脳をだませば触覚も伝わる
パソコンの画面に、水が下から噴き出している様子が映し出されている(下の写真)。数cm角の装置を持って、その噴水の上から水を押し付けるように操作すると、下から水圧を受けたかのような“力”を感じた。次に画面がブラックホールに切り替わると、今度は手を下に吸い寄せる“力”を受けた。
この“力”は、実際には存在していない。手に持った装置から特種な振動を伝えることで脳がだまされ、あたかも押されたり引っ張られたりしているかのように錯覚したのだ。ベンチャー企業のミライセンス(茨城県つくば市)が開発した、「3D触力覚技術」だ。
創業者の一人である中村則雄取締役は産業技術総合研究所の研究者。ハプティクスを研究する過程で、リアルな力をそのまま伝えるのではなく、脳をだます方法があると考えた。
「そんなことはできないはずだ」。2000年代中頃に学会で発表すると、総スカンをくらった。視覚の錯覚については広く知られていたが、触覚にも錯覚が存在することは分かっていなかったからだ。中村氏は微細な振動を研究し、何かを押したような感覚や表面のざらざら感、押されるといった力などを錯覚させることに成功。ミライセンスは24件の特許を取得している。
スマホの画面に様々な感触を再現するなど、3D触力覚技術の応用範囲は広い。同社の香田夏雄社長は「既に数社とそれぞれの分野で商談を進めている。数年後には実用化したい」と意気込む。
ベンチャーだけではなく、電子部品大手もハプティクスに本腰を入れ始めた。村田製作所や日本電産が「次の狙いはハプティクス」と公言しており、次世代スマホ向けの製品開発を急ぐ。
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