「リングフィット アドベンチャー」レビュー
リングフィット アドベンチャー
ここまで“筋肉原理主義”とは。任天堂の粋を集めたレベルデザインで楽しくストイックに筋肉が追い込まれる!
- ジャンル:
- フィットネスアドベンチャー
- 発売元:
- 任天堂
- 開発元:
- 任天堂
- プラットフォーム:
- Nintendo Switch
- 価格:
- 7,980円(税込)
- 発売日:
- 2019年10月18日
2019年10月17日 00:00
任天堂が打ち出す新たなフィットネスゲーム。それがNintendo Switch「リングフィット アドベンチャー」だ。Joy-Conに新たなアタッチメント「リングコン」と「レッグバンド」を加え、ここにゲームの魔法を振りかけることで、ゲームにもフィットネスにも新たな道筋を示す野心作となっている。
本作に触れてとにかく感心したのは、「リングフィット アドベンチャー」の魂はどこまでも“筋肉原理主義”ということ。パッケージを開けると「筋肉は一生の相棒」という言葉が極太のゴシック体によって刻まれており、「さあ、これから筋肉つけますよ!」という気合がすでにここから感じられる。
ゲームの準備はごく簡単で、「リングコン」はJoy-Con(R)を装着するだけ、「レッグバンド」はJoy-Con(L)をネット部分に入れて左脚の太ももに巻くだけ。ゲームと連携させればフィットネスをすぐにスタートできる。
最初は自身の年齢や運動の頻度を打ち込んだり、リングコンを押し込んだり、その場で速めの駆け足をしてみたりして、それぞれのプレーヤーにあった運動負荷を設定する。2回目からは、この部分は飛ばしてすぐにゲームを始められるという作りだ。
そして何より注目すべきなのは、このリングコンのできのよさ。見た目はただの輪っかなのだが、これが非常によくしなる。押し込んだり引っ張ったりすること自体は簡単なのだが、円が潰れるに従って反発が急激に高まっていくため、一般的な人なら必ずどこかで限界が来るようになっている。
リングコン側では円の変形具合もしっかり読み取っているので(画面にはリアルタイムで変形するリングコンが表示される)、どんな力の具合でも対応できるところが面白い。実のところ最初の設定では「全力でリングコンを押し込んで(引っ張って)!」と言われる。
察しのいい人はすでにお気づきだろうが、その後のフィットネスはこの「限界点」が常に操作の基本となる。お遊びのフィットネスではなく、自分の「限界点」と向き合い、筋肉を追い込んでいくフィットネス。この設計思想こそが、「リングフィット アドベンチャー」最大のポイントだ。
いつの間にか追い込まれている! 「アドベンチャー」モードの筋肉魔法
ゲームのメインとなるのは「アドベンチャー」モードだ。「アドベンチャー」モードは、悪い心を宿したドラゴンを追ってステージを攻略していく、とてもわかりやすい展開のゲームモードとなっている。
変わっているのはプレイにリングコンとレッグバンド、つまりプレーヤー自身の体を使って操作していくという点。たとえばキャラクターを前に進ませるためには、実際にその場でジョギングしていくこととなる。
リングコンを押し込むと空気を発射、引っ張ると空気を吸い込める。地面に向かって空気砲を撃つとジャンプになったり、空気砲を連続で当てることで動くギミックがあったり、遊び要素は満載。またダッシュが必要だったり、階段を駆け上がるために“モモ上げ”が必要だったり、楽しい仕掛けはすべて筋肉に繋がっている。任天堂の粋を集めた丁寧なレベルデザインで、筋肉がいつの間にか酷使されているイメージだ。
そして「アドベンチャー」モードのメインディッシュとなるのはモンスターとの戦闘。戦闘そのものはやはりオーソドックスなターン制バトルで、プレーヤーと敵が交互に攻撃を繰り出して、敵の体力をゼロにしたら勝利となる。
もちろん、戦闘に使うのは筋肉だ。様々な運動が攻撃技「フィットスキル」となる。プレーヤーの攻撃は自身がセットしてフィットスキルから選択可能で、たとえば「バンザイプッシュ」や「スクワット」といったものがある。
「バンザイプッシュ」はリングコンを頭上に掲げ、その状態でリングコンを押し込むというもので、運動負荷の設定によって1回の攻撃に必要な回数が変わる。感覚としては“「限界点」少し手前くらいまで押し込んで数秒キープ”が1回の攻撃となる。押し込んで……戻して、押し込んで……戻してを20回繰り返していくのだが、これがまあキツい。
画面には「ここの筋肉を使ってますよ」と表示される(「バンザイプッシュ」の場合は三角筋)のだが、確かにどんどん疲労が溜まっていく。でもやればやるほど敵へのダメージは上がるし、プレイしている最中は「いいよいいよ!」、「すごい!」、「いい感じ!」、「キレッキレ!」と超ポジティブな掛け声がかけられまくるので、息を切らしながらなんとかこなせる。もう、「Wii Fit」や「Wii Fit U」でゆっくり楽しくやっていたころとはまったく違う世界観である。
そして敵の攻撃は「腹筋ガード」で防ぐ。リングコンをお腹に押し当て、グッと力を入れてキープすると腹筋型シールドがキャラクターの前に現われて敵の攻撃を軽減してくれる。フィットネスで攻撃し、腹筋でガードする。これらを繰り返して敵を倒すと、戦闘後には経験値が手に入る。
レベルが上がると基礎攻撃力と防御力が上がるほか、新たなフィットスキルが手に入ることもある。息を切らしながらレベルを上げ、ステージを攻略し、さらなる筋肉の強化とクリアを目指していくわけだ。
一方で本作ならではの要素なのが、ゲームを“一旦止める”ことを勧めてくれる点。「アドベンチャー」モードでは、ステージを進んだり、フィットネスで戦闘していると体を動かしている時間(活動時間)が画面上でカウントされていく。
筆者の肌感覚としては、15分も続ければかなり汗だく、30分を超えるともう限界といったところだが、そのあたりもゲーム側は察していてところどころで「水を飲もう」と言ってくれたり、「休憩しませんか?」、「オーバーワークに注意して」などと促してくれる。
面白いゲームならとことんやり続ける! というのがゲーマーの性ではあるが、ゲーム側がこう言ってくれることでとても休憩しやすい。というより体力がもたないのが本音ではあるが、このことで本作の目的がフィットネスの継続にあることがはっきりとわかる。
ちなみに、アドベンチャーモードを毎日30分プレイしたとして、クリアまでに約3~4カ月ほどかかる見込みだという。今体感している負荷のままそこまで継続できれば、プレーヤーの筋肉はまったく変わることが容易に想像できる。「リングフィット アドベンチャー」の魔法、恐るべしだ。
「リングフィット アドベンチャー」であなたも筋肉脳(脳筋ではない)に!
さらなるゲームモードとしては「お手軽」モード、「ながらモード」などがある。
「お手軽」モードは「アドベンチャー」モードでプレイできるフィットネスやミニゲームを個別にプレイできるモードで、スコアが記録されていくもの。友人などとの対戦向きでもあるし、プレイをある程度継続して改めて成果を試してみるなど、色々な使い方ができるだろう。また「腰痛改善セット」、「すっきり美脚セット」といった目的別のセットメニューもあるので、気になる箇所があれば試してみるのもいい。
「ながらモード」は、本体がスリープ状態のとき、リングコンに装着したJoy-Con(R)のスティックを押し込むと起動するモード。このときにリングコンを押し引きするとピコピコと音がして、その回数は最大500回までカウントされる。
この数は再度「リングフィット アドベンチャー」を起動したとき、「アドベンチャー」モードで回数に応じたボーナスが加えられる。この微妙な負荷が、意外に筋肉に効いてきたりするわけだ。
「リングフィット アドベンチャー」は、「筋肉を追い込むフィットネス」を誰でも楽しく継続できるものとして提供している点でとても興味深いタイトルだ。実際ゼーハー言いまくりでキツいはキツいのだが、それを吹き飛ばすほどのポジティブさに溢れている。ステージクリア時には必ず「ビークートーリーー!」と大げさに叫ぶ(プレーヤーはビクトリーポーズをする)など、ゲーム全体から「筋肉を動かすことが楽しくて仕方がない」といったメッセージを受け取ることができる。
「あ、これなら運動を続けられるかも」とインドア派の筆者も思ったし、同じように思う方は大勢いるのではないだろうか。キツくても楽しい、キツいからこそ楽しいという「リングフィット アドベンチャー」がどこまで世間に浸透していくかに注目である。
©2019 Nintendo
※画面は開発中のものです。
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