2005/02/05(土)B・B'sコラム

【#15】マスコット界再編

 先月、神戸で「プロ野球12球団ふれあいチャリティ」ってイベントがありました。阪神淡路大震災から10年を記念して開かれたチャリティイベントなんだけど、僕達マスコットも招かれて神戸まで行って来たんです。他球団のマスコット達と会う機会は滅多にないので、それなりに充実した1日だったんだけど、残念だった事がひとつ…近鉄だけマスコットが不参加だったんですよね。
 プロ野球全球団のマスコットが勢揃いしたのは、2001年の福岡ドームでのオールスター戦が今のところ最後。去年、例の「トリビアの泉」に出た時も、残念ながら2球団が欠席でした。それだけに、久々の全員集合を期待したんだけど…。まぁ色々とやむを得ない事情があったであろう事は理解出来るんで、それについては批判しません。ただ、1人欠けていた事によって色んな事を考えさせられたんで、今回のコラムはその辺について…。

 皆さんご存知の通り、去年はプロ野球界にとって激動の年でした。合併・スト・身売り…色々な問題が一気に噴出して、「球界再編」という言葉、耳にする機会が多かったですよね。そして、まだまだ球界再編は終わっていないという見方もあります。しかし、「球界再編」というのは、僕達マスコットにとっても決して他人事ではない。 「球界再編」は、必然的に「マスコット界」の再編も意味する事になるからです。
 このオフには、合併によって近鉄が消滅し、新たに楽天が誕生、そしてダイエーがソフトバンクへと変わりました。ソフトバンクの場合、幸い今までのマスコットがそのまま残るみたいだけど、近鉄のバフィとファルルはチームと共に消滅し、そして楽天には新たにイヌワシのマスコット「クラッチ」と「クラッチーナ」が誕生する事になりました。
 去年ビジター応援で大阪ドームに行ってから、近鉄のバフィ・ファルルとは親しくさせてもらってるんだけど、彼らの辛い胸の内は痛いほどよくわかります。誰でもそうだと思うけど、自分の仕事に愛情と思い入れを持てば持つほど、それを失った時の喪失感は大きい。マスコットなんか特にそうです。長いことマスコットやってると、ファンの方達との様々な出会いや絆が生まれるんですよね。時には別れもある。ファンに愛されるマスコットを目指すんだったら、まずマスコット自身が自分の仕事に愛着を持つのは当然だけど、やればやるほどキャラクターそのものに対する思い入れ、チームやファンに対する情も深まっていって、やめるにやめられなくなるものなんですよ。かなり体力勝負の部分が大きいし、日本ではまだフルタイムでマスコットを出来る環境がほとんどないから、そんな長い間続けられる仕事じゃないかもしれない。でも、それを分かっていながら、マスコット達はみんなこの仕事を愛して、それぞれ色んな状況をやりくりしながら活動を続けてるんです。その点、僕の場合球団がマスコットという存在に対してすごく理解を示して、結構理想に近い形でやらせてもらってるから、ホント恵まれてる方だと思いますよ。
 皆さんは、もし自分の愛する人が突然目の前から姿を消してしまったらどう感じますか?大げさに聞こえるかもしれないけど、バフィとファルルの心境は正にそんな感じなんです。今まで自分が愛していたキャラクターを演じる事が、もう二度と出来なくなってしまう…僕だってこの気持ちは痛いほどよく分かります。これは、ファンの立場に置き換えても同じではないでしょうか?熱心なファンの中には、仕事の都合や金銭面など色々やりくりしながら、それでも毎日の様に球場に通い続け、時にはビジター球場にも遠路はるばる応援にかけつけてくれる方達が沢山いるのも僕はよく知っています。同じチームを応援する仲間同士、色んな出会いや絆も生まれてきたでしょう。そんな愛着を持って今まで応援してきたチームが、突然消滅してしまったら…。
 しかし一方、経営者側の立場から見れば利益を追求するのは当然の姿勢であって、合併や身売りもその論理に従って行われている。情に左右されてばかりいたら、ビジネスとして成り立たなくなってしまう。マスコットキャラクターの存続だって、現実的には色んな権利問題などをクリアしなければならないだろうから、決して簡単な問題じゃないでしょう。単に合併や身売りに対して批判をするだけなら誰でも出来るけど、僕達が今考えなければならないのは、今後こういう悲劇を繰り返さない為に、僕達はどういう努力をしていかなければならないのかって事だと思うんです。

 よく言われる事だけど、 これからは「地域密着」が成功へのカギになってくると思うんですよね。趣味が多様化して、TVやインターネットで国内・国外問わず様々なスポーツがいつでも気軽に見られるようになった今、もうある特定の人気球団だけに頼ってお客さんが来るのをノンビリ待っていられる時代ではないと思います。僕達は、これからもっともっと球団とファンとの距離を近くして、どんな事をファンが望んでいるのか、何をしたらファンが楽しんでくれるのかを「ファンの目線」に立って真剣に考えていかなければいかない。そして、ファンの側もただ受身ではなく、色んなファンサービスのアイデアを積極的に聞かせてほしいし、本当に選手達の力になるような応援をして応えていってほしい。「球場に行ったら、何か楽しい事が待っている」「このチームを応援したら、何か素晴らしい事が起こる」と思えるような雰囲気を、地域のファンと一緒に作り上げていく努力が成功への道だと思っています。
 手前ミソかもしれないけど、その点マスコットは欠かせない存在だと思いますよ。球場の楽しい雰囲気づくりにはマスコットは正にうってつけだし、僕達は球団の中で一番ファンと身近に接して、一番ファンの声が耳に入って来る立場なんだから、まずは僕達マスコットが率先してファンサービスに取り組まないといけない。

 最後に、僭越ながら楽天球団、そして楽天ファンの方々にマスコットに関するお願いをひとつ…。新しく誕生したイーグルスのマスコットを、ぜひとも今後大切にしていって下さい。マスコットは単なる「客寄せの為の着ぐるみ」ではなく、選手に代わってチームとファンとの「ハート」をつなぐ架け橋です!新しいパ・リーグを、これから一緒にアツく盛り上げていきましょう!