藤田桜(小説、詩)

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藤田桜(小説、詩)
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アイデンティティの爆散 アイコンとヘッダーは尾八原ジュージさん()に描いて頂きました
kakuyomu.jp/users/24ta-sak…2021年4月からTwitterを利用しています

藤田桜(小説、詩)さんのツイート

いいのかなあ? とラッカは少し思ったが、トーリの顔を思い出すと、またムスムスしてきた。 「いや、いいよ! トーリだって私との訓練すっぽかしたんだから! こっちだってウソくらいついてやるもんね!」 そうして、ラッカとケンサクの二人は磯丸水産に入り、適当にメニューを頼んで酒を飲む。
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※※※※ ラッカはスマートフォンでミサキに連絡を入れてから、ケンサクが待つほうに戻った。 《ごめん。今日は女子寮で夕飯は食べない。隣町で調べものがあってさ》 《オッケ。でも、外泊は流石にナシだから》 《分かってるよ、ミサキ。ワガママ聞いてくれてありがと》 やべ~、ウソついちった。
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「え――」 スウィーテはトーリの整った顔をゆっくりと見つめた。184の身長、口もとの艶ぼくろ、センターパートの黒い髪。それから、 「じ、獣人は――警察のでも怖いです。ごめんなさい」 と言った。 「分かりました」とトーリは答えた。「今回の作戦からウチの猟獣は外します。安心してください」
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「獣人に抵抗はありますか?」 トーリがそう訊くと、スウィーテは顔を上げた。 「え?」 「ご存知かと思いますが、獣人捜査局には猟獣がいます。俺の第七班にも、頼りになる子がいる。ケモノをボディガードにつけることに、抵抗はありませんか。――正直におっしゃってください。俺しか聞いていません」
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バカげている、とトーリは思う。小さな子供がパニックになって挙動を停止しただけのことを、面白おかしく書いたヤツがいるだけだ。 「その3です」と彼は指を立てた。「俺たちは今から貴女の護衛に回ります。メディアへの出演は全てキャンセル。これから獣人捜査局の監視下に置かれます」 「はい」
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たしかに客観的には美人の部類に属する。だが、今はその輝きの全てを焦燥が消し去ってしまっていた。 《スウィーテはかつて、幼少期、実の弟を見殺しにした。彼が交通事故に遭って生死の境を彷徨ったとき、彼女はなにもせずただ歩道に立っていた》 それがスウィーテに対するバッシングの内容だ。
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バッシングは、犯人が言うように、事実無根のものですか」 「――答えたくないです」 彼女は、ぎゅっと拳を握った。トーリはそれを見つめる。――昔の俺と同じだ。脅威が現れ、自分の人生を脅かしても、なにもできることがなかった、あの頃の。 彼女の――スウィーテの、黒髪のロングヘアに隠れた横顔は、
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「警察官として、三点だけお伺いします。既に刑事課から受けた質問もあるかもしれませんが、許してください。貴女を守る以上は、貴女の口から聞きたい」 とトーリは言った。 「その1.今回の犯行に及んだ人物に心当たりはありますか」 「そんなの、ありません」 「その2.貴女がマスメディアで受けた
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「スウィーテさん」とトーリは言った。「いや――本名の岡部クリスさんで呼ぶほうがいいですか?」 「ど、どちらでも結構です」 俯いたままの彼女、その向かいにあるパイプ椅子を引きずり、トーリは彼女と斜向かいになるように座った。真正面にふさがって、相手を怖がらせないようにするためである。
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極度の恐慌状態だ。お前が緊張を和らげて、ボディガードとしての役割を果たせ。――ストーカーのクソ獣人を返り討ちにできたら万々歳だな。 そうショーゴは言った。 トーリは愛宕警察署の取調室に入った。スウィーテと呼ばれている歌姫が、項垂れて、震えながらパイプ椅子に座っているのが分かった。
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「そこでお前の出番だよ、トーリくん」 ショーゴは眼鏡をかけ直した。 「社会的な影響が強いからな、この件は第六班と第五班の合同捜査になる。だが、犯人に愛されているスウィーテの見張り番は必要だろ。彼女の護衛を第七班に担当させる、それが渡久地ワカナ局長の方針だよ」 彼女は警察署にいる。
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犯行名は、オペラ座の怪人だとか」 ――オペラ座の怪人。 それは美しい歌姫のために殺戮を繰り返し、最後は嫉妬に狂って破滅するゴシックホラーの古典的悪役だ。 「ナルシシズムの強い奴みたいだな」とトーリは言った。「そのスウィーテって子の精神状態が心配だが、マスコミとの連携はどうする気だ?」
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死体があった。つまり獣人案件の可能性がある」 彼がそこまで言うと、イズナがトーリに近づき、電子ファイルを渡すために彼の端末とBluetooth接続した。 「今回の獣人は」とイズナは言った。「犯行声明を現場に残しています。歌姫のスウィーテがメディアでバッシングされていることの報復だそうです。
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※※※※ 日岡トーリは新橋近辺の愛宕警察署に到着すると、そこで橋本ショーゴとイズナ=セトに合流した。 「状況は?」 「マンション内の現場は鑑識課がやってる」とショーゴは答えた。「酷いもんだ。被害者は生きたまま電動ドリルで脳をやられてるとよ。本来ならただの猟奇殺人だが、現場にミミズの
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「ね! 約束してよ!」とケンスケは言った。「ステージだったら、もっとオレ、すげえ演奏できるから!」 「そうなの?」 ラッカは、ぱあっと顔を輝かせた。「うん! 行くよ! 今よりもすげえの聴かせてよ!」 「はは、姉ちゃんノリいいなあ!」とケンスケは笑う。「よかったら飲みにいかねえっ?」
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それから頭を上げた。 「ありがと!」と彼は言った。「オレ、小木ケンスケ! 今度ライブやるからさ、見に来てくれよ!」 「ライブ?」とラッカは訊いた。「――ライブってなに?」 「あはは! 姉ちゃんもしかして天然系かなあ?」 青年は――ケンスケは、チケットを手に握るとそれをラッカに渡した。
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「――あはは!」 青年は笑った。 「一年間、ずっとここに立ってギターやってたけど、姉ちゃんだけだよ。そんな褒めてくれたの」 「褒めたつもりないよ。不思議なんだ。だって、こんなに良いのに――」 「ああも、分かった分かった! そんなにオレのこと喜ばせないでよ!」 青年は顔全体を手で隠して、
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やがて、演奏が終わった。 青年はギターを片付けながら「サンキュー!」と言った。「オレの歌、最後まで聞いてくれてたじゃんよ?」 「私、分かんないよ」 ラッカはそう言った。 「なにが?」 「こんなにキレイな歌声なのに、なんで誰も立ち止まらないんだ? ニンゲンって、みんな忙しいのかな?」
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――いい声だな、と思ってラッカはその場に立った。 通行人は誰も立ち止まらない。電話をしながら、スマホをいじりながら、あるいは、隣の誰かと話しながらその場を去っていく。 懸命にアコースティックギターで弾き語る青年は、ただひとり立ちすくんでいるラッカに気づき、声をさらに張り上げた。
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「はぁあ――」 ため息をつきながらラッカは東京の街を歩いていた。 すると。 駅前のロータリーで、アコースティックギターを弾きながら懸命に歌っている一人の青年がいた。ダッフルコートの厚着で、吐く息は白い。 ラッカは知らないが、それはOasisの『D’You Know What I Mean?』のカバーだった。
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「はひ――!」 ラッカは、わけが分からなくなりながら、その場を去った。 ――獣人にも人権が必要? いや、人権ってなんだよ!? 夜になっても、ラッカはなんとなく女子寮に戻れなかった。色んな街を見て回るのが楽しかったし、それに、真昼に出会った市民活動家のことがショックで、困っていた。
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「いや、そんなこと言われても」 ラッカは冷や汗をかいた。私その猟獣なんだけど、ということは言わなかった。 「ごめんなさい」と女は言った。「急に色々と言いすぎましたね。でも、このチラシは受け取ってください。今度、集会があるんです。ひとりひとりの声が、力になるんです! お願いします!」
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え? ラッカが呆然として立ちすくんでいると、リーダーらしい女が駆け寄ってきた。 「もしかして、興味がおありですか!?」 「興味? ま、まあ――」 「政府は獣人を人間と認めず、非人道的な駆除や、研究所送りにしているんです。しかも猟獣と言って、自分たちの道具にしています。どう思います!?」
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こっちも好き勝手してやるもんね!」 そうしてラッカが駅前に行くと、なにか、通行人にチラシを配っている連中がいた。 ――なんだ? 気になって、近づく。集団の言っていることが聞こえた。 『獣人も人間です! 獣人差別をやめましょう! 猟獣制度とシルバーバレット反対に協力お願いしまーす!!』
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※※※※ トーリに実地訓練をすっぽかされたので、ラッカは女子寮の周りを適当にぶらついていた。昔はできなかったことだ。今は単独行動の自由が認められているから、パトロールの名目で好き勝手にできる。 「トーリのバカ!」とラッカは思った。「私との大事な訓練すっぽかしやがって。だったら、
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《すまん、事件が発生した。オペラ座の怪人だそうだ。ラッカの力を頼ればいい案件なのかどうかもまだ分からない。――今日の夕方は自由行動にする》 「え」 ラッカはビックリして、何度も自分のスマホを覗き込んで、角度を変えて見直したりして、その文字列を再確認しまくる。 ――なんだよそれ、トーリ。
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