「逮捕も当然」の機運を醸成するために
「ガーシー捜査報道」は、12月27日、「独占」と銘打った『読売新聞』のスクープによって始まった。
捜査主体は警視庁だが、前述の検察OBの弁にあるように検察の了解を得た国会議員捜査である以上、従来の政治家狙いの「特捜部案件」と同様に、捜査当局とマスメディアが一体となってガーシー議員の「負」を、あるいは場合によってはNHK党の「負」まで暴き出し、「逮捕も当然」という機運を醸成してのものになるハズだ。
だが、SNS時代はその「閉じられた行程」を許さない。立花氏は、報道の直後に記者会見を決め、27日午後1時から会見を開き、しかもそれをネットで同時配信し、後でも再生できるようにした。
会見の様子は、通常、マスメディアを通じ、切り取られて報じられるが、1時間に及ぶ会見のなかで、立花氏は「芸能界、政治家、カネ持ち(芸能界や政治家のスポンサーとなる企業家)のトライアングルに対して、メディアは異議を突きつけられない。そこにSNSを通じて切り込むのがガーシーの役割。それを28万8000人の選挙民は認めた」と、ガーシー氏の存在意義を訴えた。
警視庁の不可解な対応は、ガーシー氏の“知り合い”である高橋裕樹弁護士が持つYouTubeチャンネル「リーガルチェックちゃんねる」によっても暴かれた。
読売報道では「弁護士を通じて任意聴取への協力を求めた」となっていたが、高橋氏はYouTubeのなかで、詐欺事件の際は「弁護人選任届け出」を提出していたので弁護人だが、今、問われている脅迫や名誉毀損については弁護人として依頼を受けているわけでもなく、「あなた方は、単なる“知り合い”に連絡しているだけ」と、しつこくガーシー氏への“仲介”を求めた警視庁捜査2課の担当者に伝えたという。
立花氏や高橋氏の対応で判明するのは、「国会に出ない国会議員を許していいのか」という世論を背にした捜査当局の「手順を踏んで異物を排除したい」という意志である。
だが、SNS選挙の浸透で政治の在り方が変わり始めた今、同じ追い詰め方が通用するものかどうか。
ワンイシューのNHK党も、政治家女子48党の立ち上げに見られるように、ワンイシューの政党を国政政党NHK党(この党名も変える)の下に幾つもぶら下げる諸派党構想で若い世代の支持を得て、老年層が支配する政治を変えようとしている。
「政治家ガーシー誕生」は、善くも悪しくも時代の流れだった。現段階で被害者が特定できないため“悪質”さを計りようもないが、「投票」という民意で選ばれた政治家を、従来の価値観で「異物」と捉え、国策として排除する動きがあるなら、やはり慎重であるべきだと言わざるを得ない。