ウクライナ危機 サミットの主題に
ウクライナの危機が続いている。東部地区での政府軍と親ロシア派の戦闘は2度の停戦合意を経てなお止まらない。戦闘の長期化は欧州の安全を脅かす。ドイツ南部のエルマウで開く主要7カ国(G7)首脳会議(サミット)でも重要な議題になる見通しだ。
親ロシア路線への転換が危機の引き金
(2013年11月、当時の)ヤヌコビッチ政権が欧州連合(EU)と包括的に関係を強める連合協定への調印手続きを凍結し、ロシアに接近したことをきっかけに(反政府デモが)広がった。
ウクライナの反政府デモ(2014年2月22日)親欧派のキエフなど中部や西部で住民が猛反発。10万人規模のデモと警官隊との衝突の末、(2014年2月)政権を事実上崩壊させた。
ウクライナ、親欧路線に再転換へ(2014年2月23日)ロシア、クリミアに軍事介入
親欧米派の新政権に反発したロシアは大規模な軍事介入で、クリミアのロシア系住民の保護と権益確保に乗り出した。
クリミア自治共和国で(2014年3月)16日、ロシア編入の是非を問う住民投票が実施され、即日開票の結果、賛成が9割を超えて編入承認が確定した。
オバマ米大統領は17日、ウクライナの主権と領土保全を侵害したとして、ロシア政府高官やウクライナの大統領職を追われたヤヌコビッチ氏ら11人の資産を凍結する追加制裁の大統領令を発表した。
オバマ大統領は違法な住民投票を支援したことを強く警告し「制裁の範囲を拡大した。さらに追加で科す用意もある」と強調した。
米欧、対ロシア追加制裁決定(2014年3月18日)主要7カ国(G7)はオランダのハーグで24日、緊急の首脳会議を開いた。首脳宣言(ハーグ宣言)は「ロシアが方向を変更し、G8で意味のある議論をする環境に戻るまで、G8への参加を停止」と明記した。
ロシアをG8から除外 G7首脳宣言を採択(2014年3月25日)東部3州でも親ロ派が武装蜂起
ウクライナ東部のドネツク州で(2014年4月)7日、州政府と議会の建物を占拠した親ロシア派勢力が「ドネツク人民共和国」の創設を宣言した。
南部のクリミア半島のロシア編入に続き、親欧米派のウクライナ新政権に反発する東部でも分離・独立の動きが強まった。
ウクライナのヤツェニュク首相は7日、「外国の部隊が国境を越え、国土を占領する計画を許してはならない」と表明。ロシアが東部の親ロ派勢力を扇動していると指摘した。
1回目の停戦合意と攻防再燃
ウクライナ政府と親ロシア派武装勢力の代表が2014年9月5日、停戦で合意した。
戦局が悪化したウクライナと、親ロ派の後ろ盾で欧米との関係断絶を避けたいロシア。双方の思惑が一致したためだが、恒久的な停戦が実現し、和平の定着に向かうかどうかは予断を許さない。
ウクライナ停戦合意、和平実現予断許さず(2014年9月4日)(2015年1月)ウクライナ情勢が再び緊迫してきた。隣国ロシアが支援する武装勢力が政府軍に対して攻勢に転じ、戦略的に重要なドネツク空港を掌握した。貿易港のマリウポリ近郊も砲撃し、約30人が死亡した。
和平協議が暗礁に乗り上げるなか、親ロ派武装勢力には戦闘で劣勢を一気に挽回しようという焦りが見える。欧米はロシアを批判し、新たな制裁発動も辞さない構えだ。
ウクライナ東部、再び緊迫 親ロ派攻勢し空港掌握(1月27日)政府側の発表によると2014年9月の停戦合意以降、親ロ派との戦闘によって約550平方キロメートル分の支配地域を失った。ロシアが約9千人の正規軍兵士を東部に展開させ、重火器などの追加支援を続けているという。
親ロ派攻勢、支配地拡大 譲歩促す狙いか(2月4日)2回目の停戦合意、続く戦闘
独仏ロ、ウクライナの4カ国首脳は2月12日、ウクライナ政府と親ロシア派武装組織の激しい戦闘が続く同国東部での停戦案をまとめた。
これをもとに親ロ派とウクライナ政府などは同日、15日午前0時(日本時間同午前7時)に停戦を発効させる合意文書に署名した。停戦で合意するのは昨年9月に続き2度目。
ウクライナ停戦合意、15日発効 4カ国首脳会談(2月13日)2月に停戦が発効したウクライナ東部で軍事的緊張が再び高まっている。
東部で再び緊張 停戦監視団「砲撃1000回超」(4月13日)戦闘が止まらず、ウクライナ経済は破綻寸前に追い込まれている。
破綻寸前のウクライナ経済 長引く戦火で打撃(2月22日)和平実現を模索
ドイツのメルケル首相は5月10日、ロシアのプーチン大統領と約3カ月ぶりに会談した。ウクライナ東部情勢について、2月に発効した停戦合意をもとに和平の実現を目指すことで一致した。
独ロ首脳が一致「ウクライナ和平、停戦合意もとに」(5月10日)サミットはロシアを除外した形での開催となる。このためロシアに対してG7がどのようなメッセージを出すのかが焦点となる。
初日に外交政策議論 G7サミットの日程固まる(6月4日)