2007/02/19(月)B・B'sコラム

【#39】子供たちの笑顔

 先日幼稚園・保育園訪問先の新規募集をしたところ、30ヶ所の募集枠に対して何と1日で120件以上の応募がありました。今回応募に応えられなかった約90ヶ所の園には申し訳ないけれど、僕を待ってくれている園がこれだけあるという事は嬉しい限りです(^^)。
 2004年12月にこの幼稚園・保育園訪問を開始して以来、これまで訪問した園の数は124ヶ所、ふれ合ってきた園児は計約2万人に上ります(2007年2月15日現在)。この数字を見てもらえば分かる通り、幼稚園・保育園訪問は、僕の様々な活動の中でも最も力を入れているもののひとつですね。

 幼稚園・保育園訪問を行っている目的については、以前このコラムでも触れているので(#12「冬眠しないクマ」参照)、そちらも読んでみて下さい。今回はまず、僕の場合いつもどんな感じで訪問をしているのかについて簡単にご紹介しましょう。
 ――まずはMC(司会)のお姉さん(いつも球場アナウンスをしている「ウグイス嬢」にやってもらっています)が出て来て子供達に挨拶をした後、僕が「Go! Go! ファイターズ」の曲に合わせて登場。その後簡単にB・Bの紹介をしてもらった後、僕がピアノを伴奏して園児達に歌を歌ってもらいます。いつも歌ってもらってるのは、「となりのトトロ」の挿入歌の「さんぽ」という曲。「♪歩こう、歩こう、わたしは元気~」で始まる曲と言えば、ご存知の方も多いでしょう。ピアノは大体どこの園にも置いてありますし、この曲なら大抵どこの園児でも歌えますからね。
 歌の後はダンスコーナー。いつも試合でやっている「YMCA」です。YMCAが初めての子もいるので、MCが簡単に振付のレクチャーをしてからみんなで踊ります。そして次は「野球体験コーナー」。ここではティーボールと言って、棒(ティー)の上にゴムボールを置いて、それを子供達に打ってもらいます。時間の関係上1人1球ずつになってしまうけど、ちょっとでもいいから「野球っておもしろそうだな」「やってみたいな」と子供達に感じてもらいたい、というのがこのコーナーの狙いですね。野球というスポーツそのものに興味を持ってもらう事も、僕達の重要な使命ですから。
 そして最後は「ふれ合いタイム」。まずはクラス毎に集合写真を撮るんだけど、その後僕は、よほど時間に余裕のない時を除いて必ず一人一人の園児としっかり「ふれ合う」ようにしています。せっかく自分達の園にB・Bが来たんだから、多くの子供達にしてみればB・Bにさわってみたいと思うもの。だから僕は、単にB・Bが園に来てステージをして終わり…にならないよう、お別れの前に園児全員と握手・ハグなどのスキンシップを取っています。ここが一番の「B・B流」とも言える部分ですね。これについては後述します。
 ――僕の場合、いつもこんな感じでやっています。通常一つの園を訪問する時間は30分~1時間15分くらい。これは、最後のふれ合いタイムで園児一人一人に対応する為、園児の人数によって変動してきます。訪問のペースは、基本的に1日2ヶ所の週2回。シーズン中は試合が最優先であまり訪問は出来ないので、主に11月~3月くらいのオフシーズン中に行ってますね。年合計で、60~70ヶ所への訪問を目標にしています。

 これまで100ヶ所以上も訪問していると、実に様々な園があるのに気付きます。園の規模も様々なら(全児童が400人以上もいる「マンモス園」もあれば、僅か十数名のこぢんまりとした園まで)、園の教育方針も様々です。「そこまで厳しくしなくても…」と思う程しつけの非常に厳しい園もあれば、「もうちょっと子供達をしっかり管理してよ…」と言いたくなるくらい、良く言えば自由奔放、悪く言えばほったらかしといった園もありました。でも、どこに行っても感じるのは、何だか懐かしい気持ちになるんですよね…。子供達の元気な声や、教室から漏れ聞こえてくるピアノの音や歌声、すごーくちっちゃな机や椅子、本棚に置かれた絵本の数々、そして一種独特の教室の匂い…スケジュールに追われる日々の中で、束の間だけでもホッとする一時なんですよ。
 余談ですが、皆さんは幼稚園と保育園の違いって知ってましたか?僕も訪問を始めるまではそれさえよく分からなかったんですけど、訪問してるうちに両者の違いが分かるようになりました。興味のある方はご自分で調べていただくと分かると思いますけど、個人的な印象を基に一言で説明すると、幼稚園は学校的・保育園は家庭的な雰囲気、ってとこでしょうかね?幼稚園はお昼過ぎには終わってしまうけど、保育園はお昼寝を挟んで夕方までやってる。訪問を始めた事で、こんなちょっとした「社会勉強」にもなりました(笑)。
 訪問の際はどの園でもすごく歓迎してもらってますけど、特に昨シーズン優勝してからは、歓迎の度合いが高くなった気がしますね。園によっては、園内至る所にB・Bの写真を貼っててくれたり、子供達の描いた似顔絵や塗り絵をプレゼントしてくれたり…優勝を機にまたひとつ地域に溶け込めたのかな、という手応えも感じる今日この頃です。
 逆に、喜ばれ過ぎるのもちょっと困りモノな場合もありますね。よくあるのが、子供達よりもむしろ先生やお母さん方の方が喜んでしまう事。ここぞとばかりに色紙を何十枚も持って来てサインを頼まれたり、「ウチの子と2ショット写真を撮らせて下さい」なんてせがまれたり… (^^;)。そういうのに全部応えてると、キリがなくなって進行がメチャクチャになってしまうんで、そういった個別の対応は原則的に全てお断りするようにしています。お互いが気持ち良く訪問を終えて笑顔で園を後にする為には、最低限のマナーは守ってもらう必要がありますから。

 僕は大体年1回のペースで訪問先を新規に募集してますけど、いつも悩むのが、「どうしたら一番公平に訪問先を選べるか」という事。行く側にとっては「来てほしい」という気持ちの強い園に行きたいと思うのは当然の事ですけど、誰もが納得出来る方法でそういった園を選ぶのはなかなか難しい。今回も含め、これまではFAXで先着順に応募を受け付けていました。要望の強い園の方が、真っ先に応募してくれると思ったので…。しかしこの方法にも限界があります。先日の募集の際は、応募開始と同時にFAXの回線が半ばパンク状態になってしまいました(^^;)。何十回リダイヤルしても繋がらなかったり、たまたま1回で繋がってしまった、という運不運も関係してくるようですし、中にはFAXのない園もあるので、そういったところでも不公平が生じてくる。
 なので、次回からはもう少し受付期間を長く設定して、FAXだけでなく郵便でも受付が出来るようにしたいと思っています。そして、応募用紙に「B・Bの訪問を希望する理由」を書いてもらう。そのメッセージの内容によって、地域のバランスも加味しながら選んでいったら、ある程度公平性は保てるんじゃないかと思っています。
 応募の際「ウチは未認可の園なんですけど大丈夫でしょうか?」とか「園児が少なくてスペースが狭くても来てくれますか?」といった問合せもありますけど、僕にとってそんな事は大した問題じゃない。一番重要なのは、「B・Bに来てほしい」という気持ちが強くて、実際訪問した際にきちんと対応してくれるかどうかという事。別に大歓迎してくれと言ってる訳じゃなくて、お互いが気持ちよく一緒に仕事出来るかどうかという事なんです。
 あと、ちょっと対応に困るのが、幼稚園・保育園以外の施設からの問合せ。毎回必ず数件は、想定外の施設から「ウチにも来てもらえないか?」といった問合せがあります。例えば、小学生も含めた子供達が放課後に集まるような施設とか、子供から大人までが通う障害者施設とか、地方の小さな町で小学校と保育所が一緒になった施設などなど…。「来てほしい」という強い要望は分かるけど、幼稚園や保育園とかなり性質の異なる施設まで全て受け入れてしまうと収拾がつかなくなってしまうので、どこかで線引きをしないといけない。その「線引き」をどこでするかで、いつも悩むんです…。基本的には、対象の子供が6才以下の未就学児かどうか、ってとこが判断の基準ですかね。内容が小さな子供向けになっているし、小学生以上になると現実的な心が芽生えてきてやりづらくなる部分があるので…(ちなみに障害者施設であっても、園児が皆6才以下であれば訪問には差し支えありません)。

 2万人近くの子供達と接してくると、子供達にも色んなタイプがあるのが分かってきます。基本的に大体の子供はB・Bに対して純粋に喜んでくれるけど、必ず一つの園に1人か2人くらいは「現実的な主張」をする子がいますね(苦笑)。中には、マスコットのような存在がどうしても苦手な子もいます。最後のふれ合いの時、そういう子は表情を見ればすぐに分かりますよ。先生方の中には、「せっかくのチャンスだから」と無理に僕に近付けようとされる方もいますが、僕はそういった子には無理にハグしたりしようとはせず、軽く握手したり手を振るだけにしたりしています。小さい頃のトラウマというのは物凄く大きくて、一生引きずる事も多いじゃないですか。あまり無理強いしてしまって、一生マスコット嫌いになってほしくはないですからね。
 小さな子供はデリケートなもので、一見ごく普通に見えても様々なちょっとした障害を抱えた子供が最近は多いと聞きます。確かに、度を超えて落ち着きがなかったり、突拍子もない行動に出たりする子も時々見かけますし、先生方は本当に大変だと思いますよ。僕はせいぜい数十分訪問するだけですけど、僕に出来る最大限の事と言えば、最後のふれ合いの時に心を込めて抱き締めてあげることくらいですかね。ふれ合いながら一人一人の様子をよーく見ていると、僕を見て目を輝かせている子もいれば、全く無表情な子もいる。乱暴を繰り返す子や内気な子…僅か3才から6才ぐらいで、既に人格形成が始まっているのが手に取るように分かりますね。ニュースを見れば、子供達の巻き込まれる嫌な事件ばかりが目に付く昨今、親子の間でもそういったふれ合いの場が少なくなってきている――と、ある訪問先の園長先生がおっしゃっていました。小さな頃の体験というのは一生残るものです。「抱き締める」という行為によって、子供達の心に「温もり」を残していきたい。だからこそ、最後のふれ合いのコーナーは僕にとって一番重要な部分なんです。
 マスコットの役目として、マスコミに面白おかしく話題を提供するのも一つの大きなアピール手段かもしれない。それに比べたら、僕のやっている方法は時間がかかるし地味かもしれないけど、そうやって直接残した「温もり」の方が、人の心には永く残るはず。
ステージが終わって後片付けをしている最中、子供達の「びーびー!」という話し声がいつまでも聞こえてきたり、その日家に帰ってからも「今日はB・Bと会ったんだよ!」と子供が興奮気味に話していた、という話を親御さんから聞く度に、その信念は間違っていないと確信します。
 これは僕が以前見学させてもらったロッテのマーくん達の方法をそのまま真似させてもらってるんですが、僕が必ず訪問の際MCに言ってもらっている一言があります。「今日はB・Bがみんなの園に会いに来たので、今度はみんながB・Bに会いに球場に来てね」と。その「約束」をどれだけの園児達が守ってくれてるのか、正確な数字は分からないけど(本来そこまでキッチリ調べなければいけないんですけど)、それがキッカケで球場に来てくれるようになった子供達が沢山いるのは実感しています。そうやってファンが増えていき、やがて十数年後にファイターズに入団した選手に「B・Bが自分の幼稚園に来てくれたのがキッカケで、ファイターズのファンになりました」なんて言ってもらえたら、僕はもう涙モノでしょうね(笑)。

 来年度(4月以降)からは新たにスポンサーも付く予定で、今までどうしても経費的に難しかった遠方への訪問も、これで道が開けてきました。このまま毎年少しずつ対象エリアを広げていって、最終的には離島なども含めた道内全域を訪問したいと思っています。道内に全部で何百ヶ所(何千ヶ所?)の幼稚園・保育園があるのかは全然見当も付かないけど、僕はどこにでも出掛けるつもりでいますよ。「B・Bに来てほしい」と強く願う園のある限り、そしてそこに子供達の笑顔がある限り――。