4.保管する戦車・装甲車を投入できるか
(1)屋外に置かれ錆びついた戦車・装甲車を戦場に投入できるのか
ロシア軍は、前述した戦車等(戦車・装甲歩兵戦闘車)・装甲車、火砲等および兵員の損失を補えるのだろうか。
これらの損失を補うのには、戦場に送り出して使用できる予備の兵器があるか、また、予備役兵がいるのかどうかにかかってくる。
ロシア軍の予備の戦車等は、ミリタリーバランス2017~2021のデータによれば、約1万0200~1万7500両(内訳、T-55:0~2800両、T-62:0~2500両、T-64:0~4000、T-72:7000両、T-80:3000両、T-90:200両)、装甲歩兵戦車8500両が保管(in store)の状態となっている。
装甲車は約6000両もある。
数値に差があるのは、関係する分析担当者が、これらはもう使えない兵器として換算すれば、「0」と見なして数値を決定するためだ。
敵国の陸上兵器の数量を詳細に算定するのは、極めて難しい。
その数量を見ると、戦車が2万6000両で、投入数の約3倍以上、装甲車は6000両で、まだその70%もある。
これらが実際に使える状態にして保管されているのかどうかだ。
ソ連軍が解体された時期の写真では、保管のT-72およびそれより旧型の戦車等は、広い駐車場のある一角に置かれ、キャンバスが上から被せられていただけのもので、放置に近い状態だった。
特に、戦車の砲身内部は塗装されていないので錆びやすい。大きな腐食があれば、爆発の強い圧力で砲弾を発出することができない。
腐食の部分で、砲口内破裂が発生するからだ。
砲塔部分は回転できなければならないが、回転部分が錆びていれば、砲身を敵戦車に向けられない。
一番大きな問題は、エンジン部分だ。
エンジンが車体にそのまま据え付けられて放置されていれば、腐食で使えない。つまり、ロシア軍の保管されている戦車・装甲車等ほとんど使い物にならないと見てよい。
この時期から現在までは、30年ほど経過している。
私の記憶では、動かされた、整備されたという情報は全くなかった。
将来使用することを考えた保管は、エンジン、砲身内部、その他の可動部が錆びないようにしなければならない。
例えば、エンジンは1週間に1度は駆動させる。もし気温が零下に下がれば毎日実施する必要がある。
また、月に1度は油を付けてブラッシングする。可動部は、錆で動かなくなるので、定期的にグリスを注入することが必要だ。
ロシアの保管状態の戦車等をもしも復帰させようとすれば、20~30年間分の錆を落とし、分解して部品を交換し、作動させなければならない。
エンジンは、整備によって復帰させることはほぼ不可能に近い。
これらのことから、保管されているロシア軍のほとんどの戦車は、錆がひどくて、整備しても復帰させられることはないだろう。