第一の業務として、経済調査部にて日本経済の短期・中長期経済予測に携わっています。新型コロナウイルスのワクチン接種費用などが計上される政府消費や、景況感を敏感に反映する鉱工業生産指数の分析・予測を担当しているほか、その時々のマクロ経済の関心事についても分析レポートを執筆しています。最近では、日本で2020年に1人10万円が支給された特別定額給付金の使い道を分析したレポートや、新型コロナウイルスのワクチン接種の進展に伴う経済の“リオープン”を分析したレポートなどで、投資家のお客様からご好評を頂きました。海外経済の分析はまず情報収集に大きな価値がありますが、日本経済の場合は分析の深さに重きが置かれます。経済理論や実証分析のスキルを活かして、経済の先行きや投資のヒントを導くことが求められます。
第二の業務として、エクイティ・リサーチ部ESGチームの一員として、ESG投資の動きをグローバルな政策・経済の観点から分析しています。例えば、急騰するEUの排出量価格の価格形成メカニズムを機械学習の手法で分析したレポートや、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)報告書の政策的な含意をまとめたレポートを発行しています。ESG投資はグローバルに急拡大していますが、その経済的な含意は十分に咀嚼されていません。この新しい取り組みを、投資家のお客様と共に解釈し、形作っていく過程は本当にエキサイティングです。
東日本大震災の経験は、忘れられません。震災発生直後は情報も錯綜しており、日本に何が起きたのかさえ把握困難でした。しかし、震災が日本経済に大きな影響を及ぼすことは明らかでした。居ても立ってもいられなくなった私は、震災発生の翌3月12日に自主的に出社し、たまたま居合わせたチーフエコノミストと共著でレポートを発行しました。断片的な情報を組み合わせて被害地域を特定し、阪神・淡路大震災の経験から教訓を引き出すなどして、世界中の投資家に有益な情報発信ができたと思います。
ただ、その後の展開を読むことはできませんでした。震災後の日本経済は、原発事故や電力不足、自動車のサプライチェーン問題、人々の買い控え、超円高、エネルギーコストの高騰など、大きな経済変動に見舞われました。エコノミストとして、こうした厳しい展開を読み切れなかったことには、今でも悔しさを感じています。経験不足と言ってしまえばそれまでですが、もっと歴史に学び、統計を深く理解し、そして地道に情報を集めて想像力を働かせることができたのではないか。今でも、東日本大震災の経験をときどき思い出し、エコノミストとして自己研鑽を積む糧としています。
エコノミストの仕事における「もなか」とは?
就活生の皆様へ
エコノミストの仕事は、ズバリ「も・な・か」を揃えることです。「もしかして」と想像力を働かせて、未だ見ぬ経済の未来像を提示します。景気のシナリオや、経済構造の変化を論じるわけです。しかし、根拠のない想像は妄想に過ぎません。そこで、「なんでだっけ?」と自分に問いかけます。未来に向かう現在の景気動向・経済構造を仔細に分析し、未来像のヒントを炙り出すのです。ただ、いつでも「なんでだっけ?」の問いで簡単に未来像の根拠が浮かび上がるわけではありません。こんなデータはないだろうか…と思い悩むのが常ですが、そこで諦めてはいけません。理想的なデータが簡単に見つかることなど、そうそうないからです。そこで「かしこく」考えます。複数の統計を組み合わせてみたり、統計の解釈を再考したり、新しい分析手法を試してみたり。マクロエコノミストの腕が試されるのは、ここでしょう。
「もしかして」と想像した未来を、「なんでだっけ」と分析し、「かしこく」データ分析を提示するのです。この三要素が上手く重ね合わさると、美味しい「もなか」ができるという寸法。想像力・分析力・発想力を総動員して、あなたも経済分析の仕事をしてみませんか。