「接種を急げ」。総理から何度も電話が──
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▶「7月末」という目標設定には、7月23日から開催予定の東京五輪は全く関係ない
▶日本は感染者数が欧米に比べて少ないため、治験の結果が出るまでかなりの時間がかかってしまう。製薬会社はスピードを重視するので、その時点で日本はパスされてしまった。そこが、ワクチン供給が出遅れた原因の一つ
▶2回目の接種では、3人に1人の方に37.5度以上の高熱が出ている。ある程度の痛みや発熱は織り込み済みで打っていただくしかない
河野氏
なぜ日本のワクチン接種は遅いのか
今年1月にワクチン接種担当大臣を拝命してから、およそ5カ月が経とうとしています。
なぜ日本のワクチン接種は遅いのか。高齢者のワクチン接種は、菅義偉総理が目標とする「7月末」までに本当に間に合うのか——。
この数カ月、国民から内閣府にこのような疑問が寄せられていますが、この場できちんとご説明したいと思います。
現在進めている高齢者対象の接種は市区町村が主体となっていますが、東京と大阪では5月24日から、防衛省・自衛隊主体の大規模接種センターが立ち上がりました。これと同時に宮城、群馬、愛知でも県独自の大規模接種会場が設置されましたが、他にも手をあげている自治体はある。今後も相当な数に広がっていくでしょう。
接種スケジュールは地域によって千差万別です。例えば、鹿児島県の十島村は、5月26日までに希望する全ての住民への2回の接種を完了しました。高齢者以外も含めた、対象の住民全てです。
「次の段階に移りたいから、早くワクチンを供給してくれ」と急かしてくる自治体もあります。他方、人口規模が大きな都市ではそうはいきません。また、従来から医師不足などで苦しんでいる自治体に対しては、サポートを続けていきます。
とにかく今は、菅総理が示した「7月末までに高齢者対象の接種を完了させる」という目標に向かっています。現役世代への接種に早く進みたいというのが、総理の強い思いでもありますから。
「7月末」を強調
東京五輪との関係は?
「7月末」という目標設定には、7月23日から開催予定の東京五輪は全く関係ありません。どちらにしろ、大会は高齢者への接種完了前に始まってしまうわけですから。
ここは私の管轄外ですが、言えることは、今の状況で可能な大会を開催するしかないでしょう。「リオはこうだった」「北京はこうやった」と過去の事例を振り返ったって、コロナ下とは状況が全く違います。無観客にするとか、開催可能な運営方法をしっかり検討していくということだと思います。
「7月末」の“期限”が決まったのは、ゴールデンウィーク前に、私が菅総理に接種計画のスケジュール表を持っていったことがきっかけかもしれません。いつ頃までに高齢者の接種を完了できそうか、自治体ごとで色分けしました。7月末完了予定の自治体を緑色で塗っていたのですが、「こんな感じです」と差し出したら「思ったより7月末が多いな」と。正直なところ私も、自分で自分の首を絞めたなと思いました(笑)。
ただ、その時には感染力が高いとされるインド株の感染者が国内で発見されていましたし、大阪の医療体制も極めて逼迫していた。感染者に占める若年層の割合も増え、各自治体に急激に拡大している。菅総理としても、「一刻も早く」という思いがあったのでしょう。「これはもうワクチンしかねぇぞ。接種を急げ」と、GW中は1日に何度も電話がかかってくる状態。「あれはどうなった?」と、数時間おきに確認の電話がかかってきましたからね。
今だから言えますが、東京・大阪の大規模接種センターへのワクチン配送も大変でした。菅総理は「5月24日から始めろ」と言うんだけど、そこで使用するモデルナは5月下旬に承認予定だから間に合わない可能性がある(その後、21日に承認)。田村(憲久厚労相)さんに承認のスケジュールを確認したところ、「専門家が決めることなので、どうなるかは分からん」と。調整を続けていると総理が、「夜中に配送して、朝8時から接種を開始できないか」と追加で注文をつけてきた。そうこうしているうちに、県独自の大規模接種会場をつくることを検討していた愛知県の大村(秀章)知事と群馬県の山本(一太)知事から「東京と大阪が24日なら、うちも24日に欲しい」と。もう、てんやわんやでした。
大阪市に開設された大規模接種センター
ワクチンが製造ストップに
日本のワクチン接種率が、OECD加盟国の中で最下位なのはなぜなのか——。
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source : 文藝春秋 2021年7月号