安倍首相「力による現状変更認めず」 ウクライナ大統領と会談
【キエフ=佐藤理】安倍晋三首相は6日、ウクライナの首都キエフでポロシェンコ大統領と会談した。親ロシア派武装組織との停戦合意が守られていないことに触れ「大変遺憾だ。ロシア、ウクライナによる合意の完全な履行が重要だ」と要請。「力による現状変更を決して認めない」とロシアをけん制し、ウクライナの安定に向け財政支援していく方針を伝えた。
日本の首相のウクライナ訪問は初めてで、会談は1時間半にわたった。
2014年のロシアによるウクライナ領クリミア半島の武力編入に関し、首相は「ウクライナの領土の一体性を尊重する形で情勢改善に取り組む」と述べた。「対話と圧力を通じてロシアが建設的な役割を果たすよう働きかけている」とも説明した。ウクライナ東部の停戦監視に取り組む欧州安保協力機構(OSCE)に日本政府職員を派遣すると表明した。
ポロシェンコ氏は「ウクライナと日本には共通の隣国がある。ウクライナとの間ではクリミア半島併合の問題があり、日本には北方領土問題が生じている」と指摘した。対ロシアで日本と連携したい意向を示した。
首相は7日からドイツ南部エルマウで開く主要7カ国(G7)首脳会議(サミット)でポロシェンコ氏の発言を紹介し、G7で結束して支援する考えも伝えた。
ウクライナへの支援で首相は、すでに表明済みの18億4千万ドル(約2300億円)を含めた経済支援の推進を強調。キエフの下水処理場の改修に約1100億円の円借款を供与する文書に調印した。石炭火力発電について、ポロシェンコ氏は「非効率なので日本の高い技術の導入を進めたい」と求め、首相も支援を約束した。
チェルノブイリ原発事故の経験を踏まえ、ポロシェンコ氏は東京電力福島第1原発事故の処理で協力する意向を明らかにした。実務者レベルでの協議を始める。首相は人的交流の推進のため、ウクライナからの査証(ビザ)免除を検討すると語った。
首相は5日深夜(日本時間6日朝)、ウクライナ入りした。6日夕(同7日未明)にドイツに移動し、サミットに臨む。フランスのオランド大統領、ドイツのメルケル首相、イタリアのレンツィ首相、英国のキャメロン首相との個別会談を予定している。