2004/07/16(金)B・B'sコラム
【#8】マスコットとバク転の相関関係についての考察
…何やらコムズカしいタイトルになりましたが(笑)、皆さん「マスコット」と聞いてまず思い浮かぶイメージって何でしょう?僕が思うに、10人中7~8人は球場でバク転してる姿を想像するんじゃないかな?TV中継でマスコットが映る数少ない場面って、ホームランを打った選手を出迎えて後ろでバク転してる姿とか、ヒーローインタビューの背後とか、そんな場面が多いですからね。僕も誰かに「プロ野球のマスコット」という職業を説明する時、最初は「?」って反応示す人でも「ほら、あの球場でバク転とかしてるヤツ…」って説明すると、大抵の場合「あー、はいはい」って理解してくれますから(笑)。確かに、バク転や宙返りなどのアクロバットをしているマスコットは多い。僕の知ってる限り、常時アクロバットをやってるのは、僕の他に西武のレオ、巨人のジャビット、中日のドアラ、阪神のトラッキー…5球団になりますね。
でも、僕がこの業界(?)に入って以来ずーっとギモンに思い続けてる事があるんですよね。「なぜ野球のマスコットにバク転なんだろう?」って…。野球のマスコットが野球をするのなら分かる。だけど、本来アクロバットって別に野球と関係ないじゃないですか?そこで、今回は「パフォーマンス」という観点からこの辺について僕の考えをお話ししたいと思います。
そもそも、プロ野球のマスコットがバク転などのアクロバットを本格的に取り入れ始めたのは、いつ頃なんでしょうか?僕は詳しく調べた訳じゃないけど、 おそらく今から10年ちょっと前ぐらいに、阪神のトラッキーが始めたのが「ハシリ」なんじゃないかと思います。あれは'93年頃だったと記憶してますけど、当時はまだマスコットがバク転するのが珍しく、「珍プレー好プレー」の番組でトラッキーがスタジオ出演して、ゲストの前で宙返りを披露してるのを見た事があります。それ見て「おぉ、スゲェー!」って強く印象に残りましたね。その後、トラッキーのアクロバットパフォーマンスがウケているという事で、他のチームでも追随するマスコットが出てきたという感じでしょうか?その時はまさか、自分が将来その仕事をすることになるとは夢にも思いませんでしたけど(笑)、その時の強烈な印象が僕の現在につながっているのは確かです。
では、日本プロ野球以外のマスコットはどうか?僕はJリーグのマスコットも色々見て来たし、実を言うと経験もあるんですけど(笑)、側転までは見た事あるけどバク転は見た事ないなぁ…。メジャーリーグのマスコットも、そういう話は聞いたことないです。但しアメリカのプロバスケット・NBAのマスコットは、ミニトランポリンで前宙してからダンクシュートを決めるパフォーマンスとかやってるのをよく見ますね。以前アメリカ人の友達に「野球のマスコットをやってるんだよ」って話したら、「じゃ、アクロバットとかやるの?」って聞かれた事があったから、向こうの人にも「マスコット→アクロバット」っていうイメージはある程度あるのかも?
でも、どうなんだろう?本当にバク転ってマスコットのパフォーマンスとして必要不可欠なモノなんでしょうか?単にバク転の良し悪しがパフォーマンスのレベルを決めるのなら、体操選手はみんな凄いマスコットになれちゃうけど、別にそういう訳じゃないですよね? 確かに、アクロバットは一種「飛び道具」みたいなモノで、グラウンドでウケを取るには一番手っ取り早い。前回も書いたけど、特に地方球場とかで一発かますとかなり盛り上がりますからね。しかし、僕はあえて言いたい。パフォーマンスの質ってのは、単にバク転の回数では換算出来ないんだよ、と。
これは僕が一目置いてる、ファンの間では今やある意味「伝説的存在」となっている某マスコットが話してくれた事だけど、 マスコットのパフォーマンスで一番重要な事って、スタンドのお客さんとの「対話」だと思うんですよね。試合の流れやチームの状況に応じて、ファンと一緒に喜んだり悲しんだり、時には怒る事があってもいい。マスコットはグラウンド上でただ機械的にバク転したり手を振ってるだけの「人形」じゃないんです!ある意味ファンの代弁者として、グラウンド上で体を張って喜怒哀楽を思い切り表現する事によって、初めてファンに理解され愛されるキャラクターになれるんじゃないかと、僕は思いますよ。現に、メジャーリーグやJリーグのマスコットの中にも、アクロバットなしでも動きの面白さやアイデアを凝らしたパフォーマンスでファンに愛されてるマスコットはいますからね。
勿論、これだけ「マスコット=バク転」というイメージが浸透しちゃってる訳だし、「今日もB・Bのバク転を楽しみにしてるからね!」って声を掛けてくれるお客さんも結構いますから、期待に応えたいって意味でもこれからバク転や宙返りとかはやりますよ。「出来ないから屁理屈言ってんだろ!」って言われたくないってのもありますけど(笑)。でも、 僕は「バク転だけ」のマスコットにはなりたくない。だから、今色々とパフォーマンスのアイデアを捻りながらやってます。8回表終了後の「スイングスイング」もその一環ですね。あのネタはほぼ全部僕が考えてやってるんですよ。
だから、球場でむやみやたらにバク転のリクエストをされても、あえて自分で必要性を感じた時だけに留めておくようにしてます。地方球場に行くと、やたらとバク転のリクエストがかかるんで困っちゃうんですけど…(^^;)。ですから僕のバク転を見たい方は、お見逃しのない様に、やる時によーく目に焼き付けておいて下さいね!でも、見逃した方にも充分楽しんでもらえるように、これからもアイデアを絞って色々やっていくつもりですのでヨロシクです!(^^)