2006/01/11(水)B・B'sコラム
【#26】僕がコラムを書く理由
ちょっと遅くなったけど、明けましておめでとうございます!2006年、ファイターズにとって北海道移転3年目を迎えると共に、このB・Bコラムも春には3年目に入ります。早いモンですねー。このコラムを書き始めた頃は、まさかこんなに続くなんて…思ってましたよ(笑)。いや、実際皆さんにお話ししたい事は、まだまだ尽きないんです。今でもこの先半年分くらいは、何を書こうかもう大体決めてるぐらいですから。
マスコットがコラム書いてる事自体珍しくはあるけど、今ではこのコラムの存在もだいぶ浸透したみたいで、球場やイベントでファンの方達から「コラム読んでるよ」と声を掛けられる事も実際かなりあります。コラムがきっかけで僕やマスコットの存在に興味を持ってくれた方も結構いるみたいで、これは嬉しい限りですね。
ところで、皆さんもう当然お気付きのハズですけど、このコラム、僕はかなり現実的なスタンスで書き続けています。マスコットという「仕事」を通して感じる赤裸々な気持ちとか、マスコットの世界の裏話的な事とか…。中には初めてこのコラムを読んで、そういったスタンスに面食らう方もいるようで。僕もバカじゃないから、このコラムの読者からの反応は、皆さんが想像してるよりはるかに詳しく、常に隅から隅までつぶさにチェックしてますよ。特にインターネット上では、みんな僕が見てないと思ってかなり好き勝手な事書いてますよね~。誤解のない様にどんなに分かりやすく書いたつもりでも見当違いな解釈されたり、何気なく書いた言葉が独り歩きしてメチャクチャ拡大解釈されたり…(特に「マスコットにも人権を!」の回とか)。みんな思いっきり本音で書いてるから、ある意味読んでて面白いですけどね(笑)。
で、このコラムへの反応は、大体8~9割くらいが「今までなかった新鮮な視点で面白い」、残り1~2割は「マスコットのクセにしゃべりすぎ」「現実的で夢が壊れる」って感じですかね?中には「このコラムは球団広報が書いてるんだろうか?」なんて見当違いな事言う人もいるんだけど、ウチの広報はそんなにヒマじゃないです(苦笑)。ちゃんと読めば、本人でなきゃ書けない内容ばかりだって事ぐらい、すぐ分かると思うんですけどねぇ。
まぁそれは置いといて、「マスコットのクセに云々…」なんて言われる事ぐらいは、僕も最初から百も承知でしたよ。しかし、これはちゃんとした目的があって、意識してやってる事なんです。このコラムをきちんと読んでくれてる方なら改めて説明不要かとは思うけど、今回はその辺について。
まず結論から言うと、僕がこのコラムをあえてこういうスタンスで書いてる理由はただ一つ。皆さんに、もっともっとマスコットについて「きちんと」知ってもらいたいからなんです!僕が初めてこの世界に入った頃に比べたら、最近、特にここ3~4年の間で、世間のマスコットに対する認知度は格段に上がったと思いますよ。でも、世の中にはまだまだマスコットに対する安易な固定観念しか持っていない人がどれだけ多い事か…。例えば、僕らマスコットの話題がTV番組か何かで取り上げられるとしますよね。そうすると、大抵ゲストやコメンテーターから出て来る最初の一言は、「アレって本っ当に暑くて、大変なんでしょうねぇ」なんていうお決まりのコメント。多分最初に思い浮かぶイメージが「暑い」ぐらいしかないからなんだと思うけど、僕らにとっては、暑いのなんてハナっから分かり切ってる事なんで全然気にしてないし、むしろイチイチそんな事言われるのにウンザリしてるんです(夏場の試合になると必ず耳元で「暑いでしょう?大変ねぇ~。」なんて言って来る方達、今後それは僕らに対しては禁句だと覚えといて下さい)。
それから、僕がやってる幼稚園・保育園訪問やイベントの時とかに、今でも「今日はホンモノのB・Bが来てくれるんですか?」なんて聞かれたり、イベント出演依頼書に「貴球団の着ぐるみ人形を…」なんて書かれてあったりして腹立たしい思いをする事なんかもある。イイですか?例えば「今日のイベントには○○選手が来ます」って触れ込みで、いざフタを開けてみたらその選手のソックリさんが来てたら、誰だって怒りますよね?それと同じ事です。それから、「人形」とか「ぬいぐるみ」ってのは、売店とかで売ってるような「動かない、命の宿ってない」物を指す言葉。僕らに対してその呼び方は「蔑称」に当たると思っといて下さい。「着ぐるみ」って呼び方されるのも、正直あんまり気分は良くない。僕らを指す時には「マスコット」とか、せめて「キャラクター」という呼び方で呼んでほしいんですよ。
おそらくそういう人達にとっては、僕達の仕事はその辺の街頭でティッシュ配りをしているような着ぐるみと大して変わらないものにしか見えないのかもしれない。だけど僕らマスコットは、毎試合何万人という観客を相手にパフォーマンスやファンサービスをする「プロ」です。僕がここで言う「プロ」とは、雇用形態がどうこうという次元の問題じゃない。そこに「ハート」があるか否かって事なんです。
「ハート」――文字通り、「心」「想い」、そんな意味です。僕がマスコットをする上で、一番大切にしてる言葉ですね。実はこの言葉、僕が親しくお付き合いさせてもらってる某マスコット(野球のマスコットじゃないですが)からの「受け売り」なんですけどね。彼の事はまたいつか、機会を改めて書きたいと思ってるんだけど、彼とマスコット論を語っていると、共通のキーワードとしてこの「ハート」って言葉が何度となく出て来るんですよ。どうしたらファンに愛されるマスコットになれるか、それを考えていく上で一番重要な部分が「ハート」なんです。例えどんなにスゴいパフォーマンスをしようが、そこに「心」が伴わなければファンには伝わらない。そして何よりも、自分自身がマスコットという役割に対して熱い「想い」を持って臨まなければ、愛されるマスコットになんてなり得ないんです。彼に限らず、長年マスコットに思い入れを持ってやってきてる仲間と話してると、大体みんな思う事は根本的に一緒です。集約すると、それが結局「ハート」って事なんですよ。
もちろん僕達マスコットは、本来言葉なし、ボディーランゲージのみで表現するのが本分。それで自分の感情や気持ちをどれだけ人に伝えられるかが腕の見せ所です。僕だって、ファンの目の前ではそれで最大限伝えようと努めてるつもりですよ。でも、それだけじゃどうしても伝え切れないものもある。そして前述の通り、残念ながらまだまだ世間一般にはマスコットに対する無理解や勘違いが多い。
僕達が普段どんな想いで仕事に臨んでるのか、そしてファンに対してどんなメッセージを贈りたいのか…僕はずっと前から、マスコット達のそういう「ハート」の部分を余すところなく伝えられる場所がほしかった。だから、僕が最初ファイターズに来て球団公式サイト内にB・Bのページを作りたい、と球団にお願いした時には、迷う事なくこのB・Bコラムの連載を思い立ちましたね。
まぁ考え方は人それぞれだから、このコラムについてどういう感想を持とうとご自由なんだけど、「マスコットのクセにしゃべりすぎ」って言う方にとっては、僕がここで書いてる事は単なる「内情暴露話」程度にしか映らないんでしょうね。確かに僕は、普通の人では知り得ない「ステージ裏」的な内容も書いてますよ。でもそれは全て、マスコットという存在に興味を持ってもらい、僕達の「ハート」の部分を伝えたいと思って意図的にやってること。別に何でもかんでも暴露しようと思って書いてる訳じゃない。僕だって、書いて良い事と悪い事の区別くらいはちゃんと分かってますんで。
「夢を与える」「夢を壊す」…僕達のような仕事をしている者にとっては、付き物の言葉です。僕も勿論、ファンの皆さん、特に子供達に夢を与えたいと思いながらいつもやってますよ。ただ、「夢」の与え方にも色んなアプローチがあると思うんです。某テーマパークの様に、「夢の世界」の演出にとことんこだわるのも一つの方法。それはそれでひとつの徹底したプロ意識だし、至極真っ当な方法だと思う。僕はこれについてとやかく言うつもりはありません。ただ、このコラムで僕は、あえて違う試みをしたいと思っている。
僕達マスコットは、それぞれの球団内での立場はチームによって様々でも、みんな思い入れとプロ意識を持って一生懸命やっているんです。マスコットは決して、ただ暑苦しいだけの、バイト感覚で出来るような仕事じゃない。僕は自分達のそういう「ハート」の部分を、本当の、そして自分自身の言葉でハッキリと伝えていきたい。それによって読者の皆さんにマスコットの事をもっと正確に理解してもらいたいし、こういう生き様もあるんだ…っていう形で夢や勇気を与える事も出来ると思うんです。このコラムを「オモシロい」と思って下さる方は、きっとそういう今までとは違ったアプローチの仕方を新鮮に思ってくれてるんじゃないでしょうか?
だから、今のうちにお断りしておきますけど、今の僕のスタンスに幻滅や矛盾を感じたり「夢が壊される」と思う方は、このコラムは読まない方がいいです。もしそういう方が大多数を占めるようであれば、僕も書き方を考え直さなきゃならないけど…。て言うか、そうなったらこのコラム自体書くのやめますよ。もし今までのタブーに縛られたまま、メルヘンチックで無難な言葉ばかり並べて良しとするぐらいだったら、わざわざ手間ヒマかけてこんな長い文章書きません。タテマエだけで書いてたらこのコラムの意味がないし、ネタだって続かないですしね。人付き合いだってそうでしょ?お世辞やタテマエでばかり話してたら、いつまでたっても本当にお互いを分かり合えない。
まぁ、本来一番こう訴えたいのはこのコラムを読んでないような方々なんですけどね。こんな長文に最後まで付き合って読んでくれるぐらいの方は、みんな僕の気持ちを充分わかってくれてる方々のはずですから(笑)。
さて、皆さんはどう思われますか?