●死の刃を前にしながら、大きな精神的苦痛を味わいつつやむなく手放さざるをえないようなものに、人はなぜ心を煩わせなければならないのか。自然が要求する僅かな必要を程よく満たすに足りるだけで、なぜ満足してはいけないのか。私は単純素朴な生活にいっそう強く惹かれるようになった。
●私は少しでも他から抜きん出て社会的な地位をひけらかしたいという気持ちをすっかり清算し、ただ自分の義務は果たし、自分の欲求を抑えて要求水準を下げ、自らの労働の果実のみに頼る平穏で虚飾のない、質素で清潔な家庭生活を送る決心を固めていた。
●私は一つの小部屋を選び、毎日、空が白み染める頃から瞑想の行を行った。初めのうちは時間も短かったが、次第に時間を長くしていって、2,3年経つうちには、心を完全に観想の対象に据えたまま、背筋を伸ばした不動の姿勢で、心を揺らすことなく何時間も坐り続けることができるようになった。
●役所の仕事よりも、ヨーガの学習と実践に関心があった。官職は生計を稼ぐ単なる手段、家族の簡素な必要を満たせばそれで十分と見ていた。私にとってそれ以上、何の価値も意味もなかった。
●【生い立ち】 8歳のときに歩いていると、突然稲妻のような速さで、それまで考えてみたこともなかった問いが、私の心の中に飛び込んできた。私の存在の奥底から「自分は一体何か」という執拗な問いかけが湧き上がってくると同時に、周囲にあるもの全てから「一体その一つひとつは何を意味するのか」という質問がぐっと迫ってきて、私は動けずに道路に立ち尽くしていた。
●困惑し幻滅した私は、ついにヨーガの実修に向かった。しかし、17歳の時から34歳までの17年間、何の手応えもなかった。
●【最初の危機】 クンダリニーが目覚めた人間に、悪い遺伝的要素や間違った行為、ある種の不節制などがあると、情緒が著しく不安定になったり、常軌を逸した知的行動に駆り立てられる場合が多い。こうした症状は、クンダリニーが多少とも「先天的」に動き出している者、即ち神秘家、霊媒、天才、高度の知的・芸術的才能に恵まれた人間に認められる。
●床につく前に明かりは全部消してしまったのに、枕に頭をつけた途端に、頭の内部に脊髄を伝わって大きな「赤い舌のような炎」が立ち上ってくる。頭蓋骨の内部に脊髄を通って後から後から入り込む「生きている光の流れ」は、暗闇の中で次第に大きく早くなった。目を閉じると不気味な「光の輪」が浮かび、その中を発光体があちこちと飛び交っていた。
●時には、脊髄から昇って来た「溶けた赤銅」が頭頂にぶつかって、私の周り一面に火花の雨を降らせた。魅入られたように、私はその光景を見ているほかなかったが、ぞっとする恐怖にもとらわれていた。
●私はこれは単なる幻覚であり、しばらくすれば正常に戻ると思っていた。しかし、日が経つに連れて異常な徴候は弱まるどころか、ますますはっきりするばかりだった。光明は妙に鮮やかさを増し、音量が不気味に高まっていった。
●立ち上る精気の流れは一向に収まらなかった。しかし、最も恐ろしかったのは、私の精神状態だった。以前と異なり、私は遥かに高いところから世間を見ているように感じられた。私の知覚能力に変化が起こり、私は精神的にいわば「拡張した」ようであった。その代わり、私の意識は、最下部神経叢から出る光明の流れに常に左右され、不思議な仕方で拡張・収縮を繰り返していた。
●私は恐れながらも、たえず自分の精神状態を点検した。自分自身の性格が根底から変わった。まぎれもなく「拡張」していた。それ以前と比べて目立つ大きな変化は、生命エネルギーが脳髄にまざまざと光を発しながら流れ込んでいたことである。ただ、その光は濁っていて、その上不安定だった。その光輝は大きな輪を描いていたが、それほど綺麗でも透明でもなかった。
●【炎の蛇】 義兄は、自分の導師から前に聞いたことを話してくれた。それによると、クンダリニーがスシュムナー管以外のナディ(管)から誤って上がると、霊的・肉体的に極めて重大な混乱が起こり、身障者や気狂いになったり、時には死を招くことさえあるのだというのだ。特に右側の「ピンガラ」を通ってクンダリニーが目覚めると、外から鎮めようとしても全くコントロールの効かない体内熱のために、最悪の場合焼け死んでしまうこともあるという。この話を聞いて、私はすっかり怖気づいてしまった。
●注意力を集中することが全然できなかった。少しでも努力を要するようなことをすると、頭脳への新生のエネルギーの流量がたちまち増えて、恐怖感が強まり、私の様態はたちまち悪化するのだった。
●本を拾い読みしていると、大変簡潔な指示が目に止まった。「行法を修めている間、行者は胃袋を空にしてはならない。3時間おきに軽い食事を摂るべきである」。この簡単な注意こそ、私の生命と正気を救ってくれた。
●たちまち燃え上がったエネルギーが、一時に頭の中に入ってきた。悪寒がして、手足がまるで氷のように冷たくなった。脊髄に沿う気道を伝わって頭に上った焼き付くような熱風をつくり出すために、手足から体温がどんどん失われていくようだった。
●すると、ある考えが頭に浮かんだ。最後の賭けとして、左側の月の軌道イダを目覚めさせたらどうなるか。身体を内部から焼き尽くすピンガラの焦熱効果を中和させてくれるのではあるまいか。
- デーヴィッド・ゴッドマン「覚醒の炎-プンジャジの教え」(5)
- デーヴィッド・ゴッドマン「覚醒の炎-プンジャジの教え」(4)
- デーヴィッド・ゴッドマン「覚醒の炎-プンジャジの教え」(3)
- デーヴィッド・ゴッドマン「覚醒の炎-プンジャジの教え」(2)
- デーヴィッド・ゴッドマン「覚醒の炎-プンジャジの教え」(1)
- マーシャル・ゴーヴィンダン「ババジと18人のシッダ-クリヤー・ヨーガの伝統と自己..
- マーシャル・ゴーヴィンダン「ババジと18人のシッダ-クリヤー・ヨーガの伝統と自己..
- マーシャル・ゴーヴィンダン「ババジと18人のシッダ-クリヤー・ヨーガの伝統と自己..
- マーシャル・ゴーヴィンダン「ババジと18人のシッダ-クリヤー・ヨーガの伝統と自己..
- マーシャル・ゴーヴィンダン「ババジと18人のシッダ-クリヤー・ヨーガの伝統と自己..