「ロマンシング サガ3」レビュー
ロマンシング サガ3
プレーヤーの数だけロマンが溢れて止まらない!
- ジャンル:
- RPG
- 発売元:
- スクウェア・エニックス
- 開発元:
- スクウェア・エニックス
- プラットフォーム:
- PS4
- Xbox One
- Windows PC
- PlayStation Vita
- Android
- iPhone/iPod touch
- 価格:
- 3,500円(税込)
- 3,420円(税込)
- 発売日:
- 2019年11月11日
2019年11月11日 10:09
スクウェア・エニックスは、フリーシナリオRPG「ロマンシング サガ3(以下、ロマサガ3)」を11月11日に発売する。本作は、1995年に発売されたオリジナル版「ロマサガ3」の待望のHDリマスター版。グラフィックスの向上に留まらず、新ダンジョンやオリジナル版では語られなかったエピソードなども追加されている。
また、ダウンロード販売限定ではあるものの、本作はPS4やXbox One、Nintendo SwitchにPlayStation Vitaといったゲーム機だけでなく、PCやスマホ向けにも発売されるなど、現状で思いつく限りのほぼ全デバイスに対応。まさに、「未プレイのゲーマーは今こそ遊ぶべし!」と言わんばかりの神対応だ。
ロマサガシリーズは、フリーシナリオ制による物語の広がりと、ターン制コマンド式のシンプルな戦闘システムに、パラメーターの成長や技の習得にランダム要素を取り入れたことで、RPG界隈に確固たる地位を築き上げてきた。と、偉そうに語ってみたものの、実は筆者、此度のテストプレイが人生初のロマサガ3体験となる。今回はPS4版でのプレイとなったが、初心者目線に徹して本作独特の面白さや奥深さについて語っていくので、歴戦のロマサガファンの読者におかれては、どうか暖かい目で見守っていただきたい。
自由自在な楽しみ方が味わえるフリーシナリオRPG
本作の舞台となる世界では、300年ごとに起きる「死食」によって、全ての新しい生命が死に絶える。だが、600年前には1人の赤子が死食を生き延び、魔王となって世界を支配。そして300年前に死食で生き残った赤子は、聖王として世界に平和をもたらした。それから300年の時が経ち、物語は3度目の死食から十数年後、ロアーヌ侯国で起こった反乱から幕を開ける……。
プレーヤーはゲーム開始時に8人の主人公の中から1人を選ぶことになるが、選ばなかった主人公も大半は冒険の中で仲間にできる。後述するが、本作は周回がしやすい作りになっているため、初めは好みで選んでも全く問題ない。ただし、選んだ主人公によっては特殊な遊びも体験できるため、気になる方は最初に色々と試してみるのも一興だろう。なお、今回のテストプレイでは、それぞれの主人公で一通りオープニングイベントを体験し、最終的に男主人公の中から「ユリアン」を選択してプレイを進めた。決め手は如何にもゲームの主人公っぽいルックスと、幼馴染の「エレン」への恋心が隠しきれていない残念な挙動に、親近感が湧きまくったからである。
本作はどの主人公を選んでも、実は物語の本筋は変わらない。かつての魔王の配下であり、今なお暗躍する「四魔貴族」を撃破し、ラスボスをぶっ飛ばす!90年代のRPGらしい、シンプルな筋書きである。だが、そこに至るまでの過程、すなわち誰を主人公にし、誰を仲間に選び、どんなイベントを経験し、どんな行動を取ったかによって、本作は大きくその表情を変える。
オープニングイベントを終えれば、あとはもう各プレーヤーの自由。どの街に向かうも、どんなイベントをプレイし、あるいは見過ごすも、言葉どおり自由なのである。とはいえ、本作では情報を入手しないと街もダンジョンも出現しないので、まずは船で行ける街はどんどん行き、街中の人には片っ端から話しかけて、行動範囲を広げていくのがお勧めだ。
初めて本作をプレイする方の中には、「行き先は増えたけど、何をしていいかよくわからん!」状態になるプレーヤーも多いはず。今どきのゲームと違って、どこに行けばいいかの説明もほとんどないため、人によっては少々とっつきにくい印象を受けるだろう。イベント自体も本筋に関係するものもあれば、結局このイベントは何だったのか……的なものまで、かなりバラエティ豊かなので、初めは戸惑うことばかりだ。それでも、暗中模索の状態で行き当たりばったりにプレイしても、いつの間にか強くなったり、仲間が増えたりするので、段々とハマっている自分に気づく。そんな不思議な味わいが本作には確かにある。
シリーズ随一の遊びやすさと奥深さを両立した戦闘システム!
ロマサガシリーズ独特の戦闘システムも、本作でさらに遊びやすく洗練されている。キャラクターにはレベルの概念がなく、パラメーターは戦闘後にランダム成長、強敵ほど戦闘中に「閃き」で新しい技を覚えやすいなど、基本的なシステムはシリーズの伝統を踏襲しつつ、武器の「技」や「陣形」などは前2作よりも充実。よく言われる、「ロマサガ」は無暗にザコ敵を倒しまくると、その分だけ敵も強くなって詰みやすいという話は、本作に限って言えば序盤でも逃走可能な強敵はチラホラ見かけるので、体感的には狙って技を閃きやすく、過去作より戦闘面でのストレスは軽減されていると感じた。
技が強い一方で、いわゆる魔法にあたる「術」は各地の術屋から購入して覚える必要があり、その術屋も売っている術はマチマチなど、術を上手に活用するにはややハードルが高い。戦闘中にキャラの頭上で電球が点く「閃き」がシリーズの代名詞でもあるため、初プレイの方は尚のこと術に手が出しにくいかもしれない。だが、後述の「合成術」のように、本作の術はやり込めばやり込むほど強くなる奥深さを秘めているので、ゲームシステムに慣れてきた頃に、ぜひ術も使ってみていただきたい。
また、本作では戦闘に参加できるメンバーは最大5人だが、パーティーが6人の場合、主人公を控えに回すと戦闘が自動的に「コマンダーモード」になる。このモードでは操作感がいわゆる「オートバトル」に近くなり、集中攻撃などの作戦を選ぶだけで、後はパーティーが自動で戦闘を行う。「コマンダーモード」でしか使用できない「陣形技」や「合成術」もあるので、バトルに慣れてきたらぜひこちらの感触も試してみて、自分に合った戦闘スタイルを模索してみよう。
本編以上にハマる2つのミニゲーム!
本作を語るうえで外せないものとして、「マスコンバット」と「トレード」のミニゲームについても紹介しておきたい。いずれも粗造りな点はあるものの、正直ミニゲームの枠を超えてしまっており、実際に筆者も本編そっちのけで楽しんでしまった。
まずは前者のマスコンバット。これは1,000人単位の軍勢同士で戦闘を行う、いわゆる軍事シミュレーションもので、特定のイベントで体験できる。自軍と敵軍が左右に分かれ、適宜「前進攻撃」などのコマンドで命令を出すだけのシンプルな設計だが、やたら難易度が高く、命令のタイミングを間違えると勝利は難しい。実は前述のミカエルを主人公にすると、このマスコンバットをやる機会が一気に増える。マスコンをガッツリやり込みたい!という方は試してみよう。
次にトレードだが、これは現代風に言ってしまえば物件買収を体験できるミニゲーム。手持ちの資金で買える物件をどんどん買い漁り、自社の収益を上げることが目的だ。まずは1億の売上を目指すことになるが、金にものを言わせて小さな物件から買い始め、虎視眈々と大企業を狙っていく。この過程がめちゃくちゃ楽しい!もうはっきり言ってしまうが、汚い大人になったからこそ、今のしがないリーマンの筆者だからこそ、普段はまず不可能な買収を手軽にできて、マジ最高!!
ちなみに、このミニゲームを遊ぶためには「トーマス」を主人公に選ぶか、仲間にする必要があるので注意しよう。また、トレードを進めていくと仲間になるキャラも存在するので、気になる方はぜひプレイしていただきたい。共に億万長者を目指そうじゃないか!!
90年代の名作RPGを、今だからこそ楽しもう!
昨今のゲームはチュートリアルが丁寧で難易度を選べるものも多いが、本作は死ぬときは簡単に死ぬし、パラメーターの意味や、次に進むべき道もゲーム内ではほとんど説明されない。一方で、本作には一部のパラメーターなどを引き継いで始められる「つよくてニューゲーム」や、イベントの進行状況をまとめた「冒険記」などのシステムが追加されており、オリジナル版よりは確実に遊びやすく、クリアがしやすくなっている。
ベースが1995年の作品のため、正直HDリマスター版の本作でも粗削りな面は当時のまま残っているのだろうと感じた。だが、それが却ってイベントや仲間との一期一会の出会いの楽しさ、閃きを筆頭にランダム要素が生み出す戦闘の楽しさを浮かび上がらせているのも事実だ。ネット上ではオリジナル版の攻略情報が溢れかえっているが、初めて本作をプレイする方にはぜひとも手探りで進めていただきたい。ゲームがどんどん遊びやすくなっている今の時代だからこそ、本作のような古き良き、革新的なゲームの面白さを味わえるはずだ。
そして既にオリジナル版をプレイ済みの方、それもリアルタイムでプレイしていた方にこそ、本作を改めてお勧めしておきたい。HDリマスターで生まれ変わったグラフィックスだけでなく、遊びやすさが増したシステムや、新たなダンジョン、エピソードも追加されているので、新鮮な気持ちでプレイいただけるのではないだろうか。奇しくも、というより確実に狙って、オリジナル版の発売日と同日に発売される本作。思い出に浸りつつ、それぞれの自由に、気の赴くままに、ロマサガ3の世界を駆け巡ろう。
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