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律香
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染まる - 律香の小説 - pixiv
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2,282文字
染まる
お久しぶりです。

ずっとボツにしようか悩んでいたお話ではあるのですが、温めていたものでもあるのでこちらは供養程度に...!

受け攻めハッキリしてません( ´•ᴗ•ก)

尚ご本人様とは一切関係は御座いませんので、悪しからず。

秋の、センチメンタルなevsuさんのおはなし。
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2018年10月27日 00:09


「ねえ。」


「...んー?」


微弱ながらも日差しが差し込む、六畳一間。
時計が3時30分を示した頃。


何者かにパーカーの袖を引っ張られて、携帯から意識を外した。


開けっ放しの窓からそよ風が吹いて、爽やかな色のカーテンが大きく揺れ動く。ほのかにあまったるい、あの匂いがした。

────嗚呼、秋だなぁ。
.....あれ、あの花ってなんていうんだっけ。





俺がいぶくんを無視してまでやっているものというのは巷で噂のスマホゲームである。正直めちゃめちゃやり込んでいるし、友人達の間でも そうくんは強い!、と評判なくらいだ。


あの秋に咲く花の名前はなんだっけ。だとか、このクエストの攻略法はどうしたものか、とか。そんなことばかり考えているものだから、お隣さんへの返答は自然と気のないものになってしまうのだ。

だって、仕方ないでしょ? おれ気になるんだもん。

とはいえいぶくんだってそう簡単には諦めない。軟弱そうに見えて意外に頑固で、自分の意思を曲げない所だけは、嫌味にも似たものどうしだ。



ちらりと横目で彼を見れば、普段あまり動かないはずの涼しい顔がぶすっと俺を睨みつけている。まあ粗方、"せっかくふたりともオフなのに、構ってくれたっていいじゃん。"
、とでも考えているんだろう。


もちろんそんな所も愛しいけれど、いぶくんはいっつも俺に察してもらうまで動かない節があるから。
ちょうどゲームも進めたいし、たまには意地悪でもしてみようか、という魂胆だ。







「そ、ちゃん」


「ちょっと、聞いてるの」


「買ってきたドーナツぜんぶ食べちゃうからね。」



袖を引っ張る手は少し強引で、服は伸びるし、危うく携帯を落としそうになる。今日は随分と頑固だな。いつもならこの辺で拗ねて諦めてるのがオチなのに。



真正面のテーブルには帰り道に2人で買ってきたドーナツが置かれている。
...今見ただけで既に二つ消えてるんですけど、さすがに全部は太るんじゃないかなぁ、ってそうくんは思うんだ。いぶくん。










視界の端に柔らかそうな髪色が揺らぐ。
オレンジっぽい赤色。いぶくんって髪染めたんだっけ?



呑気な考えを巡らせている内にはたと気がつけば、小さな部屋は西日が傾いて、ぼんやり赤みがかった空がみえた。


......やべ。


慌てて顔を見上あげれば、なんと時刻は午後5時を指していた。

15個入りだったはずのドーナツボックスは、残りあと、ひとつ。





いぶくんはストレスが掛かるとやけ食いをする癖がある。

口に入れられるものなら何でもいいらしく、遠慮がちで溜め込みやすい性格が手っ取り早くストレス解消をするにはとにかく食べる事が一番らしかった。更にいぶくんの場合は、結局消化し切れずに嘔吐してしまうのだからどちらにしろいい事ではない。



つまり、この14個のドーナツの消失が相当まずい事を意味しているのは猿にだってわかることだ。




そろりと携帯の電源を落として振り向こうとすれば、背後からはひんやりした色白な両腕が伸びてくる。細くて華奢なそれは、呼吸を遮るかのように首元へきつく絡みついた。


「......こっち、みて。」


少しそっけないような気だるい声の主は、じわじわと腕の拘束を強めていく。



怒ってはいない。ただ、


「ご、ごめんいぶく、......っ、いぁ」


やっぱり。

ぎゅうと抱きしめられて、ぎり、と唇に鈍い痛み。それから優しく慈しむように、舌はその噛み跡を撫ぜた。




申し訳ないことしたな、なんてじっと耐えながら頭の隅で思う。出血する程ではないが、じんじんと熱くて、やはりすこし痛んだ。

いぶくんは、 寂しかったなんて言えるほど器用な人じゃなかったね。








ゼロ距離の切れ長な瞳は じっとこちらをみつめた。安心したような、けれど切なげな色をして、きっとまた自分を責めている。

そんな今にも消えそうな色彩をもう一度目に焼きつけていたかったけれど、その光は呆気なく瞼に閉ざされてしまった。




僕が感じた刹那的感情と、彼の儚さはいつも何かを彷彿とさせる。唇を何度も食む、あまい痺れと微かに感じるあの匂い。











───そうだ、あの花はキンモクセイだ。




そしてこの人は秋に似ているのだ。

キンモクセイの独特の香りは懐かしくて、常に誰かを惹きつける。それは、まるでこの人を表していた。


いぶくんの、人を魅了する歌も声も、カリスマ性も、いつも何を考えているのか分からないような天才的頭脳も。...そう、この真っ直ぐな視線だって、ふたつほどしか違わないはずなのに 幼い僕とは幾分とかけ離れている。


それでいて、彼は謙虚だ。




夏や冬に掻き消されて一瞬で過ぎ去る色の薄い秋は、きっともうすぐ終わってしまうだろう。たった今比喩した秋のように、この人もいつかは居なくなってしまうのだろうか。





視界の端でカーテンが揺れて、またあの香りに染まっていく。オレンジ色の小さな星は、こうして引きこもりの俺に 控えめな秋の訪れを知らせるのだ。





どこで咲いているかもわからない、小さな小さな花と、息苦しさと、彼の腕にされるがまま。












ああ、酔ってしまいそう。







金木犀 [キンモクセイ]

-花言葉
謙虚。陶酔。貴方の気を、引く。

染まる
お久しぶりです。

ずっとボツにしようか悩んでいたお話ではあるのですが、温めていたものでもあるのでこちらは供養程度に...!

受け攻めハッキリしてません( ´•ᴗ•ก)

尚ご本人様とは一切関係は御座いませんので、悪しからず。

秋の、センチメンタルなevsuさんのおはなし。
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2018年10月27日 00:09
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