「藤野さんといる時の父は楽しそうでした」。
お客様のお子様からいただいた言葉。
私自身が支店の営業担当者としてキャリアを重ねてきた中で、今も強く心に残っているのが、入社10年目で赴任した関西地方の支店でのお客様との出会いです。大手企業のオーナーやご一族の資産管理を総合的にサポートする部署で、私はある製薬メーカーのオーナーのお客様を担当することになりました。
引き継いだ当初は、ご挨拶に出向いた際にお客様との間に距離があるように感じたこともありました。なんとかその距離を縮めたいと思い、ほぼ毎日、その企業を訪問するようにしたのです。すると、ある日社長が「一緒にランチでも、どうかな」とお声を掛けてくださり、以後は自然と毎日ランチをご一緒するようになりました。お食事をしながら構想中の事業のお話や、会社経営のお悩み、若かりし日の思い出など、様々なお話をしてくださいました。もちろんお取引の面でも野村證券をパートナーとして選んでいただき、営業担当者として大きな自信を得ることができました。
社長がなぜそこまで私を可愛がってくださったのか、正確なことは分かりません。おそらく、社内ではいつも周りの方に気を遣われてしまう社長にとって、率直に自分の意見を述べる私のような人間が面白かったのかもしれません。3年間、毎日ランチをご一緒するという後にも先にもない貴重な経験をしただけでなく、社長のお孫様の就職活動のご相談を受けたり、私が結婚した時は妻も含めてお食事にご招待いただいたりと、まさに仕事の垣根を越えたお付き合いとなりました。
その後社長はご体調を崩されて出社されなくなり、その頃に私自身も関東の支店へ異動となりました。後任から「あの社長が亡くなられた」という知らせが届いたのは、それから1年ほど経った頃でした。ご家族からの「お別れの会には藤野さんにも来て欲しい」という伝言があったと聞き、すぐ関西に駆けつけました。久しぶりにお会いした社長のお子様から、「藤野さんといる時の父は、本当に楽しそうでしたよ」とのお言葉をいただいた時は、まぶたの裏に社長のお顔が浮かんで胸が一杯になりました。社長のお孫様たちや社員の方々も私のことをよく覚えてくださって、皆様からお声を掛けていただき、まるで社長のファミリーの繋がりに入らせていただいているようにも感じました。この貴重な体験は、私自身の仕事観にとって大きな道標となっています。