2019年1月28日 02:05
2018年のTaipei Game Showに初出展を果たしたモリサワ。2017年にNintendo SwitchにモリサワのUD(ユニバーサルデザイン)書体が採用されたことを受けて、ゲーム分野での本格的な海外進出を狙っての出展だった。今年はさらに一歩進んで、2019年1月より提供が開始された「UD新ゴ 繁体字」をアピールすると同時に、実際に使ってもらってその良さを知ってもらうために、会場限定で無料体験キャンペーンを行なっていた。本稿では“フォントのモリサワ”の最新アジア事情をお届けしたい。
モリサワのフォントは、昨年のレポートでもお伝えしたように、出版分野のみならずゲーム業界でも徐々に浸透しつつある。任天堂をはじめ、ソニー・インタラクティブエンタテインメント、バンダイナムコゲームス、Cygames、GREE、DeNAなど大手メーカーは軒並み採用しており、1,000種類にも及ぶ豊富なフォントデザインを活用して、ゲームのテキスト部分に、独自のこだわりを取り入れている。
モリサワフォントのセールスポイントは、純粋に文字数とバリエーションが多いことだ。ひらがな、カタカナ、英字、そして漢字。漢字については日本語独特の異体字まで全部盛り込んでおり、他社のフォントが数千文字程度しかカバーしていないのに対して、モリサワフォントは約23,000字をカバー。あらゆる日本語を表示させることができる。
ちなみに総字数の多さはアジア特有の現象で、欧米で使われるアルファベットは、欧州の言語すべて含めても800字で足りるという。これに対して、日本語の約23000字を皮切りに、繁体字は約13,000字、簡体字は約28,000字、ハングルは約8,000字と、いずれもケタ違いに多い。
モリサワが近年力を注いでいるのが、こうした総字数の多いアジア言語への対応だ。日本語フォントで培った開発パイプラインをそのまま活かし、繁体字、簡体字、ハングルといった総字数が多い言語のフォントの開発を急ピッチで進めている。
冒頭で紹介した「UD新ゴ 繁体字」は、和文書体である「UD 新ゴ」の繁体字版で、従来の出版やWebでの採用に加えて、ゲームでの採用も目指して開催初されている。モリサワのフォントは、フォントの世界ではなかなか難しい、同じデザインの多言語対応を実現しているため、Nintendo Switchのようなグローバル展開しているプラットフォームと特に相性がいいし、ソフトメーカーにとってもゲームのイメージをまったく変えずに海外展開が可能となる。
モリサワではようやく完成した「UD新ゴ 繁体字」を、日本のゲームの中華圏展開のみならず、現地のメーカーにも普及させたい考えだ。2015年に完成した「UD新ゴ 簡体字」は、Tencentの大ヒットタイトル「Arena of Valor」にも採用されるなど採用事例が増えてきているということだが、「UD新ゴ 繁体字」は、一部のモバイルメーカーがすでに採用しているが、台湾メーカーの採用事例はまだない。
そこでモリサワでは、現地メーカーの採用実績を積み上げるために、無料体験キャンペーンを行なっていた。キャンペーン期間中なら、現在開発中のゲームに、モリサワの繁体字フォントを無料で使うことができるという。
日本では、パッケージ製品「モリサワパスポート」を利用することで、個人でも気軽に導入できるほど身近な存在になっているが、台湾をはじめ、アジア圏では、法人の窓口しかなく、この点についても今後改善していきたいという。モリサワのアジアでの地道な挑戦はどのような実を結ぶのか、今後も引き続き注目していきたいところだ。
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