行政書士になると、どれくらいの年収を見込めるか、資格を取得するにあたり気になるところですよね。
資格を目指す以上、収入や給料がそれに見合うかどうかは重要です。
この記事では、行政書士の平均年収や給料がどれくらいなのか、行政書士の仕事の中でも特に高収入を得やすい業務内容や収入アップを目指す方法についても含めて詳しく解説します。
目次
行政書士の平均年収は584.4万円
厚生労働省令和3年の賃金構造基本統計調査によると、全国の行政書士の平均年収は584.4万円です。
参考:職業情報提供サイト
ただ、行政書士は行政書士事務所に勤務するほか、独立開業する道もあり、働き方が多種多様です。
そのため、収入も個人差が非常に大きいです。
実際には、年収1000万円を超える行政書士も多数存在しています。
独立開業すれば高収入を狙うことは十分可能といえます。
関連コラム:行政書士とは?主な仕事内容&具体的な業務内容例14個
働き方による年収の違い
行政書士は、多様な働き方があり、どんな働き方をするかによっても年収の目安が異なります。
行政書士事務所に勤務する場合、独立開業する場合、他資格とのダブルライセンスで仕事する場合を例に挙げて解説します。
①行政書士事務所に勤務する場合の年収
行政書士事務所に勤務する場合の年収について、公的なデータはありませんが求人情報などを見ると1年目の収入の目安としては、月収20万円、年収250万円程度のものが見られます。
令和2年度のハローワーク求人統計データによると、全国の求人賃金は月額25.7万円です。
参考:職業情報提供サイト
事務所の規模や仕事量、事務所が扱っている業務などによっても、得られる給与の額は異なりますが、1年目は月収20万、年収250万円程度がひとつの目安といえるでしょう。
継続して勤務を続けた5年目以降の収入は、本人の能力により差が出てくるといえます。
たとえば、自分で仕事を取ってこられるような営業力のある人であれば、給与とは別に歩合給をもらえるなどにより年収600万円以上に年収額を伸ばせる可能性もあります。
勤務している事務所から、共同経営者にならないか声をかけられて、年収アップを叶える人もいるでしょう。
その一方で、1年目と同じような成果しか出せないような働き方をしている場合、一般企業のような年功序列制度がある事務所は少ないので、年収が大きく上がらないことも考えられます。
②独立開業する場合の年収
独立開業する場合は、事務所に勤務する場合と比較して高年収を狙いやすいです。
ただし、独立開業する場合、はじめから仕事が沢山舞い込んでくる人は決して多くはないため、開業1年目の年収は低いことが予想されます。
もっとも、人によっては独立前に入念な準備をしてはじめからお客さんが付いており、初年度から500万円以上売り上げがある場合もあります。
年数が経つごとに収入差は大きくなり、5年目以降の収入の目安を出すのは難しいですが、徐々に仕事を増やしていった人であれば600万円程度も見込めます。
また、能力の高い人であれば、1000万円以上の年収となる人も多数存在します。
一方、仕事が思うように増えなかったり、経費をかけずに自宅でマイペースに独立開業しているような場合には、年収が200万円未満ということもあり得る、というように人によって大きな差がでるのが独立開業した場合の年収の特徴です。
関連コラム:行政書士が独立開業するには?成功するためにやるべきこと4つ
③他資格とのダブルライセンスを持ちながら仕事をしている行政書士の年収
行政書士以外の資格も所持し、ダブルライセンスで働いている人も大勢います。
ダブルライセンスで独立開業している場合、行政書士のみの場合に比べて収入は安定し、高くなりやすい傾向があります。
ダブルライセンスの場合、業務範囲が広がり、仕事を掴むチャンスが多くなるからです。
独立したばかりの頃は、「この仕事はできます」とアピールする業務範囲が広い方が有利です。
また、士業にはそれぞれ独占業務がありますが、ダブルライセンスの場合には一人のクライアントから関連する複数の業務を一度に依頼される可能性が高くなり、客単価も高くなる傾向があります。
行政書士は業務範囲が広いので、様々な他士業の業務との関連性が高く、ダブルライセンスに適した資格であると言えます。
儲かる・高年収を得やすい業務内容
行政書士の仕事はとても業務範囲が広いため、業務の内容によって難易度や報酬が大きく異なります。
ここでは、高年収を得やすい業務内容について紹介します。
なお、ここで紹介している業務は、報酬単価とそれにかかる期間を考慮した場合に効率が良いと思われるものです。
①帰化許可申請
帰化許可申請は、外国籍の人が日本国籍を取得するための手続きです。
帰化許可申請は、膨大な書類の収集や、必要な申請書類の作成、法務局の担当者との打ち合わせなどが必要で、難易度の高い仕事です。
行政書士は、単に書類の作成をするだけにとどまらず、法務局との交渉なども行います。
そのため、帰化許可申請にはノウハウが必要ですが、報酬としては20~30万円程度となるため高単価の業務であると言えます。
②創業融資支援
創業融資支援とは、創業したばかりで実績のない会社などが事業資金を借りるための支援をする業務です。
創業融資を受けるためには、事業計画書等の作成が必要となり、その作成を行政書士が
支援します。
創業融資の場合、報酬は成功報酬制とすることが多く、融資を受けられた金額の3~5%程度とするケースが多いでしょう。
そのため、たとえば1000万円の融資を受けた場合には、30~50万円の報酬となり、高単価の仕事と言えます。
他の高単価の仕事と比べて、業務に要する時間がそれほど長くないこともあり、効率の良い仕事でもあります。
ただし、成功報酬制の場合、融資が受けられなかった場合はあまり収入を得られないということになります。
③NPO法人設立認証
NPO法人を設立するためには、行政庁での認証を受ける必要があります。
行政書士はその認証を受けるための手続きを代行することができます。
認証に必要となる書類の収集や作成だけでなく、行政庁での相談なども行います。
認証のために必要な書類の数が多いため、沢山の書類を作成する必要がありますが、きちんと書類を整えれば認証が受けられる場合がほとんどなので、必ずしも難易度の高い仕事ではありません。
報酬としては、15~25万円程度が目安となります。
④旅館業許可申請
ホテルや旅館などの宿泊施設を経営するためには旅館業許可が必要です。行政書士はその許可申請の手続きを代行することができます。
行政書士は、必要な書類の収集や作成、自治体への相談、届出等を行います。
旅館業許可を取るためには、宿泊施設としての基準に適合した建物であることが必要で、申請書の他、建物の見取り図、配置図、配管図なども必要となります。
報酬としては、20~30万円程度が目安となります。
また、旅館業許可の申請と併せて、直営の飲食店の営業許可や消防法令適合通知書の申請なども一緒に依頼されるケースが多く、その分報酬が増える場合があります。
⑤遺産分割協議書の作成
人が亡くなって相続が起きた場合、遺言書がなく複数の相続人がいる場合には、相続人同士でどのように遺産を分けるかを協議し、遺産分割協議書を作成します。
行政書士はこの遺産分割協議書を作成することができます。
ただし、遺産分割の内容に相続人同士で争いがある場合には、行政書士が介入することはできず弁護士の仕事となります。
逆に言えば、行政書士が作成するのは争いのない協議についての遺産分割協議書となるため、作成にそれほどの労力や時間はかかりません。
報酬としては5万円程度となりますが、書類一種類の作成だけであり、難易度や要する時間を考えると高単価の仕事だと言えるでしょう。
他士業と比べた行政書士の年収
他士業と行政書士を比べた場合、行政書士の年収は高いのでしょうか。
ここでは、司法書士、社労士、宅建士と比較した年収について紹介します。
①司法書士との年収比較
司法書士は法務局や裁判所に提出する書類を作成する業務を行い、一般的には登記の専門家として知られています。
認定を受けた司法書士は、簡易裁判所における訴訟代理人となることもできます。
司法書士は、行政書士と同様、事務所に勤務する人と独立開業する人がいます。
事務所勤務の場合には、行政書士に比べて合格人数が少ないこともあり、司法書士の方が行政書士よりはやや給与が高い傾向があります。
独立開業の場合も、年収に個人差が大きいのは行政書士と同様ですが、年収1000万円を超える割合は行政書士が1割程度に対し、司法書士は18%程度あるので、やや司法書士の方が高収入を得やすいと言えるかもしれません。(司法書士白書2017年度版「平成28年度司法書士実態調査集計結果」)
ただし、司法書士は行政書士以上に試験の合格率が低く、難易度が高いため、合格までにかかる年数を考えるとどちらのほうが効率的に収入を得られるかは分かりません。
②社労士との比較
社労士は労務管理や社会保険手続きに関する業務を行い、人材に関する専門家です。
社労士も行政書士と同様、企業や事務所に勤務する人と独立開業する人がいます。
勤務社労士は、事務所勤務だけでなく、一般企業に勤務する人も多く見られます。
勤務社労士の場合、年収の中央値は600万円以上700万円未満となり、勤務行政書士に比べると高収入であると言えます。
これは、社労士の場合、企業に勤めながら資格を取得し、元々勤めている企業で給料アップにつながっているケースが多いことが推測されます。
独立開業する場合、年収に個人差が大きいのは行政書士と同様で、年収1000万円を超える割合は13.5%と行政書士と大きな差はありません。(大阪大学「専門士業の『専門性』形成のモデル構築:社会保険労務士を手がかりとして」)
独立志向が低く企業や事務所への勤務を考えている場合には、収入面では社労士に軍配が上がると言えるでしょう。
③宅建士との比較
宅建士は、不動産取引の際に重要事項の説明等を行う国家資格者です。
不動産関連会社に勤務しながら資格を取得する人が多いと言えます。
宅建士も、不動産会社等に勤務する人と独立して不動産業を営む人がいます。
宅建士の年収の公的なデータはありませんが、宅建士が属する不動産業の平均年収は523万円程度となり、他業種に比べて平均年収は高い傾向があります。(厚生労働省『令和元年賃金構造基本統計調査』)
行政書士の平均年収よりも高いと言えるでしょう。
宅建士は会社に所属する場合にも歩合給の割合が高い傾向があり、個人の収入差は大きくなります。
高額な不動産売買の仲介ができれば、一件の仕事で高額な収入を得ることも可能です。
ただし、宅建士の数はとても多く、比較的参入しやすい仕事のため、ライバルが多く営業力のない人にとっては非常に厳しい世界です。
行政書士として高年収を得る方法
せっかく行政書士になるからには、高年収を得たいですよね。
実際、行政書士で年収1000万円を超える人も多数存在します。
その人たちはどのように仕事をしているのでしょうか。
高年収を得る方法について、解説します。
1 報酬単価の高い仕事を中心に取り扱う
行政書士の仕事は多岐にわたり、仕事の内容によって難易度は異なります。
当然のことながら、難易度の高い業務ほど報酬も高くなり、またその業務を行うことができるライバルも少なくなることから仕事の依頼を受けやすくなります。
たとえば、前述したように帰化許可申請は比較的難易度が高く、ノウハウがなければ簡単に許可を取ることができませんが、報酬は1件で20~30万円程度となります。
仮に月に4件こなすことができれば、それだけで80~120万円程度の売り上げとなります。
このように、他の人が簡単に参入できない専門的な得意分野を作り、報酬単価を高くし、効率的に収入を得ることができれば、高収入を得ることができます。
2 複数の資格を所持している
行政書士業務だけでも十分な収入を得ることは可能ですが、他の資格と組み合わせることで、2倍ではなく何倍も効果的に収益を上げられる可能性があります。
ある手続きをするときに、実は行政書士業務だけではなく他資格の業務が含まれているケースはよくあります。
たとえば、飲食業を行う会社を設立したいというお客さんがいる場合、飲食店営業許可申請は行政書士の業務ですが、会社の設立登記は司法書士の独占業務です。
そのため、行政書士の資格しかない場合には飲食店営業許可申請の仕事しか受けられませんが、司法書士の資格もあれば、会社設立登記の仕事まで受けることができます。
そうすると、一人のクライアントから受けられる仕事の幅が広がり、収入も効率良く得られるようになります。
3 資格者を優遇してくれる職場に勤務している
行政書士の資格を取って必ずしも独立開業しなければならないわけではありません。
資格者を高待遇で募集している法人などに勤務する方法もあります。
必ずしも行政書士法人、事務所に就職することにこだわらず、行政書士の知識を持つ人材を高待遇で募集している大手企業などに就職することで、安定して平均以上の収入を得られる可能性があります。
時間を自由に使えるのも行政書士の大きな魅力
行政書士の年収について解説しました。
行政書士は、工夫次第で高収入を得られる仕事です。
また、自由度が非常に高いという魅力もあります。
行政書士は資格を取って研修を受ければすぐに独立開業をすることができ、自分のペースで自分の納得できる働き方をすることができます。
たとえば、必ずしも平日毎日朝から晩まで決まった時間に働かなければいけないということはなく、週に一度は平日休みを作ったり、昼休みを2~3時間取ることなども自由です。
独立開業するのであれば事務所の場所も当然自分で決めることができるため、自宅を事務所にしたり、自分にとって利便性の高い場所で働くことができます。
また、女性が子育てが落ち着いてから再就職する場合など、資格がないとオフィスワークに就くことが難しいケースが多く見られます。
関連コラム:行政書士の女性の割合や仕事の続けやすさを解説
行政書士資格を取得していれば、就職に有利なのはもちろん、自分で独立開業して自営業として仕事をすることもできます。
このように、働き方の自由度を上げることができるのも、行政書士の大きな魅力です。
ぜひ行政書士の資格を取得して、高年収を目指してみてはいかがでしょうか。