うおっ乳デカいね♡ 違法建築だろ   作:珍鎮

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ベル♡ ベル。

 

 

「……視認できないお友だち、ねえ」

「……信じてくれるか」

「うーん……」

 

 サイレンスを高校の前から連れ出した放課後。

 少しだけ喫茶店に顔を出した俺と彼女はその場で解散し、一旦帰路に就くことになった──のだが、あれだけ騒ぎを起こして何もない筈はなく。

 ちょっと話がある、と連絡をよこしてきた山田を家にあげて小一時間経過し、これ以上山田に誤解をされたくないという思いから、俺の抱えている事情を詳らかに説明したいま現在に繋がる。

 

 ちなみに頭が沸騰しそうなレベルのムラムラは健在だ。我慢ちゅらいよぉ♡ おいサンデー乳吸わせろ。

 

「まぁ、秋川のそばに見えない誰かがいるっていうのは分かったよ」

「本当か!」

「……目の前でボールペンがひとりでに浮いて、僕と筆談まで出来てるんだからそりゃ信じるしかないでしょ」

 

 説明は簡潔に事実だけを伝えた。

 レースのチケットを奪った野生動物を追っていたら、結果的にカラスの集団に襲われている成人男性を助ける事になったこと。

 その男性がマンハッタンカフェの担当トレーナーだったこと。

 そして彼を襲っていたカラスは、野生動物ではなく怪異という幽霊並みにオカルトチックな不思議存在で、ターゲットを俺に切り替えたその怪異たちに対処するべくマンハッタンカフェに協力してもらう事になり、その過程で彼女の同級生であるサイレンスたちも手を貸してくれる流れになった結果、とりあえず怪異に遭遇しても対処できるよう一旦俺とバイト先を同じにしよう──という感じで今に至ると。

 解呪の儀式の内容の詳細以外はおおかた全部伝えた。アレに関しての秘密は墓場まで持っていく所存。

 

「……いや、でもやっぱり信じられないな。見えない仲間の事じゃなくて、中央のウマ娘たちに協力してもらってるってとこ」

「それは……」

 

 確かにそう思われても不思議ではない。

 なぜならあの三人が特にヤベー立場にあるからだ。

 学園の生徒というだけでなく、三人ともレースで勝ち星を上げ続け全国にその名が知れ渡っている有名なウマ娘であり、ピンポイントでそんな人物たちと知り合っていると言われたら疑うほうが普通だろう。

 しかもあの女たちは俺のことが好き。友達として。いや、夫として。

 ──やむを得ない。

 

《おす》

 

 マンハッタンカフェにメッセージで連絡だ。彼女に直接事情を話してもらった方が理解が早いはず。

 問題は休み明けで学園が忙しいこの時期に彼女の時間が取れるかどうかだが、はたして。

 

《はい。どうかされましたか 葉月さん》

 

 返信はや。三秒くらい。女子すごい。

 そんなに俺が恋しかったの? 寂しがりメスガキがよ。一生かけて守り抜きたい。

 

《いま大丈夫か?》

《問題ありません 部屋で一人なので》

《よかった 頼みがあるんだけどいいかな》

《勿論です! なんでも言ってください》

 

 何でも。じゃあ淫猥な自撮り送って早急に。それが社会だ。

 マンハッタンに連絡を入れたことで急速に高まった性欲を歯を食いしばることで我慢していると、かわいいスタンプが一個送られてきた。ちょっと交尾したくなってきたな。俺の前で勝負服を着てみない?

 とりあえず友人に呪いや怪異について詳しく事情を話してほしいと頼み込み、了承を貰えたためビデオ通話で繋げた。

 

「山田、マンハッタンさんが直接説明してくれるって」

「はぁ……? マンハッタンさんって、マンハッタンカフェの事? いやいや、そんなまさか──」

 

 とりあえず面と向かって話しやすいようテーブルの上にでも置くか。カフェちゃん毎晩ビデオ通話したいね。

 

『初めまして。私、マンハッタンカフェと申します』

「──ッ゛!!? ……!!!?!??」

 

 マンハッタンと初めて電話越しに話した山田の豪快なリアクションもそこそこに、事情説明が始まった。どうやら俺の気持ちも察してくれていたらしく、彼女の説明の中に解呪の儀式の詳細は入っていなかった。葉月理解検定一級。なかよしなつがいになろーね♡

 

『そういう事なので……あっ、そろそろ同室の方が戻ってこられるみたいです』

「ぁっあ、えとッ」

「助かったよマンハッタンさん。また喫茶店で」

 

 緊張しすぎて会話にならない山田に代わって礼を言うと、何故かマンハッタンはモジモジし始めた。明らかに何か言いたげな様子だ。告白?

 

「……どうかした?」

『あっ! い、いえ……その、山田さんは今夜、葉月さんのお家に泊まられるのかなと……』

 

 明日も学校があることに加え、なにより着替えも持ってきてないのでそれは無さそう。デブだからこそなのか体臭に気をつけているらしく、シャワーを浴びられないとなると死にかけるやつなのだ。その意識のおかげか山田は近づくといつも柑橘系のいい匂いがする。

 

「かっか帰ります! 僕帰りますっ!!!」

「だってさ。何かあったのか?」

『いえ……何でもありません。では、また』

「ああ、お休み」

 

 てな具合で事情説明は無事に終わった。

 もっと話をしたかったが今回ばかりはしょうがない。子作り二回で手を打つ。

 さて山田もこの様子なら俺が言っていた事をちゃんと信じてくれたに違いない。

 

「ほわ……」

 

 山田のほうを見ると、未だマンハッタンとの会話の余韻に浸っていた。

 想像以上に彼女と話せた事が衝撃だったようだ。現実感を確かめる為に頻繁に自分の頬をつねっている。いたそう。

 正直アレを見るまでずっと不安だった。校門の前でサイレンスを連れ出してから、なんて言われるか気が気じゃなかったのだ。

 電話で中央のウマ娘と話せた事を喜んで他のことを二の次にしてくれたのなら逆に助かった。

 

「中央のウマ娘と話すのってそんなに緊張する事か?」

「当たり前だろ!!!!!!!!!」

「うるさっ……」

 

 まぁ俺もハイパーデカ乳ウマ娘を前にした場合は同じ反応をするかもしれない。お前は俺だ。

 

 それから山田は少し経ってから意気揚々と帰っていった。

『困った事があったらまず僕に頼ってね! 手伝いが僕だけで十分な事でわざわざウマ娘さんたちの手を煩わせるのは本意じゃないからッ!!』と、そんな言葉を残して。あいつらへの心配が八割だった。もっと俺のこと見ろカス。手伝ってくれてありがとう。

 とりあえず山田への弁明措置は無事に終了し、俺の中で唯一の懸念点だった部分をようやく解消することができたのだった。アイツにうまく説明できたとあれば、後はもう誰にどう事情を知られても問題はない。隠れてイケない事をしているわけでもないので。

 しかしすぐに帰ってくれて助かった。これ以上ムラムラを我慢するのは不可能だ。

 

 数分後、俺も外に出た。家に食料が何も無いため、サンデーの分の飯を買わなければならないのだ。三大欲求が刺激されまくってる現在の状態では軽い空腹も結構辛い。何が食べたい?

 

「うどん」

 

 安上がりで助かる。温玉のトッピングを許可。

 

「ハヅキ」

「どした」

「あそこに居るの、ベルちゃんじゃない」

 

 コンビニで軽く買い物を済ませて帰路に就くと、道中公園に人影を発見した。

 もう暗い時間帯なので一瞬誰だか分からなかったが、街灯を頼りに目を凝らしてよく見ると、そこにいたのは見慣れた少女──メジロドーベルであった。

 あんな場所で何をしてるのだろうか、彼女は。

 ブランコに座り俯いたままタブレットに視線を落としているが、何かを操作している様子ではない。

 一言で言えば、まるで意気消沈しているかのような姿だ。

 というかそもそもトレセンの門限の時間はとっくに過ぎている。もしかしなくても普通に門限に間に合わずに追い出された可能性が高い。

 

「うわっ、雨か……?」

 

 声をかけようと思ったのも束の間。

 突然雨が降り始めた。雨脚が強まる予感に従い、一旦コンビニへ戻ってビニール傘を買って外に出ると予想通り大雨になっていた。

 こんなに強い雨が降ってたらドーベルもとっくにいなくなっている事だろう。

 

「……まだいるじゃねえか」

 

 何で大雨の中ブランコに座ったまま微動だにしてないんだあの女。シリアスな場面のシチュエーションの練習かしら。

 あのままだとタブレットがダメになるし、本人も風邪をひいてダメになってしまう。

 どういう考えであのままなのかは知らないが、とりあえず声はかけた方がいいと考え、小走りで彼女がいる公園の中へと向かっていった。

 

「おーい、ベル!」

 

 急いで傘を渡そうと近づく。

 すると俺の声に反応して、ようやっと彼女は顔を上げた。

 

「──ぁ」

 

 そして、そのまま固まってしまった。

 

「……」

 

 ドーベルは俺を見つめたまま何も言わない。

 虚ろな目だ。まるで活気が感じられない。

 察するに──まぁ、何かあったんだろう。

 メジロとかいう何か凄そうなとこのウマ娘で、中央の生徒でもある彼女に纏わりつく期待や重責は俺には計り知れない。

 なので、敢えて気にしない方向でいく。

 ドーベルに何かあったのは確定だとしても、それはそれとして俺も現在進行形でナニが大変な事になってるのだ。決壊する……ッ!

 大事な話はトレーナーや学園の連中と一緒に解決していくものだろうし、俺にできる事は今夜の宿を提供する程度。

 誰かを泊めるという事は、つまり煩悩を滅するためのあの夢を見ることも先送りになるという事だがしょうがない。友達優先。間違えた恋人優先。

 

「ほら、立って」

「えっ……」

「話したくない事なら何も言わないでいいから、とりあえずウチに来い。ガチで風邪ひくぞ」

「……う、うん」

 

 そんなこんなで手を繋いで連れ出し、メジロドーベルお持ち帰り。気が早い同棲ということかよ♡ 帰ったら二人で愛を育もうね。

 

 

 

 

 現在、ドーベルは寝ている。

 無論家主である俺とサンデーも眠りについている。

 だが俺たちは現在布団の上ではなく、ドーベルの実家にある自室らしき場所でパソコンやタブレットや漫画雑誌と睨めっこをしていた。

 眠っているのに起きている。

 今回の事の経緯はこうだ。

 

 まず、俺の自宅に戻ったドーベルは風呂に入った後、雨に濡れ続けた疲弊からかすぐ床に就いてしまい、彼女を起こさないため俺たちも早々に布団へ潜り込んだ。

 カッコつけてドーベルを攫ったはいいものの性欲が限界すぎた俺は結局我慢できず、サンデーを抱き枕にしながら『こっそり夢を見せてくれ』と懇願。

 物理的に身体を接触させたままでないと夢をコントロールできないため、しっかりガッチリとサンデーに触れながら眠りに落ちる──その刹那。

 寝返りを打ったドーベルの手が俺の背中に当たり、コントロールする夢の対象が()()()()()()()()()に移ってしまったため、俺たちは彼女の夢の世界へ招待される事になってしまったのであった。

 

 寝てるのに起きてるとは、つまり俺たちが今いる部屋は現実ではなくドーベルの夢の中という事だ。

 

「うーん……なにも浮かばない」

「どぼ先生、肩でも揉みましょうか」

「……や。触んないで、えっち」

「まぁまぁそう言わず」

「ひゃわッ!?」

 

 煩悩が天元突破しているというのもあるが、どうせ忘れる夢の世界という事で割と好き勝手に動いてる。肩こり凄いですねぇ〜〜〜原因を作ってるその重い物も持ってあげたいところ。

 

 ところで、俺たちは何をしているのだろうか。サンデーはテレビに映ったアニメに夢中だし、どう考えても彼女はこの夢をコントロールできていない。

 憂鬱だ。

 前回は電気がついてない俺の部屋という屋内空間だったのに、途中で雨が降るわ風が吹くわ薄暗いわで散々だったので、今回は明るい場所でサンデーの顔がよく見えるようベンチが一つだけある広い草原とかにでも行きたかったのに。

 また屋内。

 しかも他人の夢。

 俺の性欲をどうしてくれるつもりなのだ。

 

「ゲームの脚本って難しいなぁ……」

 

 ドーベルが俺に肩を揉まれながら、背もたれに体重を預けて呟いた。

 

「脚本?」

 

 こいつは漫画作家先生だったはずだが。

 

「アタシの漫画を読んでくれてて、共同で恋愛ゲームを作りませんかって持ちかけてくれた人がいてさ。ネタはいっぱいあるんだけど纏まらなくて……」

「ネタって、このネタまとめファイルってやつの中の?」

「そうそう。見てみて」

 

 簡単にタブレットの中身を見せるような性格ではないドーベルが許してくれるのは、単にここが夢の世界で彼女の思考も若干緩いものになっているおかげだろうか。新婚夫婦生活の中で俺がトレーナーさんと入れ替わっても違和感を持たなかったマンハッタンのように。

 

「見ちゃっていいんすか」

「ツッキーには見せらんないけど、アシスタントさんなら別に……」

 

 どうやら俺を秋川葉月だと認識できていないらしい。

 てかデビューもしてないのにアシスタントて。いかにも夢って感じの内容だ。小賢しく愛らしい女。

 

「どれどれ……」

 

 パソコンの該当ファイルを開いてみた。彼女の夢の中ではあるため、このファイルの中は恐らく実際に存在するものか、ドーベルの頭の中にあるネタだと思われる。さて中身は──

 

 

【1.マックイーン:30% 態度や会話の内容からして恐らく一目惚れと思われる。学園内で転倒しそうなところを助けてもらった模様。

 2.ライスシャワー:15% 彼の話題を出すと少しだけ赤面したが、教えてもらった情報だけ見ればまだ親切なお兄さん程度の認識である可能性が高い。

 3.スズカ:85% たぶんアタシと同じくらい つよすぎる きけん

 4.カフェ:90% おそらくアタシ以上 むり かてない】

 

 

 ──よく分からん。

 何だろうこれ。知ってる名前に知らない名前、それからパーセント表記の数値と短い備考欄が設けてある。

 これがネタ?

 なんのネタになるんだコレが。

 ライスシャワーから下は知っている。ただ一番上のマックイーンという人物名に誰が該当するのか知らない。イベントでも確認してたのは知り合いのウマ娘の名前だけだ。

 

「なんすかこれ」

「とある知り合いの……みんなからの好感度かな?」

 

 何で疑問系なんだ。てか誰のだよ。もしかして俺? ウマ娘を攻略中? えへへ。変態もいい加減にしろといったところ。

 

「実際の数値じゃなくて、あくまでアタシの主観だけどね。こういうの恋愛ゲームなら参考になるかなと思って書いてみた。……でも」

 

 少し俯くドーベル。耳がペタンと垂れ下がっていて非常にキュート。分を弁えよ。

 

「それ書いてるうちに自分で落ち込んじゃって。走りの調子が悪くなってトレーナーに心配されたし、予想通り不注意で足も怪我しちゃって……散々だなぁ」

 

 書いてて落ち込むネタのメモってなんだ。んなもん書くな。

 ていうか足を怪我してたの? セクハラしてる場合じゃねえよ病院連れて行かなきゃ。

 

「まぁアタシの事はいいんだって。アシスタントさんは恋愛ゲームを作るのに何かいいアイデアは無い? 例えばタイトルとか」

 

 恋愛ゲームのタイトル。俺なら欲しくなる作品名。

 じゃあ『もっと!種付け!炎のデカ乳超エロ♡トレセン学園!!』とかどう?

 


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