遠く離れたモノの「手触り」を手元で実際に感じることができる未来は遠くない。視覚、聴覚に次ぐ「第3の情報伝達」であるハプティクス(触覚技術)。ロボットやスマートフォン、VR(仮想現実)など用途は広く、潜在市場は数十兆円とも言われる。
慶応義塾大学新川崎タウンキャンパス(川崎市)の一室に、ポテトチップスをアーム型ロボットでつかむという、一風変わった実験装置がある。手元にあるのはハサミの取っ手のような器具。離れた位置にあるアームが、それと連動して動く。取っ手を動かすと、アームもそれに応じて開いたり閉じたりする。ここまでは既に実現されているロボット技術。驚くのはこの後だ。
●視覚と体感を構成する3つの要素
遠く離れたアームで、ポテトチップスをつかんでみる。アームに触れた瞬間、取っ手を持った手に、その感触が伝わった。強く握ると、ポテトチップスがパリッと割れた。その割れた際の感触も、まるで自分の手でポテトチップスを割ってしまったかのような感触を得ることができたのだ。
離れた物体の「感触」を手元に伝える──。これが、「ハプティクス(触覚技術)」と呼ばれる技術だ。硬い、軟らかいといった「圧覚」、触った時のつるつる、ざらざらを感じる「触覚」、押されたり引っ張られたりする「力覚」という3要素を組み合わせれば、自分が触っているかのような感触を遠隔に伝えることができるのだ。
19世紀にグラハム・ベルが発明した電話は「聴覚」を伝達することに成功した。20世紀に英BBCがテレビ放送を開始し、「視覚」の伝達が一般化された。そして21世紀、ハプティクスによって「触覚」の伝達が実現しようとしている。
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