作者なんだけど自作小説の異世界に転生しました〜ろくでもなくてご都合主義な、自分が描いた世界だとしても〜
S.D.ロジェ
1 作者、転生する
目が覚めると見たこともない空が広がっていました。
雲ひとつない青空には太陽の他に、赤と青の大きな月が2つ浮かんでいます。
目を前に向ければ緑の草原がどこまでも続き、土を踏み固めただけの道が前後に続いていました。
日差しはあたたかく、吹き抜ける風は涼しく心地良いです。
これは夢? そう思い頬をつねってみました。
「いったーい!」
どうやら夢ではないようです。
私はトラックに轢かれたはずなのに、気がつけば原っぱのど真ん中にいました。
これはいわゆる異世界転生ってやつだと思います。それか天国ってやつなんでしょうね。
でも神様とかがいないあたり、多分ここは異世界でしょうね!
まあ死因とか、今はどうでもいいですよね。
転生した今、前世のことはどうでもいい……かもしれない。
まあ重要なところではないでしょうね。
もう一度空を見上げます。
特徴的な赤と青のふたつの月が浮かぶ、これまた特徴的な昼の空です。
異世界なんて今じゃどこにでもあるけど、こればっかりはまちがえるわけがないでしょう。
「ここは俺が書いた小説の異世界だね!」
◇
……一体どうしてこうなったのかはわかりませんが、とりあえず状況を整理しましょう。
服装は轢かれた時に着ていた学校の制服姿ではなく、異世界らしい服になっていた。
そして何より……
「……あ、アレがあるー!!」
男の人にしかついていない、アレがあるじゃないですか!!
まさかこれは……TSってやつですか?
いやいやいや、TSなんてものにはまだ興味ありませんよ? まあ更新待ちの小説にはいくつかTS転生がありますが。
まあいいでしょう。私の書いていた小説の主人公も異世界転生した男子高校生だったので、なんかそこらへんが関係しているのでしょう。
話を戻しましょう。
持ち物は何も持っていません。
歩きスマホで横から迫ってきたトラックに気付かず轢かれたので、スマホぐらいあるでしょうと思いましたが、無情にもありませんでした。
その代わり、腰に一本の剣がささっていました。
一見普通の剣に見えますが、大きな赤い宝石が埋め込まれています。
おそらく「加護のルビー」でしょう。
加護のルビーというのは、主人公の持つチートアイテムの一つです。
「つまり俺は……主人公ってこと!?」
なんで一人称が「俺」なんでしょうか。TS転生の影響でしょうか?
おそらく主人公のようだ。いや、主人公ってことにしておこう。
ちなみに私の小説の主人公も現代世界からの転生者なので名前は「
せっかくだから記憶の確認もしてみましょう。
私は伊勢涼子、高校2年生。引きこもりというほどではないがそんなに社交的じゃなくて、趣味も読書と小説執筆。
成績は中の下で、運動は下の方。
うん、記憶もちゃんと引き継いでいるようです。
学校で勉強した知識も……あまり熱心に勉強していたわけではありませんが、一応引き継いでいるようです。
まあ化学とか、知っているだけでチートできる知識もあるでしょうし。
次は全身を確かめてみましょう。
主人公は確か長身のイケメンという設定にしたはずです。
その割には身長とかが変わったようには思えません。男性になっていることは考えないとして。
腕も普通の長さだし、なによりどうみたって筋肉がありません。
「ムキムキというほどではないが必要な筋肉はきっちりとついた引き締まった体つき」と描写したはずなんだけど、どうやらそんなことは全くないらしいです。
顔はどうなんでしょう。
「鏡なんて持ってないし、どうやって確認しよう……あっ、そうだ」
剣を
ピカピカに磨かれた刀身に、自分の顔が写ります。
「……これが『一般的日本人男性』か……」
「やや幼くて女性に見間違われることのある中性的な顔立ちのイケメン」ではなく、どう見たって一般的日本人男性、つまりフツメンです。
ちなみに主人公は金髪ですが、今の私は純日本人な黒髪。
現実は非情ですね。
せめて見た目ぐらいイケメンに転生させてもいいのに……
生まれ変わったらイケメンになっていたのでなにもしなくてもウハウハのハーレム生活でした、なんて異世界ものはどうでしょうか。
「……すでにあった気がする」
さてさて、落ち込んでいてもしかたありませんね。
とにかく、私は主人公のようです。
だったら次にやるべきことは……なんでしょうか?
さすがに自分の小説とはいえ、細かい展開は覚えてないんですよね。
うーん。考えてもわかるわけじゃないね!
とりあえず道を進んでみましょう。
「おっ、あれは」
長く伸びる道の先に目を向けると、緑色の肌をした人影が見えてきました。
たしか最初に出てくる敵はゴブリンだったはずです。
さっそく初戦闘ってわけか。テンポが良くていいですね。
……これって自画自賛になるののでしょうか。
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