@chablis777
シャブリ

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(セミの声)
「吾妻鏡」は鎌倉幕府による公式の歴史書である。
源 頼朝が挙兵してからの出来事が詳細に記されている。
熱心に「吾妻鏡」を読んでいる この男は後の征夷大将軍 徳川家康。
彼もまた 坂東に幕府を開くことになる。
家康は 「吾妻鏡」の愛読者であった。
(徳川家康)いよいよ承久の乱の始まりか…。
ドキドキしてきた…。
一回 落ち着こう。
あっ! あ~っ! あっ…。
どうしよう…。
♪~
おう 行くぞ。
(長沼宗政)みんな やる気になっている。勝つかもしれないな。
(三浦義村)分からんぞ。今は盛り上がってるが本気で上皇様と戦うつもりがあるのか。
守りを固めるのが一番だと思う。箱根辺りがいいんじゃないか。
・京まで攻め込むのはさすがに どうかと思うが。
あれが本音だ。
できれば 皆 戦いたくないのよ。
(二階堂行政)どうして婿殿をお止めしなかった。このままでは朝敵だぞ。
(のえ)よいではないですか。
太郎殿や次郎殿に戦で もしものことがあればですよ北条の跡取りは我が息子になるんですから。
(行政)ばかもん!その時は鎌倉が灰になっておるわ!
(北条時房)全軍を率いて東海道を西へ向かい一気に京へ攻め込みましょう。これぞ必勝の策。
(北条泰時)御家人たちは坂東を離れるのを渋っているようです。
軍勢をそろえるには 時がかかります。(扇子を打ちつける音)
(大江広元)先の戦での平家の失敗は速やかに追討軍を送らなかったこと。グズグズしているうちに士気は下がります。
いや しかし…。(北条義時)決めた。
私が総大将となって 今すぐ兵を出す。
執権殿は鎌倉にいてもらわねば困ります!そうはいかん。
こんなことになったのはそもそも私のせい。
(政子)敵は あなたを狙っているのですよ。ここにいなさい。
(足音)
三善殿。
(三善康信)この坂東存亡の危機にどうにかお役に立ちたいと思い老骨にむち打って参りました。
今こそ 必勝の策を献上します。
今ちょうど…。聞かせてもらいましょう。
時を無駄にしてはなりません。
一刻も早く出陣すべきです。
皆さん 三善殿の策でまいりましょう。
私が総大将?
先陣を切って京へ向かえ。
光栄ですが 兵が集まるでしょうか。
北条の示す覚悟にかかっている。
だから お前がやるのだ。
初めは何人で行くのですか。
頼朝様も 山木攻めの時は 24人であった。
(源 頼朝)山木が首 見事 挙げてまいれ!
(一同)オ~!
今回は。
18人。
私を入れて19人か。
お前を入れて18人だ。
頼朝様のように兵が集まるといいのですが。
鎌倉の命運…。
お前に託した。
(鐘の音)
(のえ)あんまりではないですか。
なぜ ひと言もなかったんですか。
すまん。
普通は 妻の耳には入れるものです。
言ったら反対したであろう。
嘘。 忘れていただけでしょ。
悩んだ末に言わなかったみたいな物言いはやめてほしいわ。
すまん。
執権の妻が こんな大事なこと人から聞くって どういうこと。
泰時が鎌倉をたったぞ。
(義村)まあ 兵は2,000も集まればいいとこだろう。
どうする。
俺たちも出陣する。
合流すると見せかけて木曽川の手前で背後から攻め込む。
泰時の首を手土産に そのまま京へ入る。
兵の数は。(平 盛綱)既に1万を超えた。
策が当たったな。 さすが父上だ。
(藤原兼子)義時は何と。
(後鳥羽上皇)東海道 東山道 北陸道合わせて19万の軍勢を上洛させるので西国武士との合戦を御簾の隅からご覧あれ。
(兼子)ふざけたことを。
秀康 今すぐ動かせる兵はどれくらいだ。
(藤原秀康)1万余りかと。
相手は19万ですよ。どうするのです。
どうせ まやかしの数に決まっておる。
6月5日。 泰時の軍勢は秀康率いる官軍と木曽川で衝突。
圧倒的な兵力で官軍を打ち破る。
勢いに乗った泰時軍は更に京へ向かって進撃。
宇治川は 京の最終防衛線である。
官軍は橋板を外しここを死守する構えを見せる。
♪~
(義村)何をグズグズしておる。このような所で足止めを食らっていたらえらいことになるぞ。
そんなことは分かっております!
戦の経験のない者は これだから困る。
(北条朝時)じじい うるせえんだよ。誰が言った。
(時房)無理に川を渡ろうとした者が次々と溺れております。
そんな時はな 流されることを見越してうんと川上から渡ればよいのだ。
訳分かんねえんだよ じじい。
誰が言った~!
(盛綱)やはり あれしかないんじゃないか。
和田合戦の時に家々を壊して戸板で盾を作り敵の攻撃を防ぎました。
今回も 有り合わせのもので いかだを作り兵を乗せて向こう岸まで運ぶ。
どう思う。
いいんじゃないか。
ただ 水中で いかだを押す者は鎧を脱がねばならない。
対岸に着けば 必ず敵の餌食になります。
ほかに手はない。 総大将 ご決断を。
今すぐ いかだを作れ~!
(時房)かしこまりました。 お任せを!
矢を放て!
うっ!
(矢の音)
ひるむな~!このまま進め~!
(矢の音)
迎え撃て~!
♪~
太郎…。
♪~
(読経)
うあっ!
ううっ…。
(突き刺す音)うあっ!
こりゃ勝つな。どうするんだ。
上皇様がご出陣されれば戦の流れは 一気に変わる。
出てきてくださるか。
弟に なんとかさせる。
うわ~っ! ううっ…!
鶴丸!
お前は 総大将なんだ!
兵一人やられたぐらいで たじろぐな!
俺に構わず 行け~!
進め~!
(喊声)
♪~
(後鳥羽上皇)攻めてくるぞ。義時の首を取るだけで よかったのだ!
藤原秀康殿 三浦胤義殿がお戻りでございます。
(兼子)お会いになることはありません。
あれほど勝てると申しておったのにどうしたことじゃ!
兵の数を読み違えました。
(三浦胤義)ここは 上皇様御自ら陣頭に立っていただきたい。さすれば士気も上がり 必ず敵を…。
ばかを申せ!
分かった 私が行く。
上皇様自ら戦に出るなど聞いたことがありません。
私が行くしか勝ち目はない。
あなた様が戦に出てもしものことがあったら いかがされる!
私は 武芸にも通じておるわ!
よう申されました!
(兼子)後白河院のご遺言を思い出されませ!
あのお方が必死に守り抜いたものがこの世からなくなっても よろしいのか!
(胤義)いかがなさいました。
(秀康)上皇様!
ここを…出るわけにはいかぬ。
(足音)
姉上。
宇治川を越えた我が軍はついに京に入りました。
太郎が やってくれました。
あの子は そういう子です。
おめでとうございます。
しかし…私は これまでの歴史で初めて朝廷を裁くことになります。
(足音)
よう トキューサ 久しぶり。
上皇様。 このような形でまた お会いするとは無念で…。
こたびの大勝利 見事であった。
私を担ぎ上げて世を乱そうとした奸賊どもをよう滅ぼした。
義時にはそこのところ 話しておいてくれ。
お前が頼りぞ。
今日は ゆっくり休んで戦の疲れを癒やしてくれトキューサ。
後白河法皇様も 同じことを仰せだったな。
(広元)お許しになりますか。
(鐘の音)
(泰時)我が父 北条義時より上皇様に対し 沙汰が届きました。
(泰時)隠岐へ お移りいただく。待て。
(泰時)逆輿をもってお送りするものとする。
待て待て 私は上皇なるぞ。
期日は 7月13日。
以上にござる。
嫌じゃ!
このようなことをしてどうなるか思い知るがよい!
幾たび生まれ変わっても呪ってやるわ 義時!
逆輿とは 罪人が運ばれる時のしきたりである。
ん?文覚 とっくに死んだのではなかったか。
(文覚)隠岐は いい所だぞ。
お前も隠岐へ流された!
隠岐は いい所だ。おっ あ~っ! ああ~っ!
何もないぞ。 一緒に暮らそう。
ハハハハハハハ!あ~っ! 嫌じゃ~!
ああっ 待て! 文覚! 文覚!
後鳥羽上皇は死ぬまで隠岐を離れることはない。
頭まで かんだではないか! おい!
先の戦の采配 見事だったそうだな。
(泰時)ありがとうございます。すばらしい総大将ぶりでした。
どうした 浮かない顔だな。
上皇様の件はあれで よかったのですか。
世の在り方が変わったことを西のやつらに知らしめるにはこれしかなかった。
しかし 我らは 帝のご一門を流罪にした大悪人になってしまいました。
大悪人になったのは私だ。
お前たちではない。
案ずるな。
そういえば向こうで懐かしい人に会いましたよ。
(りく)宰相中将って言っても田舎の人には分かんないわよね。
分かりますよ。
おかげで 私までいい思いをさせていただいております。
(泰時)何よりです。
あんた誰だっけ。
(鐘の音)えっ…。
小四郎兄上の息子の太郎泰時です。
孫です。
やめてちょうだい。
しい様は? 達者にしているの?
伊豆からは戻ることはなく9年ほど前に亡くなりました。
あら 亡くなったの。
最後は きっと 幸せだったと思います。
面倒を見てくれる女の人がいたので。若くて かわいくて 気立てがいい方で祖父のことをとても気遣っておられました。
あの人は そういうところがあるのよ。
あれで なぜか女の人が放っておけないの。
いい話を聞きました。そろそろ帰りましょうか。
(きく)はい 母上。
♪~
また どこかで お会いしましょう。
あの人は変わらないですね。
(盃が落ちる音)
父上 どうしましたか。
父上。(時房)兄上!
(泰時)父上!(時房)兄上!
(泰時)父上! 父上!
(子供たちの声)
(政子)ほら まだ たくさんありますよ。
(実衣)はい どうぞ。ほら~。
はい どうぞ。
あなたに お願いがあるの。
あの子たちに武芸を教えてあげてほしいのよ。
(トウ)この子たちは。
(実衣)戦で親を亡くした子たち。
どうせ戦のない世の中になったらあなたも暇になるでしょ。
(足音)
兄上が 大変です。
ちょっと めまいがしただけだ。
人騒がせなトキューサ。
あら 随分と顔色もよくなりましたね。
(政子)大したことなくてよかったですね。はい。
さあ 飲んでください。
薬だと思って。
もう要らぬ。何なのですか。
京の知り合いから送ってきたんです。
変なにおい。
薬草を煎じたものです。
毎日飲むと びっくりするくらい元気になるんですよ。
これを飲みだしてから具合が悪くなった気がする。
ご冗談を。
昔から こんな感じですか。
全く言うこと聞いてくれないんですよ。(ため息)
(実衣)こんな感じだったわね。
一息で お願いします。
(ため息)
ああ~っ。
(泰時)もう大丈夫なのですか。
年を取るというのはこういうことなのか。
早速でございますが京で怪しい動きが起こっています。廃位された先の帝でございますがここに来て 復権させようという動きが出ているようです。
(ため息)あのお方は隠岐の上皇様の御孫君。
これを許せば上皇様まで復権なさいます。
懲りぬやつらよ。
災いの芽は摘むのみ。
フッ… ハハハハハ。
大江殿は 老いても強気だな。そうしよう。
かしこまりました。お待ちください。
幼い先帝の命を奪うおつもりですか。
我らは これまでも そうやってきた。
父上は考えが古すぎます!何を言うか!
そのような世ではないことがどうして分からないのですか。
また始まった…。そのようなこと 断じて許されません。
都のことは 私が決めます。父上は口出し無用。待て。
新しい世をつくるのは 私です。
(足音)
西国の所領を東の御家人が手に入れ土地の者を苦しめている。
不満を持っている者たちが先の帝を担げばまた戦になりかねないぞ。
西の者たちの不満は私の耳にも入っています。
それに関してはきちんと決まりを作ろうと考えている。
やっていいことと いけないことをはっきりと示す。
いい とてもいい!
今 新しい世が来る音がした。
父上が死に物狂いでやってきたことを無駄にしたくないだけです。
はあ~…。
太郎殿は 六波羅探題となり自信をつけられたようですな。
きれい事だけでは政は立ち行かぬというのに。
腹の立つ息子だ。
先の帝の件いかがいたしますか。
死んでもらうしかなかろう。
(雷雨の音)
さんざん待たせたあげくに これは何だ。
(運慶)今のお前に うり二つよ。
おっ 斬るか。斬りたきゃ斬ればいい。
どのみち お前は もう引き返すことはできん。
ハハハハハハハハハハハ!ハハハハ!
殺すまでもない。 連れていけ。
はっ。
ハハハハハハ… ハハハハハハ!ハハハハハハハハハ!
♪~
うっ… うっ…。
いかがかな。
(医者)アサ。
どういうことだ。
アサの毒。
毒を盛られたというのか。
今度 毒消しを届けましょう。
♪~
(のえ)元気を出してくださいな。
毒にも効くのか。
毒?
医者が言うには 誰かが毒を盛ったらしい。
さあ…。
毒には効くかしら。
誰が盛ったか気にならんのか。
誰が盛ったのですか。お前だ。
あら 面白い。
んっ… お前しか思い当たらぬ。
あら ばれちゃった。
そんなに政村に家督を継がせたいか。
当たり前でしょう。
跡継ぎは太郎と決めておる。
そう思っているのは あなただけ。
北条義時の嫡男は政村です。ばかを申せ。
八重は 頼朝様と戦った伊東の娘。
比奈は 北条が滅ぼした比企の出。
そんな女子たちが産んだ子がどうして跡を継げるのですか。
フッ… ハハハハハ…。
もっと早くお前の本性を見抜くべきだった。
あなたには無理。
私のことなど 少しも…少しも見ていなかったから。
だから こんなことになったのよ!
執権が妻に毒を盛られたとなれば威信に傷がつく。
離縁はせぬ。
だが 二度と私の前に現れるな。
出ていけ。
もちろん そうさせていただきます。
息子が跡を継げないならここにいる甲斐もございませんし。
死に際は 大好きなお姉様にみとってもらいなさい。
行け!
あっ そうだ そうだ。
私に頼まれ毒を手に入れてくださったのはあなたの無二の友 三浦平六殿ね。
夫に死んでほしいと相談を持ちかけたらすぐに用意してくださいました。
頼りになるお方だわ。
運慶殿が作った自分の像を見てあんまり ひどいんで倒れちゃったんですって。
そうなんだ。後で見舞いに行ってくるわ。
暇?
近頃は 政には首を突っ込まないの。
言い方にトゲがあるのよね。
今に始まったことじゃございません。
この先は これまで亡くなった方たちの菩提を弔うわ。
結局 姉上は一度も偉くなりたいと思わなかったのに姉上は偉くなって狙ってた人たちは みんな いなくなった。
皮肉な話。
あなたは本気で尼御台になろうとしていたの。
♪~
全成殿の血筋を絶やしたくなかった。
でも 今思えば そうねひと言で表すならばどうかしてました。
あなたはいいのよそんなこと考えなくて。
人には それぞれ身の程というものがあるのだから。
悪気がないのは分かるけど今のは言わなくていいこと。
ごめんなさい。誰だってね一生に一度は 人の上に立ってみたいと思いたくなるものなの。
姉上には分からないようですけど。
謝ったじゃない。
ほら これ あなたが好きなやつ。
まあ 一杯やってくれ。
のえが 体に効く薬を用意してくれてな。
それを酒で割って飲むと うまい。
俺はいい。
元気は有り余ってる。普通の酒にするよ。
一口だけでも飲んでみろ。いや いい。
長沼宗政が白状したぞ。
また裏切るつもりだったらしいな。
そうか 耳に入ったか。
お前という男は。
もし裏切っていたらこっちは負けていた。
つまり 勝ったのは俺のおかげ。
そういうふうに考えてみたらどうだろう。
飲まないのか。
においが気に入らん。
濃くし過ぎたかな。
うまいぞ。
それとも…ほかに飲めない訳でもあるのか。
では 頂くとしよう。
俺が死んで 執権になろうと思ったか。
まあ そんなところだ。
お前には務まらぬ。
お前にできたことが俺にできないわけがない。
俺は全てにおいて お前に勝っている。子供の頃からだ。
頭は切れる。 見栄えはいい。剣の腕前も俺の方が上だ。
お前は何をやっても不器用で のろまで。
そんなお前が 今じゃ天下の執権。
俺はといえば結局 一介の御家人にすぎん。
世の中 不公平だよな!
いつか お前を超えてやる…。
(ろれつが回らない声で)お前を超え… 超えて…。
いかん!
口の中がしびれてきやがった。
これだけ聞けば満足か!
うっ… ううっ…。
よく打ち明けてくれた。
礼に俺も打ち明ける。
これは ただの酒だ。
毒は入っておらん。
本当だ しゃべれる。
(ため息)
俺の負けだ。
平六。
この先も太郎を助けてやってくれ。
まだ俺を信じるのか。
お前は今 一度 死んだ。
フッ…。
これから先も 北条は三浦が支える。
頼んだ。
いい機会だからもう一つだけ教えてやる。
大昔 俺は お前に教えてやった。
女子は 皆 きのこが好きだと。
しっかりと覚えている。
あれは嘘だ。
出任せよ。
早く言ってほしかった…。
フッ。
この先は またしばらく私と叔父上は京へ戻り西国に目を光らせたいと思う。
父上のこと よろしく頼む。(初)かしこまりました。
兄上には しばらくは無理はさせたくない。
鎌倉のことは次郎に頼もうと思う。
お任せください。
(初)あなたも行くの?
もちろん。
あんた よく生きてたよね。
絶対死んだと思ったよ。
私は いつも誰かに守られているのです。
いいか 皆。もはや朝廷を頼る世ではない。
これからは 武士を中心とした政の形を長く続くものにする。
その中心にいるのが 我ら北条なんだ。
(ろれつが回らない声で)よろしく頼むぞ。
叔父上 様子が…。
さっきから 何飲んでるんですか。
兄上の部屋からそっと もらってきた。
酒じゃないのかな これ。
あっ 臭っ!うがいしてきます。
(トウ)ひい ふう みい。 刺す! よ!
そう なかなかいいわよ。 もう一度。ひい ふう みい 喉元刺す! よそう いいわよ。
何でしょう?
動きに殺気がありすぎる。(子供たち)ひい ふう みい よ!
だいぶ 抑えたつもりなのですが。
♪~
見てくれ。
書いてみた。
御家人たちの中には学のない者たちも多い。
彼らにも読めるような易しい言葉で武士が守るべき定めを書き記そうと思う。
フフ 真面目。
何が悪い。悪いとは言ってない。
偉いと言ってます。
初めて褒められた。
やがて泰時は江戸時代まで影響を及ぼす法を制定する。
御成敗式目。
これにより 泰時が政治を行う間は鎌倉で御家人の粛清は一切起こらない。
うん。
(鐘の音)
仏様 見せてもらったわ。
運慶に言わせれば あれは私だそうです。
燃やしてしまうんですって。
人には見せられない。
たまに考えるの。
この先の人は私たちのことを どう思うのか。
あなたは上皇様を島流しにした大悪人。
私は身内を追いやって尼将軍に上り詰めた希代の悪女。
それは言い過ぎでしょう。
でも それでいいの。
私たちは 頼朝様から鎌倉を受け継ぎ次へ繋いだ。
これからは 争いのない世がやって来る。
だから どう思われようが気にしない。
姉上は 大したお人だ。
そう思わないとやってられないから。フッ…。
それにしても 血が流れ過ぎました。
頼朝様が亡くなってから何人が死んでいったか。
梶原殿 全成殿 比企殿仁田殿 頼家様 畠山重忠稲毛殿 平賀殿 和田殿仲章殿 実朝様 公暁殿 時元殿。
これだけで 13。
ハッ… そりゃ 顔も悪くなる。
はあ~。
待って。何か。
頼家が どうして入っているの。
はい?
頼家が どうして。
だって おかしいじゃない。
あの子は病で死んだと あなたは。
駄目よ 嘘つきは自分のついた嘘は覚えてないと。
私だって うすうすは分かっていた。
でも 怖くて聞けなかった。
もう よしましょう。あの子は 本当は どうやって死んだの。
昔の話です。母親として知っておきたいの。
ふう~。
頼家様は 上皇様と手を結び鎌倉を攻め滅ぼすおつもりだった。
私が善児に命じて討ち取りました。
頼家様は 自ら太刀を取って最後まで生き延びようとされた。
見事なご最期だったと聞いております。
あの子は そういう子です。
ありがとう 教えてくれて。
姉上… 今日は すこぶる 体がきつい。
あそこに薬があります。取っていただけませんか。
医者に言われました。
今度 体が動かなくなったらその薬を飲むようにと。
私には まだやらねばならぬことがある。
隠岐の上皇様の血を引く帝が返り咲こうとしている。
なんとかしなくては。
あっ…。まだ手を汚すつもりですか。
この世の怒りと呪いを全て抱えて私は地獄へ持っていく。
太郎のためです。
私の名が汚れる分だけ北条泰時の名が輝く。
あっ… はあ…。
はあ…。
そんなことしなくても 太郎は きちんと新しい鎌倉をつくってくれるわ。
うっ… 薬を。
私たちは 長く生き過ぎたのかもしれない。
♪~
姉上…。
さみしい思いはさせません。
私も そう遠くないうちにそちらへ行きます。
私は まだ死ねん…。
(倒れる音)
まだ…。
うっ…。
うっ… うう… うっ…。
うっ… うっ…。
かっ…。
ぐっ…。
太郎は賢い子。
頼朝様や あなたができなかったことをあの子が成し遂げてくれます。
うっ… ううっ…。
北条泰時を信じましょう。
賢い八重さんの息子。
うっ… 確かに あれを見ていると八重を思い出すことが…。
でもね もっと似ている人がいます。
うう…。
あなたよ。
♪~
姉上…。
あれを… 太郎に…。
♪~
必ず渡します。
うっ… うっ… うう…。
姉上。
♪~
ご苦労さまでした 小四郎。
♪~
(すすり泣き)
(政子のすすり泣き)


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