あのD.B.クーパーが、ついに正体を特定された!! ――といっても、日本人の多くは「D.B.クーパーって誰や?」というのがオチかもしれない。実は彼こそ、21世紀の現在も逃亡中の、米国史上唯一の未解決のハイジャック事件の実行犯なのだ。

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■1971年の未解決ハイジャック事件

 1971年11月24日の感謝祭前夜。ノースウエスト航空11便はオレゴン州ポートランド空港を飛び立ち、シアトルへ向かっていた。離陸直後、機内ではダンディーな紳士がタバコに火をつけ、バーボンソーダをオーダーしていた。70年代のアメリカ国内線なら見慣れた光景であっただろう。ただ少し違うのは、ドリンクを運んできたCAに代金と一緒にメモを渡したことだ。そこには次のように書かれていた――「自分は爆弾を所持している」。

 そう、紳士はダン・クーパーという偽名で搭乗したハイジャッカーだったのだ。彼は20万ドルとパラシュート4つを要求した。シアトル・タコマ国際空港到着後、乗客36人と乗務員2名は降ろされたが、何も知らされていない乗客たちは、給油のためだと信じたそうだ。パイロット2名を人質に飛行機は再び離陸、メキシコ・シティへ向かうよう命じられた。そして、機体を高度3000mまで低空飛行させると、彼は札束が詰まったリュックを背負い、後部ドアからパラシュートでダイブ!

 後方から空軍の戦闘機2機が追跡していたが、視界不良で犯人が落下する様子を確認することができなかったという。おそらく、ポートランド北部にあるアリエル郊外に着地したものと思われたが、その後の足取りはプッツリと途絶えてしまった。

 その離れ業から、犯人は熟練スカイダイバーということになり、容疑者も複数上がったが、決定的証拠がつかめず今に至っている。この前代未聞の逃走劇が、当時のアメリカでかなり話題になったのもうなずける。ハリウッドのアクション・パニック映画さながらに天空からダイビングし、その間、誰も傷つけず終始紳士的振る舞いだったことからアンチヒーローに祭り上げられたのだ。

 あれから47年――当時の捜査関係者らが次々とリタイアし、「D.B.クーパー事件」はコールドケース目前となっていた。しかし、執念深くヤツを追い詰める男がいた。辣腕TVプロデューサーのトーマス・J・コルバート氏だ。これまでにFBI、法医学者、私立探偵など、あらゆるリソースを駆使して犯人割り出しに全力を傾けてきた。

■最重要容疑者の逮捕か近い?

 そして昨年、事件は急展開を迎えることに。地元メディア「Seattle Post-Intelligencer」が伝えるところによると、クーパーが新聞社宛てに送ったとされる5通の手紙を、コルバート氏の捜査チームが米国情報公開法を行使して入手したというのだ。5通目は事件直後の11月24日付で、書き出しはこうだ。「自分が捕まらないことは、最初からわかっていた」。

 手紙の一番下には9桁の数字が羅列してあるが、長い間謎とされてきた。ところが、捜査チームの暗号解読班がある重大な発見をすることに。「LosAngels Times」紙の記録保管庫の中から、暗号解読の手がかりとなる対応コードを見つけたというのだ。この数列はクーパーの共犯者へ「飛行機から飛び降りて生還した後の行方」を秘密裏に伝えるメッセージだったとコルバート氏は踏んだのだ。

 そして、この手紙の差出人こそ、現在カリフォルニア州サンディエゴに住む御年74歳のベトナム帰還兵、ロバート・ラックストローだというのだ。実は、ラックストローは1978年からすでに、最重要容疑者としてFBIからマークされていた。

 調べを進めると、彼の元上官が「ラックストローは入隊中に暗号の基礎を学んだ」と証言していることがわかった。ラックストローの除隊理由は「機密情報取扱許可の人物調査で不合格になったため」とされているが、実際のところは高校中退にもかかわらず大学を2つ卒業したとか、メダル受賞者であるなどと虚偽申告したことがバレたせいだという。

 また“ジャンプスクール”で知られるジョージア州の「US Army Airborne School」やグリーンベレー・アメリカ陸軍特殊部隊で飛行機やヘリからの降下技術を学んだ経験があり、ますます容疑が濃厚となっている。それこそ入隊理由が「ハイジャックしたかったから」だとすれば、米軍もなめられたものだ。

 続々とラックストローに不利な証言が出てきており、逮捕はもはや時間の問題という様相を呈しているが、元FBI捜査官で1980年代にクーパーを追っていたダーウィン・シュローダー氏は、コルバート氏の奮闘に対して「本当に真犯人なのか懐疑的」と、やや辛口なコメントをしている。まるで未解決事件が解決してしまうのが寂しいかのようだ。さしずめ“クーパーロス”とでもいったところか。
(文=佐藤Kay)

※画像は「Wikipedia」より