「ASTRAL CHAIN」レビュー
ASTRAL CHAIN
生体兵器“レギオン”と共に織りなす新感覚爽快デュアルアクション!超豪華制作陣が手掛ける新作アクションゲームの魅力とは?
- ジャンル:
- アクションRPG
- 発売元:
- 任天堂
- 開発元:
- プラチナゲームズ
- プラットフォーム:
- Nintendo Switch
- 価格:
- 7,980円(税別)
- 発売日:
- 2019年8月30日
2019年8月27日 00:00
アクションゲームの進化は止まらない。プラチナゲームズが手掛ける最新作「ASTRAL CHAIN」のプレイをしていると、思わずそんな言葉が出てしまう。本作品は2017年に日本ゲーム大賞にて優秀賞を獲得したゲーム「NieR:Automata」のゲームデザイナー田浦貴久氏がディレクターを担当しており、スーパーバイザーには「デビルメイクライ」や「ベヨネッタ」等の大ヒットアクションゲームを手掛けている神谷英樹氏、キャラクターデザインは「ウイングマン」や「ZETMAN」等の有名ヒーロー漫画の作者である漫画家の桂正和氏が担当するなど、最早これだけでお腹いっぱいになってしまうほど豪華な制作陣によって生み出された新感覚アクションRPGだ。
筆者は上記の作品全てに触れてきた人間なので発表を聞いた時は非常に驚いたのを覚えている。ヒーロー漫画の金字塔とアクションゲームの金字塔達が組み合わさった時にどのような作品が生まれるのか予想もつかなかったからだ。さて、そんな「ASTRAL CHAIN」だが、今回は序盤のストーリー展開を少しお見せしつつ、早速ゲーム本編のレビューをしていきたいと思う。
舞台は近未来!人類は「異世界」からの侵略者と秘密裡に戦いを繰り広げる
今回物語の舞台となるのは2078年の近未来。地球に隕石が落下した影響によって異世界へと繋がる小型のワームホール「ゲート」が世界各地に発生し、そこから流れ出る瘴気によって9割が汚染されてしまった地球が舞台だ。生き残った人々は巨大人工島「アーク」に逃れ一時の平穏を取り戻していたが、人々を「ゲート」へと引きずり込む“普通の人間では姿を視認する事ができない”異形の侵略者「キメラ」の存在が発覚し、「アーク」にもその魔の手が伸び始めていることが判明。それに対抗するべく人類は警察直下に特殊部隊「ネウロン」を結成し、侵略者である「キメラ」から造り出された生体兵器「レギオン」を用いてこの脅威に立ち向かっていく……。と言うのが大まかな世界設定なのだが、控えめに言って最高である。
筆者はヒーロー物が大好きなのでこのような設定を見ているだけで興奮してしまうタイプなのだが、人知れず戦い続ける組織の在り方を非常に上手く見せていると感じた。加えてヒーロー物の美学である“秘密裡”にと言う部分と“敵の力を使った技術”と言う部分もしっかり押さえている為、キャラクターデザインを担当された「桂正和」氏のヒーロー漫画を愛読していた人はこの世界観だけでも堪らないのではないだろうか。
そんな世界で主人公となるのはプレーヤーである自分自身。警察官として働いていた主人公は人命救助の為に駆け付けた事件現場で「キメラ」に襲われ、その過程で「レギオン」を操る力を一緒にいた双子の妹「アキラ」(主人公の性別に女性を選んだ場合は双子の弟)と共に獲得する事となる。初めて「レギオン」を繰り出し「キメラ」を視認し、対立するシーンは非常に熱い。
「レギオン」の力を得た主人公は危ういながらも「キメラ」の撃退に成功。その後は秘密にされていた「キメラ」の存在を知ってしまった事と、選ばれた人間にしか使用できない「レギオン」の力に適合したという事が重なり、主人公と「アキラ」は「ネウロン」へと強制的に入隊させられる事となる。「ネウロン」には2人の養父である「マックス」を始めとした非常に個性豊かな仲間たちが所属している。各キャラクターの個性もこのゲームでは見逃せない点となるだろう。
「ネウロン」では「レギオン」でしか対処できない「キメラ」の鎮圧や出現元となっている「ゲート」の破壊、それに伴う事件を各地に赴いて行なっている。主人公達は「レギオン」の力を駆使して様々な強敵や難事件に挑んでいく事となる……のだが、「ASTRAL CHAIN」では序盤からかなりハードで驚くような展開が待ち受けている。それは「キメラ」という不安定で不確定な力がもたらした悲劇。序盤に待ち受ける怒涛の展開は是非皆様に実際にプレイして頂きたいのでこれ以上は触れないが、最初から非常に引き込まれる展開が待ち受けている事をお約束したい。
事件は現場で起こっている!警察官として活動する主人公の物語に密着!
続いて本ゲームのストーリーの進み方について取り上げたいと思う。今作は1つのチャプターを「FILE」と呼称しており、「FILE」内で発生したメインの事件を解決する事でその「FILE」をクリアした事になり、次の「FILE」へと進める形式になっている。1つの「FILE」に要する時間はそれぞれの内容によって変わるが、普通のゲームプレーヤーである筆者がサブイベント等も探しながらプレイして大体1~2時間ほど。その間に戦闘やイベントなどが多数発生し、それを解決していくことで物語が進行していく。
「FILE」の中で主人公であるプレーヤーは警察官としての職務を全うしながら物語を進める事となる。事件が発生した際は事件現場に赴き当然捜査を行なうのだが、「キメラ」は一般人や他の警察官の目には映らない為、確固たる証拠を掴むことは難しい。その為現場での主人公たちの捜査が非常に重要になってくるのだが、この捜査フェイズが「ASTRAL CHAIN」の魅力の1つだ。
当然普通の警察官のように聞き込みなども行なうのだが、このゲームならではの要素が随所に組み込まれている。コンタクトレンズ型の情報機器「アイリス」を用いたホログラフィックで再現された映像による現場検証や、「レギオン」を用いた秘密の会話の聴取や怪しい人物の追跡、そして「キメラ」の影響で発生する緊急事態等、警察官としての描写の中にしっかりとこのゲームの設定を活かした“非日常感”が綺麗に織り込まれているのだ。特に「レギオン」を使用した捜査の数々は見事なものが多く、「こんな事もできるのか!」と素直に関心してしまう事が多々発生するほどである。
そして“非日常”感だけではなく日常的な風景も楽しめてしまうのがこのゲームの憎い所だ。事件現場付近で発生する様々なサブイベントは事件の情報収集の一環として行なわれる事が多いのだが、その際に発生する事案に対しての対応や立ち振る舞いはまさに私たちの想像する「警察官」なのである。筆者はこの“日常”の中に潜む“非日常”感がとても好きなのだが、今作はその“日常”感もしっかりと事件の合間に描いていると感じた。
そして筆者がこの捜査パートで一番驚いたことがある。それはしっかりと現場分析を行なうフェイズがある事だ。集めた証拠を元に事件のあらましや「キメラ」の特徴、事件に関わった人物の目的などを仲間と共に分析していくのだが、これがかなりしっかりしている。勿論ストーリーを追っていればそんなに間違える事無くクリアはできるのだが、この推理と考察を行なうフェイズを1度挟むことでこれから自分が追う相手が何なのか、どんな「キメラ」と対峙する事になるのかなどを予測確認する事ができるのだ。これによってストーリーへの理解度が増し、加えて自分が本当に捜査している感覚を強く味わうこともできる。アクション面を大々的に推しているゲームでここまで本格的に捜査パートに力を入れているのは珍しく、大いに評価できる部分だろう。
そして捜査後は原因となっている「キメラ」を討伐し事件を解決する。この流れを1つの「FILE」中で行ない、物語を進めるのが本ゲームの大筋だ。この「FILE」毎の物語の流れが非常にキレイなので、プレイしながらストーリー上で起こっている事を非常に理解しやすかった。それはストーリーの随所でしっかりと自分で考えて行動しなければならない部分が意図的に作られていて、物語に没入しやすくできているからだろう。本ゲームはアクション面だけでなく、ストーリーや世界観、キャラクターを丁寧に描いている事から、RPGとしての完成度も高いと言える。
「レギオン」を駆使して華麗に戦う!「デュアルアクション」は爽快感が半端ない!
さて、続いて本作で最も注目されている「デュアルアクション」について取り上げていこう。これは主人公と「レギオン」が連携して、様々なアクションを繰り出せるシステムだ。「レギオン」は自動的に敵を攻撃してくれるのだが、戦闘中であればプレーヤーと同じ敵を集中的に狙ったり逆に分散して戦う事も可能であり、プレーヤーはさながら猛獣使いのように「レギオン」を用いて戦う事ができる。ただし「レギオン」を行使できる時間にはリミッターゲージによる制限がある為、所々で隙を見つけて「レギオン」をOFFにする必要がある。どのタイミングで「レギオン」を使用するのか、どのタイミングで「レギオン」をOFFにしてゲージを回復するのかなどの状況を判断しながら戦闘の駆け引きを楽しめる。
レギオンの操作は主に「L」、「ZL」ボタンと「Rスティック」を用いて行なうのだが、これが今までに無い操作のため筆者も最初はかなり戸惑った。ただ数戦戦闘を繰り返しただけでこの操作には慣れる事ができた。その理由は主人公の攻撃は基本「ZR」ボタンで行なわれるため、攻撃アクションは主人公とレギオンを合わせても「L」、「ZL」、「ZR」でほぼ完結しているからだ。コントローラーを持つ場合に両手の人差し指と中指の操作が主な攻撃アクションを担当し、それ以外を他の指が担当するといったように簡単に役割を分けられるからこそ、この操作にすぐ慣れる事ができたのではないかと思う。
「レギオン」に関してはこれだけが基本動作となる。だが重要なのはここからで、この基本動作を応用して「レギオン」との様々な連携アクションが行なえる。その際に重要になるのは「レギオン」と主人公を繋いでいる鎖である「アストラルチェイン」だ。この「アストラルチェイン」を活用する事で様々なアクションを引き出す事ができる。
例えば、「レギオン」と主人公を動かして「アストラルチェイン」を敵に巻き付けるように動かせば、敵を一定時間拘束する「チェインバインド」が発動。敵は身動きが取れなくなるため大ダメージを与えるチャンスが生まれるのだ。この「チェインバインド」は「レギオン」だけを動かして巻き付ける事も可能なのだが、「レギオン」の操作にばかり集中すると戦闘中は無防備になってしまうので、主人公も動かしながら行なう必要が出てくる。攻撃をかわしながら「レギオン」と主人公で敵を囲むように同時に動かして「チェインバインド」を発動できた時の爽快感は格別だ。
「レギオン」を活用した連携技は多数存在する。突進してくる敵に対して主人公とレギオンの「チェイン」で受け止めるように配置する事で攻撃を跳ね返す「チェイントラップ」、主人公のアクションに合わせてレギオンの連携攻撃を行なう「シンクアタック」など、行なえるアクションは非常に多い。どれも決まれば大ダメージや敵の隙を作れる技のため、本ゲームにおいて非常に重要な技術であると言えるだろう。「チェイントラップ」で相手を怯ませて攻撃後に「チェインバインド」で相手を拘束、そこから連続で「シンクアタック」を繰り出す等の組み合わせが可能であり、敵の動きを完全に封じながら連続で攻撃が決まった時の気持ちよさは他のゲームでは味わえない感覚だった。
この他にも「シンクアタック」は「レギオン」の種類によって変化したり、主人公が使用する武器「エクスバトン」を強化する事で様々なアクションが増える点、「レギオン」のスキルやアビリティの追加や強化など、戦闘アクション面においてこれ以上無いほど力を入れている事が伺える。プレイする上でやれる事が非常に多いため最初は少し戸惑ってしまうかもしれないが、次第にその豊富な選択肢から最善の戦略を立てる事に面白味を感じるようになり、気が付けば「レギオン」との連携も華麗に決められるようになっているはずだ。
全く新しいタイプのアクションとストーリーはどちらも非常に高水準!楽しめる事間違いなし!
本作品はアクションとRPG、どちらの面においても他のゲームには無い可能性を秘めている。アクションゲームとしては全く新しい「デュアルアクション」というシステムも、最初の慣れるまでの期間を突破してしまえばわかりやすく奥が深いシステムなので、多くのアクションゲーマーを魅了する事は間違いない。ストーリーも「FILE」毎にテンポよくわかりやすく進み、警察官である主人公の立場を生かしてプレーヤーが実際に考える展開も多く、戦闘を行なっていない捜査中でも飽きが全く来ない。これはアクションゲームにおいてはあまり感じられない感覚だ。
「ASTRAL CHAIN」はシリーズがまだ存在しない“ここから始まる全く新しいゲーム”だが、その秘めているポテンシャルはとても大きいと言える。それはこのゲームでしか味わえないポイントが非常に多いからだ。最初に取り上げたヒーロー漫画の金字塔とアクションゲームの金字塔が合わさったらどうなるのかという疑問に対して、このゲームは想像を遥かに超えた完成度で答えてくれたように感じる。全国のアクションゲーマーの皆様には是非1度、この新体験アクションRPGを遊んでみてほしい。アクションゲームの新たな進化の可能性を1つ垣間見る事ができるはずだ。
©2019 Nintendo / PlatinumGames Inc. Main Character Design ©桂正和 / 集英社
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