■届いたワクチンの有効期限が予想外に短く「到底使い切れない」

どれくらいの人が接種をするのか予測が難しい上に接種率も伸び悩み、夏頃から23区などでワクチンが大量に余り始めました。東京都は余ったワクチンを都内の自治体同士で融通するなど手を打とうとしました。しかしワクチンが余っている状況はどこも同じで、融通先はほとんど見つかりませんでした。
さらに自治体を困らせたのは、届いたワクチンの有効期限の短さです。有効期限は事前に自治体には知らされず、届いてみなければ分かりません。A自治体では、半年ほど先まで見据えて発注したワクチンが、到着時すでに有効期限が残り3か月を切っていました。モデルナワクチンの有効期限は製造から9か月。輸送などの事情を考えてもあまりに短く、国から説明もないことにA自治体の担当者は「不信感以外の何物でもない」と怒りを露わにしました。結果、使い切れずに数万回分のワクチンを廃棄することになりました。住民と最前線で向き合っている担当者は憤ります。

A自治体の担当者
「使う努力はしました。でも余っても国に返せないから自治体で廃棄するしかない。廃棄したら今度は住民から怒られました。国は都合の悪いところは丸投げ」

7月。再び感染が拡大し第7波に突入しました。都内の新規感染者は3万人を超え、過去最多を更新していた7月の半ば、ようやく医療従事者への4回目接種が開始されました。この対応の遅れにより医療従事者の感染が相次ぎ、医療現場がひっ迫しました。

■関東で300万回廃棄 「新しいワクチンも余るかも」

10月以降、未使用のワクチンの有効期限がどんどん切れ廃棄されています。廃棄の現場を取材すると、期限切れのワクチンは未使用のまま「感染性廃棄物」と書かれた専用の箱に詰められ、業者によって処分施設へ運ばれていきました。処分施設では密閉された箱ごと高温で焼却されます。

東京23区への取材では、11月までに廃棄されたワクチンは100万回分以上。さらに関東1都6県にも取材範囲を広げると、12月末までに各都県の大規模接種会場分と政令市・中核市の分を合わせて、300万回分以上のワクチンが廃棄されていたことが新たに分かりました。
こんなにも多くのワクチンが廃棄されていることについて、国はどう考えているのでしょうか。

国の担当者
「国民が安心して接種できるよう対象者全員分のワクチンを確保している。余ることは仕方ない。期限が切れたものは捨てていくしかない。」

新たにオミクロン株に対応したワクチン接種も9月から始まりました。接種間隔は3か月に短縮され、11月に都内の新規感染者が1万人を超えた頃には接種する人が一時的に増加しました。しかし、その後の都内の接種率を見ると、11月は1か月で約17ポイント増えた(11月1日5.9%→12月1日22.5%)のに対し、12月は約1か月で12ポイント(12月1日22.5%→26日34.8%)と、接種ペースが遅くなってきています。自治体の担当者からは「このままいけば新しいワクチンも使いきれず余るかもしれない」という不安の声もあがっています。

多い人で5回目となった新型コロナのワクチン接種。2023年も続きそうです。自治体の担当者に「国に言いたいことは?」と尋ねると…。

A自治体の担当者
「何のために接種してるんですか?と。余ったワクチンを消費するために打ってませんか?と。接種回数も多いし接種間隔も短くなった。ワクチンを使い切れなくて余ってるからでしょと考えたくなります」

C自治体の担当者
「接種間隔も期限も接種対象もどんどん変わって、新しいワクチンも出てくる。方針もどんどん変わる、もう翻弄されるのは慣れましたよ。ワクチンは国の所有物、それを代わりに私たちが打っている。余った分は国に返したい、国の責任で何とか活用してと言いたい」

社会部東京都庁担当 寺川祐介・佐藤碧