2007/03/15(木)B・B'sコラム
【#40】 「跳び方」のススメ
もうすぐ開幕ですね!皆さんにとって、このオフは長かったでしょうか、それとも短かったでしょうか?僕にとってはアッと言う間でしたねぇ。何せ去年は11月まで試合してましたし、その後もずっとスケジュールに追われてましたから…。
シーズン開幕を前にした今頃は、僕にとっては1年中で一番忙しい時期と言えるかもしれません。まずはシーズンに向けての準備作業。例えば、ファイターズガールと一緒に踊る新しいダンスの振付を覚えたり、シーズン用のパフォーマンスのネタを考えたり…。イベントや幼稚園・保育園訪問も通常通りのペースでこなしながら、その一方では開幕に体調を良い状態に持って行けるように調整もしていかなければならない。そうこうしながら、いつもイッパイイッパイな状態で開幕を迎えてます。
そんな中、今の時期毎年の様に不安にかられる事があるんですよ。それは――
「今年もちゃんとアクロバットが出来るんだろうか…?」という事(^^;)。
意外ですか?確かに普段試合の時、僕は好き放題バク転とかしまくってるように見えるかもしれないですけど、正直言うといつも不安との戦いです。選手じゃないけど、特に「実戦」からしばらく離れているこの時期の不安は大きいんですよ。
もちろん、オフの間も僕はずっとアクロバットの練習を続けてます。但し、オフの間の練習は試合の時とはかなり違う条件の下でのこと(どういう意味かはご想像にお任せします)。だから、野球選手に例えれば、マシン相手のバッティング練習と実戦で生きた球を打つくらいの違いがあるんです。他のマスコットはどうか知りませんけど、僕に関して言えば、シーズン前のこの不安は何年やっても変わらないですねぇ…(苦笑)。
僕達マスコットがバク転などのアクロバットをするのを見て、ファンの方から「スゴいねぇ~」と感心される事は多々あります。おそらく、皆さんバク転って物凄く運動神経が良くないと出来ないと思われてるんじゃないでしょうか?でも実際は、全然そんな事ないんですよ。意外に思われるかもしれないけど、バク転はきちんと練習さえすれば、誰にでも出来る事なんです。「B・Bは自分が出来るからってそんなカンタンに言ってるんじゃないの?」と言われそうですけど、ウソだと思ったら体操の専門家に聞いてみて下さい。基礎的な体力とやる気があって、正しい方法で練習すれば必ず出来ると答えるはずですよ。
但し!(ここからが重要です!)
跳べるようになるまでには、普通何百回となく基礎的な反復練習をしなければなりません。それはどちらかと言うと退屈で苦痛を伴うものだし、それに加えてアクロバットの場合は恐怖感との闘いもありますから、それを克服するのは決して簡単ではなく、それ相当のモチベーションが必要になってきます(センスがあれば、他人のやってるのを見ただけですぐ出来ちゃう人も中にはいるみたいですが)。
実際、僕も最初からアクロバットが出来た訳ではありません。実を言うと、僕がアクロバットを練習し始めたのは比較的最近、マスコットを始めてからなんです。それ以前は、バク転の経験なんて全くの皆無だったんですよ。その経緯についてはここではあえて詳しくは語りませんけど、当時マスコットになる為にはアクロバットが必須と聞かされていたので、とにかくマスコットをやらせてもらいたい一心で必死になって練習して出来るようにしたんです。今考えると、我ながらよくやったなと思いますよ。一応「跳べる」と言えるようになるまでには数ヶ月かかりましたけど、なかなか自分の望むように上達しないのが悔しくて歯がゆくて、寝ても覚めてもアクロバットの事考えてましたからね…。今もう一度あれを繰り返せと言われても、出来るかどうか分からないです。とにかく「夢中だった」と表現するしかありません。
いや、別に僕は皆さんにバク転をしろと勧めてる訳じゃありませんよ。日常の生活や仕事の中でバク転が必要な人なんて、そう滅多にはいないでしょうし(笑)。以前、僕はこのコラムで「マスコットのパフォーマンスの質は、単にバク転の回数では換算出来ない」と書きました。今でもその考えは全く変わっていません。マスコットの本質的なポイントは他にも沢山あるし、いくらバク転だけ上手くても見せ方やタイミングが分かっていなければ意味がない。じゃあ何故今回バク転を例にとって話をしているかと言うと、何をするにしても「根っこ」は皆同じだと思うからなんです。
よく子供からのファンレターとかの中で、「どうしたらB・Bみたいに上手にバク転が出来るの?」「どうしたら速く走れるの?」「どうしたらダンスが上手くなるの?」といった質問を受ける事があります。誤解のないように言っておくと、実際のところ僕は自分のアクロバットは決して上手だと思ってません。僕よりもアクロバットの上手いマスコットは、いくらでもいます。今でも、試合でアクロバットを見せる前にはいつも「ちゃんと跳べるんだろうか?」という不安や緊張に襲われますしね。
だけどそれを踏まえた上であえてアドバイスさせてもらうと、何をやるにしても、上達への一番の近道は、その物事を「好きになること」――これに尽きますね。対象がスポーツであれ学問であれ仕事であれ、好きであるからこそ「もっと上手くなりたい」「もっと知りたい」という欲求が自然に湧いてくる訳じゃないですか。その為に練習したり勉強したりするのはちっとも苦にならないし、むしろ楽しいモノです。そして何かを達成した時の快感――。そりゃあ、時には辛い事もあるでしょう。でも、「辛い」ばかりじゃどんなに強い人間でも長続きはしない。だから僕は、前述のような質問に対しては「まずその物事を好きになってほしい」と答えています。余談ですが、僕はピアノも誰かに教わった訳ではなく、基本的に独学です。自分の好きなピアノの曲を耳で聴いて、それをマネして弾いてみて…というところから始めました。これも全く同じで、自分で弾けるようになった時の快感がたまらないんですよ。だから夢中になれる。何をやるにつけても同じことです。
オフの間、僕はアクロバットの練習は某所でいつも一人でやってます。それはもう、大変に孤独な作業ですよ(苦笑)。忙しいスケジュールの中で疲れている時も少なくないし、なかなか気が乗らない事だってある。だけど、少しずつ体を温めながらやっているうち、「上手くなりたい」と願いながら夢中になっている自分にふと気付くんです。まぁ僕も機械じゃないんで、最後まで調子が出ないまま終わってしまう日もなくはないですけど、そうやって「夢中」になれるうちはまだまだ大丈夫。逆に「出来ない事」に対して悔しさを感じなくなってきたら、その時はヤバいですね。アスリートが引退する時「気力の限界」という言葉をよく口にしますけど、この事を指すんだと思います。気持ち次第で体なんていくらでも動くようになるもの。僕はそれを身をもって体験してます。一番重要なのは体力や能力ではなく、気持ちの持ち方。皆さんには、何にチャレンジするにしても、「自分には才能がないから…」「もうトシだから…」みたいな感じで、最初から自分の芽を摘んでしまうような事はしないでほしいですね。
ところで、冒頭に書いたシーズン前の不安について――。結局のところ不思議なモノで、実際にシーズンが始まってしまえば、意外と大丈夫なんですよね(笑)。開幕前に一人で練習してる時は、連続バク転の回数が続かなかったり技にキレがなかったりして「大丈夫なんだろうか…?」と不安になる。時々球場でやってる捻り技なんか、一人で練習してる時はメチャクチャ怖いですよ(^^;)。でも、実際に球場で何万人という観客を前にすると、不思議と度胸一発で出来てしまうモノなんです。この感覚は今でも不思議ですね。自分でもナゼなのかはよく分からないんですが、ファンの前だとアドレナリンが出るから、としか説明のしようがないです(笑)。選手に対しても同じ事が言えると思うんですが、それだけファンの力というのは大きいものなんですよ。シーズン開幕までもうちょっと。今年も皆さんの声援で、選手や僕達に力を与えて下さい!