ケィオスの時系列解析メモランダム

時系列解析,生体情報学,数学・物理などの解説です.

【ブラウン運動の数理】ランダムウォークからブラウン運動へ

 非整数ブラウン運動の定義式で登場するdB(s)は,時刻sの1次元のブラウン運動の微小な増分です.ブラウン運動の増分って,とどのつまり,正規分布に従う白色ノイズなわけです.重要なのは,その分散が時間の増分Δtに比例する,つまり,

ΔB2Δt

ということです.今回は,ここのところを理解するために,1次元のランダムウォークブラウン運動のつながりを説明します.ここでいう「ブラウン運動」は,数学用語になった「ブラウン運動」のことです.

ランダムウォークのサンプル200本

ランダムウォークモデル

 ランダムウォーカーが動く空間の座標をxで表します.初期条件として時刻t=0でランダムウォーカーは原点x=0にいるものとします.ここでは,時間刻みをΔtとし,各時間ステップでランダムウォーカーの変位を確率変数ΔXで表します.この確率変数ΔXは,ΔxΔxの2つの値のいずれかをとり (Δx>0),それらが実現する確率は,それぞれ,p, qとします.確率の合計は1なので,p+q=1です.

ランダムウォーク

このとき,nステップ後の時刻t=nΔtでの,ランダムウォーカーの位置は,確率変数

 Xn=i=1nΔXi

として与えられます.ここで,ΔXiΔXの独立な複製です.

 Xnの期待値は,

 Xn=i=1nΔXi=i=1nΔXi=nΔXi=n{p(Δx)+qΔx}=n(qp)Δx

Xnの2乗偏差の期待値は,

 (XnXn)2=i=1n(ΔXiΔXi)2=i=1n{ΔXi2ΔXi2}=n{(pΔx2+qΔx2)(pq)2Δx2}=n[(p+q)Δx2{(p+q)24pq}Δx2]=4pqnΔx2

です.

 ステップ数nと時刻tの関係は,t=nΔtなので,

 X(t)=(qp)ΔxΔtt(X(t)X(t))2=4pqΔx2Δtt

となります.X(t)は,ドリフトと呼ばれるベースラインの推移,(X(t)X(t))2は拡散の程度を表しています.

 より一般的な話にしようといましたが,このままだと長くなるし,関係のない話になるので,以下では,p=q=12にしちゃいます.最初からそうすれば良かったですが,ここまで打ったので,ここから切り替えます.

ランダムウォークのサンプル軌道

ランダムウォークの極限をとって連続化 (そいつがブラウン運動だ)

 ここからは,X(0)=0から出発して,p=q=12のとき,つまり,

 (X(t)X(t))2=X(t)2=Δx2Δtt

のときに,Δt0Δx0の極限をとって連続的な軌道にしちゃいます.

 話は単純で Δx2Δtが有限になるには,

 Δx2Δt= 一定

になるように極限をとる必要があるってことです.ということで,Dを定数として,

 Δx2Δt=D

とします.

 上の関係を満たしながら,Δt0Δx0の極限をとったX(t)が,ブラウン運動の軌道B(t)です.B(0)=0から出発というのは一般的ではないので,増分の形にして,

 (B(t2)B(t1))2=D(t2t1)ΔB2=DΔt

となるわけです.ウィーナー過程と呼ばれるブラウン運動では,D=1です.

連続極限で増分の分布は正規分布になる

 上の議論から,2点の増分B(t2)B(t1)は以下を満たします.

B(t2)B(t1)=0(B(t2)B(t1))2=D(t2t1)

 B(t1)から,B(t2)になるまでに,たくさんの増分ΔXが足されます.ΔXは,ΔxΔxしかとりませんが,B(t1)から,B(t2)になるまでにたくさん (無限に)足すので,増分B(t2)B(t1)正規分布になります.有限の分散をもつ確率変数の和が正規分布に近づくということを数学的に証明したのが,中心極限定理です.

 ということで,ブラウン運動の増分B(t2)B(t1)は,平均0,標準偏差D(t2t1)正規分布に従う白色ノイズになります.

反省

 数学とは違って,直感的にわかりやすく書こうと思いましたが,半端な感じになってしまいました.数学の本から入るのでは,難しく感じる方の参考になればと思います.