」。
30歳の頃に1度メッサーシュミットを手に入れるチャンスはあったが、売り主が土壇場で「やっぱり売らない」と翻意して断念。40歳を過ぎて、ようやくメッサーシュミットを買うことができた。現在も大事に乗っており、黒・赤・黄のドイツ国旗カラーに。「当時は本当にうれしかったですよ。イセッタでもメッサーシュミットでも、よく山道を走るんだけど、メッサーシュミットは雪道に強い。下手したら、スタッドレスのランクルを超えます」とのことだ。
実は、イセッタは別の個体を一度所有したことがあるが、メッサーシュミット、バイクの3台持ちになったため、「サラリーマンの身で、管理・維持するのがちょっと大変で、手放しちゃったんです。それでも、後ろ髪を引かれる思いはずっとあってね。どうしても欲しかった」。約7年前に、知り合いからこの愛車を譲り受けた。
三輪乗用車は「乗りやすさ」が気に入っているという。「イセッタは楽に乗れる。まあ、高速で大型車やバスに追い抜かれると、横に飛ばされそうになるけどね」と笑う。
過去には、京都・嵐山までドライブ。イセッタでは「トレーラーで引っ張って北海道に渡って、ぐるっと回ったんだよ」とのこと。
そして、伊藤さん流のドライブの楽しみ方がある。それはハイエースの中にイセッタを積んで移動する“搭載型”のスタイルだ。「ハイエース・グランドキャビンに積み込んでね。1年ちょっと前にこれで四国一周したんだよ」というから驚きだ。
イセッタとメッサーシュミットは相棒であり、「女房の次に大事な存在」。旧車だけに、手間のかかるところにも愛着を持っている。「古い車は会話をしながら乗らないといけないんです」。今回、都内で行われたヒストリックカー・ラリーに参加した。ハイエース搭載で東京まで走ってきたが、イセッタが肝心のレース当日にまさかのエンジントラブル。急きょ友人に電話をしてアドバイスを受けながら、エンジンを調整。復活したイセッタで無事に都内周遊を楽しんだ。
充実のカーライフ。「この先どうなるか分からないけど、自分の年齢を考えると、あと5、6年もしたら手放す時がくると思うんですよ。そう考えると寂しい思いもあるんだよね。これまで手放すことになった仲間たちを見てきているのもあって。いずれ自分の時もくるのかな。でも、動かないメッサーシュミットを20数年の時間をかけて、調べては直してを繰り返して、高速に乗れるように整備してきたんです。その段階を踏んできているんです。もし、誰かに乗ってもらうことになったとしても、今のように走れる状態で引き取ることになる。相手がそれまでの苦労を知らないと、すぐに転売されちゃうなんてことも考えて……。ちょっと複雑でもあるかな」。率直な思いを聞かせてくれた。
伊藤さんの夢は膨らむ。「女房と犬2匹と一緒に、ハイエースで北海道を一周したいんだ。女房と相談だけど、できればイセッタを積んでね」と目を輝かせた。