2015年11月25日

成瀬雅春「クンダリニー・ヨーガ」

BABジャパン出版局(2003/09)ISBN-10:4894226057

●ブータンのタクツァン僧院詣で。瞑想中のパドマ・サンバヴァとの対話。

●クンダリニーエネルギーの上昇経路…ムーラーダーラ→【ブラフマ結節】→スヴァディシュターナ→マニプーラ→アナーハタ→【ヴィシュヌ結節】→ヴィシュダ→アージュニャー→【ルドラ結節】→サハスラーラ

いきなりクンダリニーを覚醒させると失敗してしまうことが多い。それは、スシュムナー内にある「ブラフマ結節」「ヴィシュヌ結節」「ルドラ結節」という3つの「結節(グランティ)」が、クンダリニーエネルギーの上昇を妨げているからである。この3つの結節を「破壊」して進まなければならないのだが、結節のある場所については、「眉間・心臓・尾骶骨」「喉・臍・尾骶骨」「眉間・喉・胸部」などいくつかの説がある。いずれにせよ、結節を破壊してシャクティを頭頂部まで上昇させ解脱に至るのだ。 ※チャクラよりも、3箇所ある「結節」の破壊がキモ

ヨーガ経典の「クンダリニー覚醒行法」

【ハタヨーガ・プラディーピカー】

1.26 右足を左腿の付け根にのせ、左足を[右]ひざの外側に交差しておき、[手でそれぞれ逆のつま先を]つかんで体をねじるのが、マツヤナータ師の説いた体位である。

1.27 マツヤェーンドラの体位は、修練することにより腹部を輝かせ[=消化力を増強させ]、恐ろしい病魔の軍団を打ち破る武器となり、人々のクンダリニーを覚醒して、月を安定させる。

 この経典には、バストリカーというクンバカ(止息法)が、スシュムナーの三つの結節を破壊するとか、「ケーヴァラ・クンバカ(単独の保息)によってクンダリニーが覚醒する」とか、「ブジャンガ・アーサナ(蛇のポーズ)もクンダリニーが覚醒する」といった記述がある。 ※バストリカーは、チベット密教の「ポワ」の「ヒック」に似た、気合で結節を破る法

いくつかのヨーガ経典を通読して、確実にクンダリニー覚醒を果たせると思える行法が一つある。それが「シャクティチャーラニー・ムドラー」で、まさにシャクティ(クンダリニー)をチャーラニー(動かすこと)である

ヨーガ経典の「シャクティチャーラニー・ムドラー」

【ゲーランダ・サンヒター】

3.49 ムーラーダーラには、個人の本体のシャクティで、最高の神格であるクンダリーが、三巻き半のとぐろを巻いた蛇の姿で臥している。

3.50 それ(クンダリー)が体の中で眠っている間は、生命体は獣の如くであって、何千万ものヨーガを修練しても、知は生じない

3.51 扉を鍵で力を込めてこじ開けるように、クンダリニーを覚醒させることによって、ブラフマンの門を打ち破るべし。

3.54 灰を体に塗り、スィッダ・アーサナを修すべし。両方の鼻[孔]からプラーナ気を吸い込み、アパーナ気にしっかりと結びつけるべし

3.55 スシュムナー気道の中に気が入り、堅固に輝くようになるまで、アシュヴィニー・ムドラーで秘所(肛門)をゆっくりと締めるべし

3.59 このムドラーは最高の秘密にすべきものであり、老と死を討ち滅ぼすものである。それゆえ、成就を願うヨーガ行者たちによって修練がなされるべきである。

【シヴァ・サンヒター】

4.53 賢者(ヨーガ行者)は、アーダーラ蓮華(チャクラ)でぐっすりと眠っているクンダリーを、アパーナ気に乗せて力強く引きずり出し、動き出させるべし。このムドラーがあらゆる力を授けてくれるシャクティ・チャーラナである。

4.54 毎日このようにシャクティ・チャーラナを修する者には、寿命の増長と病気の消滅がある。

4.55 眠りを振り捨てて、蛇(クンダリー)は自ら上昇する。それゆえ、成就を欲するヨーガ行者は修練をなすべし。

4.56 師の助言に従って最高のシャクティ・チャーラナを修練する者には、微細になる力などを授けるヴィグラハ・スィッディが[得られる]。そのような者にどこから死の恐れが来ようか。

4.57 二ムフールタの間規定通りにシャクティ・チャーラナを努力して行ずる者には、遠からず成就が[得られる]。ヨーガ行者は適切な坐法によって、シャクティ・チャーラナをなすべし。

4.58 これが十のムドラーで、過去にもなかったし、未来にも[匹敵するものは]ないであろう。一つひとつ修練することにより、成就が得られ、必ず成就者となる。

 「アシュヴィニー・ムドラー」とは、基本的には肛門を締め付ける技法のことで、ムーラ・バンダとほぼ同じ行法である。プラーナとアパーナが合一し、クンダリニーが目覚めて「自ら上昇する」行法こそが「ムーラ・バンダ」

ヨーガ経典の「ムーラ・バンダ」

【シヴァ・サンヒター】

4.41 足元(かかと)で肛門をしっかりと押して、力強くアパーナ気を引き上げ、徐々に上昇させるべし。これがムーラ・バンダと説かれるもので、老死を滅するものである。

4.43 ヨーニ・ムドラーが成就したならば、地上で何が成就されないことがあろうか。このバンダの恩恵により、ヨーガ行者はパドマ・アーサナを組んだまま、倦むことなく、大地を離れ、空中を行くことができる。

【ハタヨーガ・プラディーピカー】

3.61 かかとで会陰部を押して、アパーナ気を上方へ引き上げるよう、肛門を引き締めるべし。[これが]ムーラ・バンダと呼ばれる。

3.62 [肛門を]引き締めることによって、下方へ向かうアパーナ気を力を込めて上方へ向かわせる。これを、ヨーガ行者たちはムーラ・バンダと呼ぶ。

3.63 肛門をかかとで押して、[アパーナ気が]上方へ向かうまで、力を込めて繰り返し引き締めるべし。

3.64 ムーラ・バンダによって、プラーナ気とアパーナ気は、ナーダとビンドゥを合一し、ヨーガ成就がもたらされる。これについては疑いはない。

3.65 常にムーラ・バンダ[を修練すること]によって、アパーナ気とプラーナ気が合一し、大小便が減少し、年老いた者でさえも若者になる。

3.66 アパーナ気が上昇して火輪(ヴァフニ・マンダラ:腹部にあるとされる消化力の火)に達すると、アパーナ気に煽られて火炎は長くなる

3.67 さらに、火とアパーナ気が、熱い性質を持つプラーナ気に達すると、それによって体内に生じた火は盛んに光り輝く

3.68 その結果、眠っていたクンダリニーは熱せられて、覚醒させられる。あたかも棒で叩かれた蛇がシューッと音を立て、直立するように

3.69 それから[蛇が]穴に入るように、ブラフマンの気道[スシュムナー]の中に入る。それゆえ、ヨーガ行者たちは常にいつでもムーラ・バンダを修すべきである。

 アパーナ気が上方へ向かうまで、「100万回」は力を込めて繰り返しムーラ・バンダを実践すべし。ムーラ・バンダを繰り返し実践すると、クンダリニーは「覚醒する」のではなく、「覚醒させられる」という点に注目。

●私の指導方法の中には「修行クラス」があり、最初にヨーガの王様と言われる「シールシャ・アーサナ(頭立ち)」を長時間実践する。開講当初は、頭立ちで30分以上保つことを第一目標としたが、現在(1999年)では7時間46分55秒という記録が出るに至っている。

【止息行法】口を閉じて息を少し吸い込んだ状態にして、親指で右鼻孔を塞ぎ、中指の折り曲げた関節部分で左鼻孔を塞ぐ。1分を超えるのを最初の目安とするとよい。止息時間を延ばすのも大切だが、その間体内のエネルギー状態を繊細に観察することも重要で、ナーディーの存在を認識できるようになる

【体内呼吸法】口を閉じて鼻孔を塞いだ状態で、息を吐いて吸う行為を繰り返すこと。吐こうとすると、塞いでいる鼻孔に、内部から出ようとする息の圧力がかかる。吸おうとすると、鼻孔の中が真空状態となり、鼻翼が内側に吸い付けられる。首のところで確認するとよく分かるが、吐こうとすると首筋が若干膨らみ、吸おうとすると首筋にくぼみができる。ビンドゥ・チャクラあたりで音が生じるのを感じられるようになる

人は死ぬと全ての力が抜けてしまうが、それが最もはっきりと分かるのは「肛門」である。生きている間は、どんなに力を抜いても肛門は閉じられている。それは、肛門を閉じる力が常にかかっているからである。古来、ヨーガ行者はその点に注目した。肛門の力が抜けるのは「死」を意味することを知っていたので、逆に肛門に力を入れて締め付けることを修行方法にした。

【ムーラ・バンダ】肛門をすぼめ、さらに体内へ向けて締め上げるようにしなければならない。そのとき、肛門のなるべく狭い範囲だけを使って引き締めるようにした方がよい。腰の周りや腹部には力を入れない。力を抜くときも、一瞬の内にできるようにする

●ムーラ・バンダを真に理解するには、内容も大事だが、それ以前に回数を重ねる必要がある。とりあえず10万回実践してみること。いい加減にではなく、ちゃんと繰り返すように。1日1000回やれば3ヶ月余りで10万回になる。

「絞り上げる」という感覚が重要。ムーラ・バンダは肛門を機能させるテクニックなので、腹部やその他の部分をを動かさない・緊張させないこと。肛門だけを締め付けたり緩めることができたら、その範囲を徐々に狭くする。肛門の小さい範囲が収縮するように練習する。

上昇へ向かうときは、螺旋は左回りをとる。逆に下降へ向かうときは、螺旋は右回り(時計回り)をとる。シャクティが上昇するときは、左側の月意識路(イダー)を通る。楽な坐法で、脊椎最下部の左寄りにポイントを決め、螺旋を描いて上昇するイメージで腰を左回転させる

蛇は上昇するときは「創造」を、下降するときは「破壊」を象徴する。結節の破壊はなかなか成功しない。それは、上昇時にシャクティが結節を破壊しようとするからである。いきなりクンダリニーを上昇させて破壊しようとすると必ず失敗する。下降時にシヴァ神が破壊者としての力でその結節を緩めなければ、破壊は成功しない。シヴァ神とシャクティ女神が協力しなければ、仮設は破壊できないのだ。腰を小さく右回転させて、意識波をサハスラーラ・チャクラから螺旋を下降させる

シャクティチャーラニー・ムドラーとは「ムーラ・バンダをかけ続ける技法」

●クンダリニー覚醒行法で最も安全で確実なのはシャクティチャーラニー。なぜなら、自分自身の意志力と「体内圧力」を主に使うから。会陰部をぶつけたりして、外的圧力を使う「マハーヴェーダ・ムドラー」は危険。

「最良のタイミング」を捉えて、シャクティチャーラニー・ムドラーに入る。蓮華坐で両手を膝の上に置き、臀部を前後左右に細かくゆすり、「ある一瞬」を捉える。息を短く吸って、入る瞬間に「両手で膝を床に向けて押す」ようにする。この動作はムーラダーラ・チャクラからエネルギーが上昇しだすのを防ぎ、チャクラ内にエネルギーを蓄積するために重要なものだ。

「入る瞬間」、すなわち短く息を吸い終えるタイミングと、両手で膝を床に向けて押すタイミングと、ムーラ・バンダをかけるタイミングが「ほぼ同時」になるようにする。ムーラ・バンダがかかった瞬間からシャクティチャーラニー・ムドラーが開始されたことになる。最初の3秒間は重要で、「あらゆる動きを停止させる」。呼吸はケーヴァラ・クンバカ(単独の保息)。

●最初の3秒間持ちこたえた状態を、そのままさらに10秒経過まで保つ。確実にムーラ・バンダが緩みそうになるが、緩ませてはならない。さらに20秒、30秒。普通の人間の限界だ。強靭な精神力が要求される。

一番大事な問題は「エネルギーの上昇を防ぐ(漏電防止)」こと。中途半端に上昇させてしまうと、胸のあたりで引っ掛かって、そこから上に行けなくなってしまう。「両手で膝を床に向けて押す」テクニックが、中途半端にクンダリニーを上昇させるのを防ぐのだ。

●普通の人は、クンダリニーエネルギーの「通り道」ができていないので、新たな道を作るためにも、エネルギーの蓄積を大量に行わなければならない。

●クンダリニーエネルギーがマニプーラ・チャクラから上に上昇し始めてから中止すると、エネルギーの処理は困難になる。古来クンダリニー・ヨーガで肉体を痛めたり精神が破壊されてしまった行者の多くは、このケースだ。 ※とにかく内圧を高めるということ

注目すべきは「臀部の震え」。この震えは、繊細なエネルギーが大量に蓄積されたことで起こる肉体の反応だ。この震えの発生源を探ると、一点から体表に向けて広がっているのが掴めるはずだ。その一点がクンダリニーエネルギーの上昇ポイントである。それをしっかり見据えること

●頭部の細かな震えが始まった段階で、ヴィシュダ・チャクラに到達するのは確実。ここから先は「究極の領域」。

サハスラーラ・チャクラと他のチャクラの違いは、意識体内に存在し、肉体内には存在しない点だ(他のチャクラも意識体内に存在はしているが、肉体とオーバーラップしている)。だから頭頂部の上に描かれることが多い

アージュニャー・チャクラまではムーラ・バンダという肉体の操作によって上昇するが、サハスラーラへの移行は自然になされる。

●私のシャクティチャーラニーは年々時間が短くなってきている。最初は頭頂部まで辿り着き体外に抜くまで1分30秒かかった。尾骶骨から腰までが20秒、背中を上昇して首まで30秒、そこから頭頂部まで30秒。修行をはじめて7,8年の現在では1分弱。尾骶骨から腰までの時間が格段に短くなった。




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posted by samten at 01:39| 読書録 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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