(2)保管されている戦車・装甲車が他国に横流しされている可能性

 保管されている戦車・装甲車が使えないのには、腐食のほかにも理由がある。

 一つの理由は、ロシア軍の戦車等が横流しされていて、旧型の戦車が実際に軍参謀部が記録しているだけの数量がないのではないかということだ。

 北朝鮮は旧ソ連時代から、T-55やT-62戦車、PT-76軽戦車を引き渡され、現在約4100両保有している。

 これよりも新型は、約10両しかない。

 また、装甲車を約2500両保有していることになっている。ほとんど旧ソ連(中国は一部)から導入したものだ。

 ソ連邦崩壊から現在でも、ロシア軍の旧式戦車は北朝鮮に渡っている。また、シリア、中東の国の反政府組織に秘密裏に渡っているという情報もあった。

 これと併せて弾薬も密売されているようだ。

 ソ連邦崩壊後、弾薬庫が原因不明火災で爆破するという事故が多発した。その理由は、弾薬を盗んだ者が、その事実を隠すために、弾薬庫に火をつけたということだった。

 もう一つの理由は、ロシアで保管されている新型のT-80は、戦場に投入できないということだ。

 例えば、ロシア軍がウクライナの戦場で使用している戦車(装甲歩兵戦闘車を含まず)は、T-62/64数量不明、T-72戦車1900両、T-80戦車450両、T-90戦車350両から一部残して投入されたものだ。

 この数値にあるように、T-72戦車が主力だ。

 それよりも新しいT-80戦車約3000両は保管状態にある。本来であれば、数量が最も多くて新しいT-80戦車が主力戦車であってもよいはずだが、実際の戦場ではそうではない。

 これはかなり不思議なことだ。なぜなのか。分析担当官の誤りなのか、それとも特別のからくりあるのだろうか。

 ロシア軍に余裕があるから新型の戦車を投入していないのか、あるいは、ロシア本土防衛のために残しているのかもしれない。

 しかし、なぜロシアはせっかく獲得した領地が奪還されている段階でも、新型戦車を多数投入しなかったのか。

 それは、保管されているT-80戦車は、使えないと考えると次のことが浮かび上がってくる。

 情報がないので100%の推測なのだが、軍の保管敷地内にあるのは形だけの戦車であって、重要な部品、例えば、エンジンや照準装置などは外され、友好国に輸出され、新型戦車に組み込まれているのではないかということだ。

 T-80は比較的新型なので、腐食は少ないはずだ。また、機能的にも優れているはずなので、速やかに戦場に投入してもよいはずだが、そうではない。

 使えないという可能性が高い。