2022.12.17
【崖すれすれ】静岡リニア「トンネル工事」の危険な現場を視察後、川勝平太知事がJR東海に言い放ったこと
発売直後から早くも話題騒然の『国商 最後のフィクサー葛西敬之』(森功著)。同書はフィクサーとして安倍政権を操ったJR東海の天皇・葛西敬之氏の生涯を追ったノンフィクションだが、その最終盤では、葛西氏の最後の夢だった「リニア中央新幹線」建設を巡る川勝平太静岡県知事とJR東海の大バトルの様子が描かれている。
『国商 最後のフィクサー葛西敬之』連載第4回前編
JR東海担当者の苦り切った表情
川勝平太静岡県知事が2022年8月8日、南アルプスのリニア工事現場に視察に行くというので、私もついていった。新聞やテレビの報道陣といっしょに静岡県庁前からマイクロバスに揺られ、大井川の上流にある田代ダムに向かってくねくねした山道を登った。南アルプスは想像以上に険しい。
整備中の道はマイクロバスがぎりぎり1台通れるくらいの幅しかない。バスの運転手は絶妙なハンドルさばきで、脱輪しそうな崖すれすれのところを通過していく。広い河原にでたとき、知事専用車から降りてきた川勝が、同行したJR東海の担当社員や記者団を前に話し始めた。
「もっと上流のあたりにトンネル工事の入り口があります。工事で掘削して出てきた土をそこから10トントラックで駿河湾に運んで捨てなければなりません。この細い道を。その残土は実に3万トンから8万トンと試算されています(筆者註・一部の残土)から、10トントラック3000杯から8000杯、現実的にこの道で運べますか」
川勝がJR東海の担当者に尋ねると、担当者は苦り切った表情で次のように答えるのが精いっぱいだ。
「残土の処理については、検討してお答えします」