「冬山なめんなよ」相次ぐ遭難に山小屋あ然 寒さでスマホは動作せず 記者が目撃した現場
年始早々、各地で山岳遭難事故が相次いでいる。山梨県と長野県にまたがる八ケ岳連峰では、先月31日の大みそかに入山し年越し登山をしていた山口県の60代の男女4人が今月2日に救助された。同日午前には愛知県の会社員男性(48)が「岩場で転落して身動きが取れない」などと救助を要請、いまだ捜索中とみられている。富士山では3日、行方不明となっていた静岡県の男性(28)が登山道から外れた場所で遺体となって発見された。
南八ケ岳で2つの山小屋を運営する「赤岳鉱泉・行者小屋」がSNS上で注意喚起
年始早々、各地で山岳遭難事故が相次いでいる。山梨県と長野県にまたがる八ケ岳連峰では、先月31日の大みそかに入山し年越し登山をしていた山口県の60代の男女4人が今月2日に救助された。同日午前には愛知県の会社員男性(48)が「岩場で転落して身動きが取れない」などと救助を要請、いまだ捜索中とみられている。富士山では3日、行方不明となっていた静岡県の男性(28)が登山道から外れた場所で遺体となって発見された。
年明け早々、遭難事故が相次ぐなか、山小屋が行った注意喚起の投稿がSNS上で話題を呼んでいる。
インスタグラム上で注意喚起を行ったのは、南八ケ岳で2つの山小屋を運営する「赤岳鉱泉・行者小屋」。投稿では「赤岳山荘へ金属製タイヤチェーンの未装着車で上がろうとしても結局は上がれずに待避所へ車を放置する、または赤岳山荘での駐車料金を払いたくないから林道の待避所に車を放置する方、赤岳鉱泉まで秋山感覚程度の防寒対策でお越しになっている方、厳冬期の赤岳をヘルメット無し、ピッケル無し、アイゼン無し、トレランシューズのみで登って武勇伝みたいに語っている方など、もう驚きを通り越して唖然としてしまう混沌とした日常が年末年始の南八ヶ岳では繰り広げられています」と登山者のモラル低下や装備不足について長文で言及。
「こんなに秩序が乱れている無法地帯な年末年始は初めてです。こんなことが続いていたら、重大な事故や遭難がいつ起きてもおかしくない。新年早々に低レベルな #注意喚起 の投稿をなぜ行わなければならないのかと憤りを感じますし、リスクマネジメントを行いながら良識ある行動で冬山を楽しんでいる方々には申し訳ないです」と強く注意を促しつつ「常に思慮深く冷静に謙虚に #冬山なめんなよ」と結んでいる。
実際の冬山とはどのようなものなのか。登山歴5年のENCOUNT記者は2日、美濃戸口から南八ケ岳に入山し、投稿が話題になった赤岳鉱泉にテント泊。3日に硫黄岳に登って来た道を往復し美濃戸口に下山した。防寒着の他、ピッケル、アイゼン、スコップ、テント、寝袋などを入れたザックの重量は15キロほど。宿泊地・赤岳鉱泉の気温は氷点下20度で、分厚いミトンのグローブを外して薄手の手袋でテント設営に取り掛かると、寒さで5分と立たずに指先にちぎれるような激痛が襲った。
事前に予約した夕食は山小屋とは思えない豪勢なメニューで、初対面の登山者同士で会話に花も咲いたが、はたから見ても装備や経験に不安を感じる人もいた。60代だという男性は「八ケ岳は20年前の夏に来た以来で冬山は初めて。今日はコースタイムの倍以上の時間がかかったが、明日は日の出前に出発して硫黄岳から赤岳まで縦走するつもりだ」と話していた。
翌朝は7時に出発し硫黄岳へ。下は晴天でも山頂付近は風が強く、写真を撮ろうと懐から取り出したスマートフォンは寒さで動作しなかった。今は登山でもGPSつきの地図アプリが主流だが、冬山ではたとえ晴れていてもホワイトアウトになる危険性があり、あらためて紙地図とコンパスでの読図の大切さを痛感した。
今回の入山中にも何件か救助要請があったようで、山小屋には数人からなるレスキュー部隊がひっきりなしに訪れ、しきりに無線で連絡を取り合っていた。下山後にバスを待っている際にも「脚が折れているから抱えて下ってきた」「懸垂下降もできずにアイスクライミングするなんて」という救助関係者の愚痴が聞こえてきた。
まとまった休みが取れる年末年始は前もって登山の計画が立てやすい一方で、たとえ天候が荒れても「せっかく計画したのだから」と無理して入山してしまいがちな時期でもある。昔から「山は逃げない」と言われるように、冬山ではより一層慎重な行動を心がけたい。