//////////////////////////////////////////////////////////////// マスコミに騙されないための国際政治入門 https://foomii.com/00184 //////////////////////////////////////////////////////////////// (国際情勢記事の見本) 昔からよく聞かれる質問に「LINEを使ってもだいじょうぶか?(安全か?)」があります。 安全かそうでないかはいずれも断言ができませんが、いつも「私は使っていません」と答えています。安全ではないと断言はできないけれど、私は安全でないと思っていることになります。 LINEに先行して使われていたアプリに「カカオトーク」があります。カカオトークは韓国の会社が開発して、現在も韓国ではよく使われています。私も当初使っていました。見た目も使い勝手もLINEそっくりです。 そのカカオトークが、韓国国家情報院(前のKCIA)に監視されていたことが2013年に発覚しています。情報院がカカオトーク側に盗聴できるように要請し、カカオトーク側もそれを飲んだようです。 そのことがマスコミにすっぱ抜かれると、カカオトークのユーザーは大きく減りました。 ところで、LINEには不思議なことが2つあります。 1つは先述したようにカカオトークにそっくりなことですが、もう1つは韓国企業のNAVERが開発しているのに、なぜか「日本発」「日本製」「和製アプリ」と、やたらと日本のものであると連呼されることです。 でも、いくらLINE側が「日本発だ」と言っても、親会社が韓国企業のNAVERである以上、私は韓国製だと考えています。 もちろん、日本の暗号化技術を使っているので、安全性が高いのは確かです。でも、それはリアルタイムで盗聴できないということであって、個人情報が本当に守られていることを意味しません。LINEは最終的に韓国NAVERのものです。 日本のLINEがいかに安全性に気を配ろうが、肝心のNAVERが国会情報院に圧力をかけて情報をとっている可能性はあると考えています。ですから、日本政府や地方自治体がLINEを利用するのは反対ですし、いわんやマイナンバーに紐付けするなど、論外だと思います。 ところで、話は変わります。 最近、中国の動画アプリが話題になっています。中国企業であるバイトダンスのTikTok(ティクトク)です。 TikTokは15秒から数十秒ほどの短い動画を好きな音楽を作って作れるアプリで、若者を中心に大流行しています。 そのTikTokを、2019年初めに、アメリカのシンクタンクであるピーターソン国際経済研究所が、スパイアプリだと指摘しました。 また、アメリカ共和党の有力上院議員であるマルコ・ルビオが、TikTokを運用するバイトダンスによる、やはり中国企業であるMusical.lyの買収にクレームをつけています。認めるべきではないというのです。 これはちょっと不思議な話です。この点をちょっと考えてみましょう。 実は、TikTokとMusical.lyの関係は、カカオトークとLINEにいくぶん似ています。というのは、Musical.lyもTikTokと同じ短時間動画を作るアプリで、両者はそっくりなのです。 バイトダンスはすでに中国共産党の影響がかなり強まっています。いわば、中国共産党の力をバックに世界に浸透させたのがTikTokだというのが私の考えです。 Musical.lyのほうはカリフォルニア州発で、どちらかといえば、アメリカ企業です。とはいっても、創業者も幹部も中国人なので、やはり中国企業と呼ぶべきで、この買収の意味も、クレームを付ける意味もよくわかりません。 では、買収にはどんな意味があり、ルビオ氏は何を問題視しているのでしょうか。 TikTokがスパイアプリだと考えるとわかってきます。 まず、TikToKを世界の短時間動画作成の定番アプリにするために、オリジナル技術を持つMusical.lyが世界に浸透する芽を積んでおくということです。TikTokによる世界制覇を確立するため、同じ中国企業とはいえ、中国共産党の影響が及ぼせないライバルの普及阻止に入ったというわけです。そう考えると、ルビオ氏が問題視するのもわかります。 ・・・というのが、私の考えです。中国の脅威はごく身近なスマホを通して迫っています。くれぐれもご用心ください。 ¬¬¬¬¬¬¬ (英語系記事の見本) 今回は英語を勉強する回として、7月19日のニューヨークタイムズの記事を取り上げます。 ニューヨークタイムズの英語は硬質で、分量も長く決して読みやすくはありません。ただ、以前のように華美なレトリックなどは使われなくなっていて、単語と背景知識さえきちんとおさえられれば、多くの人たちがなんとか読めるレベルです。 また、特筆すべきは、月1000円足らずで、バックナンバーも含めてかなりの分量が読めることです。また、世界中の知識人やビジネスパーソンが読んでいるので、英語でそのレベルを狙っている人たちには、必読は言いすぎでしょうが、読んでおいたほうがいいのは間違いありません。 さて、今回の記事ですが、韓国ソウル市にある日本大使館前に70代の韓国人男性が車を止めて、社内で焼身自殺をはかったという記事の一部です。男性は救急搬送されましたが、病院で亡くなりました。 原因は、おそらく日本が韓国をホワイト国から外したことへの抗議だと考えられます。 ニューヨークタイムズの韓国人記者がこのことを記事にまとめたのですが、そこに「韓国にはなぜ反日感情があるのか」について述べた箇所があります。 一部抜粋してみましょう。 ________________ A strong undercurrent of anti-Japanese sentiment pervades South Korea, where memories of Japan’s brutal colonial rule of Korea from 1910 to its World War II surrender in 1945 are kept alive through history books and aggravated by frequent territorial and other disputes rooted in the colonial era. https://www.nytimes.com/2019/07/19/world/asia/south-korea-fire-protester.html ________________ undercurrentはunder(下に)+current(流れ)なので、「底流」の意味です。これが動詞pervade(広く普及する)の主語です。「反日感情の強い底流が韓国に大きく広がっている」が最初の文の意味です。 カンマのあとのwhereはand there(そしてそこで)と言い換えると楽です。 where memories of … are kept aliveは「そしてそこ(=韓国)では、・・・の記憶が生き生きと保たれている」になります。through history booksと続きますが、ここは「歴史書を通して(生き生きと保たれている)」です。 上の表現のof … の…にあたるJapan’s brutal colonial rule of Korea from 1910 to its World War II surrender in 1945は、かなり長いですが、これで1つの名詞のかたまりです。意味は「1910年から1945年のそれの(=日本の)二次大戦の降参までの、日本の残酷な朝鮮植民地支配」となります。 and aggravated by frequent territorial and other disputesの最初のandはare kept alive through … and aggravated by …のように、areにつづいてkept …とaggravated …と2つの過去分詞を並べています。その次のandがterritorial とotherという2つの形容詞を並べて、2つともdisputesを修飾しています。 and (are) aggravated by frequent territorial and other disputes は「そして、頻繁な領土の、またその他の論争によって悪化させられている」となります。 rooted in the colonial eraはdisputesを修飾して「植民地時代に原因がある(・・・論争)」です。 全体の試訳です。 ________________ 根強い反日感情が韓国の奥底に広く浸透しており、1910年から二次大戦で敗戦した1945年までの日本による残酷な植民地支配の記憶が歴史書に刻まれ、植民地時代に発する数々の領土問題や他の紛争によってその感情は悪化している。 ________________ 留意したいのは、「残酷な植民地支配の記憶」が、「歴史書を通して」であるというところです。残酷な歴史があるとは断定していないのです。 あくまで、韓国で出版される歴史書ではそう書いてあって、それを韓国人が信じていると言っているわけです。このあたり、ニューヨークタイムズの韓国人記者は正確に書いています。 「ニューヨークタイムズは反日」と考えている人が多いでしょうし、実際、日本支社発の記事は日本をおとしめたものが散見されます。しかし、朝日新聞が慰安婦問題の「誤報」を認めたあたりから、記者にも韓国側の主張に疑問をもっている記者がかなり増えているのです。 韓国の一方的なプロパガンダで、軍人として戦った私たちの祖父たちは不当におとしめられてきました。でも、日本側の反撃も少しずつ聞き始めているのです。悪いところは悪い、間違っているところは間違っていると是々非々の態度をとることで、これからも地道に名誉回復していくべきです。また、それは実際じわじわと効果をあらわしています。 //////////////////////////////////////////////////////////////// 本ウェブマガジンに対するご意見、ご感想は、このメールアドレス宛に返信をお願いいたします。 //////////////////////////////////////////////////////////////// ■ ウェブマガジンの購読や課金に関するお問い合わせはこちら info@foomii.com ■ 配信停止はこちらから:https://foomii.com/mypage/ ////////////////////////////////////////////////////////////////
マスコミに騙されないための国際政治入門
白川司(評論家・翻訳家)