不当な進め方じゃ…用地売却していないのに眼前で進むリニア駅整備 82歳住民の思い
JR東海が計画するリニア中央新幹線の長野県駅(飯田市上郷飯沼、座光寺)の安全祈願・起工式が現地で開かれた22日、会場周辺では住民らが懸念や疑問を通行人に訴え、仲間内で今後の対応を話し合った。(葉山大則、前野聡美、川浦風太、佐藤勝)
起工式が始まった午後1時過ぎ、会場から目と鼻の先にある熊谷清人さん(82)所有の建物に、「リニアから自然と生活環境を守る沿線住民の会」のメンバーが集まった。「不当な進め方は何としても止めたい」「しっかり監視しないと」―。県内駅予定地周辺の用地売却に応じない住民もいる中、式に踏み切ったJR側への不満が噴出した。
輪の中にいた熊谷さんも、用地を売却していない住民の一人。熊谷さんの土地はリニア本線や駅周辺整備事業の対象地域に広く該当。しかし、江戸時代から住み続ける土地や畑を、簡単に手放す気持ちになれない。
用地交渉を担う市やJR側の説明は、まだ不足していると感じる。自宅の敷地は全て用地買収の対象。家族を含めこれからの人生を大きく左右するような決断になるため、「時間は過ぎるが、思いが入り乱れて決められない」。起工式についても「もっと先にやることがあるんじゃないか」と思う。
この日、仲間と共に、県内駅西側の住宅地地下に掘削予定の風越山トンネルについて丁寧な説明を求めていくことなどを確認。「住民の納得なしに工事は進まない。そのことを今後も要求していく」。メンバーが発した言葉に、じっと耳を傾けた。
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