2022.12.29

ガーシーへの国策捜査開始は「異物排除」が目的だった…突然「司法の総意」が襲った理由

伊藤 博敏

若年層の不満が後押し

ガーシー人気は爆発的だった。日本では女性を芸能人などにアテンド(世話)することで人脈を築いていただけに、そこで得た情報をSNSで発信すると、過激な内幕と関西弁の速射砲のような語り口が受け、アッという間に登録者数が100万人を突破するユーチューバーとなった。

その人気をもとに今年7月の参院選に立候補すると、参院比例区で約28万8000人もの有権者が投票用紙に「ガーシー」と書き、当選した。

ガーシー氏が証明したのは、新聞・テレビといったマスメディアに採り上げられることなく一般には無名でも、そうしたマスメディアの情報に依拠しないSNS層の人気を得れば国会議員にもなれることだ。

(c) 現代ビジネス

同時にそれは、65歳以上の年金世代が有権者の4割に達し、その老人世代が高い投票率で政治の方向性を決めることへの若年層の不満の“ハケ口”にも見えた。

常識から考えれば、ガーシー氏は議会制民主主義の「異物」である。

詐欺事件捜査への恐れから、ガーシー氏は日本に帰国しないと選挙期間中から「宣言」していた。実際、10月に入って始まった臨時国会には登院しなかった。

国会に出席しないで海外に在住する国会議員──。議会で討議し、法律を作り、税金の配分(予算)を決める役割を果さないという意味で、国会議員とはいえまい。

同様に、NHKのスクランブル化(受信料を支払う人だけが見る)によって強制徴収の被害者をなくすことを党の最大公約に掲げるNHK党もまた、ワンイシュー(ひとつの論点)を目標にする特異な政党である。

「NHKをぶっ壊す!」というキャッチフレーズと、青と黄色のウクライナカラーのスーツを身にまとった立花孝志党首の派手なパフォーマンスで知られるものの、マスメディアに採り上げられないミニ政党(ガーシーと合わせ参院議員が2人)の悲しさで、NHK問題以外に「国政で何を果したいのか」という具体的イメージが伝わってこない。

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だが、ガーシー議員の誕生という事態を含め、時代は確実に変わっている。政党要件を満たしてはいるものの、マスメディアが相手にしないれいわ新選組、参政党、そしてNHK党は、ほぼSNSの拡散だけで3党合わせて約10%の得票率を得た。既存の政治の在り方と、そこに依拠した報道に批判的な層が、着実に増えている。

それゆえ国家秩序の側が行う「異物排除」は、簡単には進まなくなった。

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