路面電車に女性専用車両が導入
熊本市交通局が、市内で運行する路面電車について、朝の通勤ラッシュの時間帯などに“女性専用車両”の試験導入を開始するという。
路面電車への導入は初とのことで、バリアフリー対応されている超低床車両の路面電車が対象、2両編成の進行方向に対し、後方の1車両に導入される。
区間は、健軍町~熊本駅前・田崎橋間と健軍町~上熊本間の上下線で所要時間は1時間以内。期間は9月14日~12月28日までで、平日午前7時頃~午前9時頃の朝のラッシュ時となっている。
車両の位置を明確にするために、車両窓ガラス・乗降口・連結部にステッカーを貼るという。
また、この女性専用車両には、小学生以下の男児や障がい者(介護者を含む)も男女問わず乗車可能で、熊本市交通局は「任意の協力をお願いするもので、男性のお客様が乗車された場合でも、乗務員が直接注意を行うことはありませんが、乗車の際にご協力の呼び掛けを行います」としている。
車内の迷惑行為を防止する取り組みは必要だが、2両のうちの1両を女性専用車両にすることで、もう1両が混雑してしまうことはないのか?男性からの反応はどうなのか?
熊本市交通局・運行管理課の担当者に話を聞いた。
現在も区間によっては乗車率が100%を超える
ーー“女性専用車両”を導入することになったのはどうして?
今回の試験導入を行う背景には、残念ながら市電車内で痴漢や盗撮等の迷惑行為が毎年発生しており、その被害者のほとんどが女性のお客様であることから、女性のお客様に少しでも安心して市電をご利用いただける環境を提供するため、実施することといたしました。
ーーなぜ、この車両になった?
女性専用車両を導入するにあたっては、単車(1両)では物理的に区切ることが不可能なため、2両連接車両で毎日運行している車両を選択した結果、今回の超低床電車となりました。
ーー乗車方法など変更点や注意点は何かある?
女性専用車両には前方車両と後方車両ぞれぞれ1カ所に乗降口がありますが、乗車・降車される際については、今までどおり全てのお客様がどちらを利用していただいてもかまいません。
ご乗車いただいた後に、男性のお客様にはご協力をいただき、前方の車両へ移動いただきますようお願いいたします。
ーー朝のラッシュ時の導入だが、混雑の状況に問題はない?
今回試験導入する時間帯については、朝の通勤通学で利用者が多い時間帯のため、現在も区間によっては乗車率が100%を超えます。
そのため、女性専用車両を導入することで、当該車両とその前後の車両の混雑状況(乗車率)がどう変化するか調査し、本格導入に向けた検討材料とする予定です。
ーー1両を女性専用にすることでもう1両の混雑度はどのくらいになると想定?
今まで男女関係なく乗車していた利用者が、女性専用車両導入によって、それぞれ男性女性に分かれて乗車するということなので、残りの車両の混雑度にはそれほど変化はないのではないかと考えています。
ただ、別の時間帯を利用していた女性が、専用車両を利用したいと考えることで、女性専用車両の混雑度が少し上がるのではないかとも思っています。
実際の所、どうなるのかが本当に分からないため、今回の検証でその部分も分かればよいと考えています。
ちなみに、導入される時間帯(午前7~9時)は、女性専用車両がない路面電車も運行していて、この時間帯に運行している33本のうち5本が女性専用車両となる。
特に県外在住の男性から反対意見が多数
ーー“女性専用車両”導入に対しての反響は?
(男性の反応・反響)
特に県外にお住まいの方から、女性専用車両導入に反対する意見を多数いただいております。
(女性の反応・反響)
市電をご利用いただいている数名のお客様から、感謝の声をいただいております。
さまざまなご意見やご提案を頂きありがたく思います。
試験導入を通じて頂いたご意見やご提案も参考とさせていただきながら、本格的な導入に向けて慎重に検討していきたいと思います。
ーー路面電車初の試みに対してはどう思う?
路面電車で女性専用車両の導入が進まなかった背景には、1両編成の車両が多数を占める事業者が多く、女性専用車両を導入することが難しい環境にあること。
また、実施しても一部の車両のみの導入となることに、抵抗があるのではないかと考えております。
路面電車における女性専用車両が、車内での迷惑行為防止に寄与するのか。今回の試験導入のなかで検証し、他の事業者の参考になることを期待しています。
ーー利用者にはどう受け止めてもらいたい?
今回試験導入を行うことで、特に男性のお客様には一定のご不便をおかけする事になるかもしれませんが、車内での迷惑行為防止に市電をご利用いただいている皆さまのご理解、ご協力賜りますようよろしくお願いいたします。
女性専用車両を導入しても、もう1両の混雑度はそれほど変化がないと想定していて、今のところ、路面電車を利用する男性からの反対意見はあまり寄せられていないという。
熊本市交通局は「車内での迷惑行為が減少し、誰でも安心して市電を利用出来るようになってほしい」と、安心して利用できる環境作りとして期待をしているが、本格的な導入に関しては、試験導入の期間中に実施されるアンケートや利用者の意見、試験導入によって出た課題などを含めて、検討されるという。
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