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エスカレーター、止まるのは右か左か トラブルも

産経ニュース / 2022年12月14日 18時26分

エスカレーターでは立ち止まることを呼び掛ける埼玉県のポスター(県提供)

東日本は右、近畿圏なら左―。歩く人のために空ける側が地域ごとに異なるなどの「暗黙のルール」があるエスカレーターだが、近年は転倒事故の原因になるとして、立ち止まって利用する動きが広まっている。自治体や鉄道事業者の呼びかけで徐々に浸透しているものの、先を急ぐ人や、そうした呼びかけを知らない人との間でトラブルも起きている。(内田優作)

止まる利用者を暴行

今月1日、警視庁万世橋署は傷害の疑いで住居不詳で会社役員の男(61)=釈放=を逮捕した。逮捕容疑は、JR秋葉原駅で80代の男性に暴行し、腰の骨を折る大けがを負わせたというもの。きっかけは「エスカレーターの片側空け」だった。

事件は今年1月29日午後6時半ごろに発生。JR秋葉原駅(東京都千代田区)のエスカレーターを歩いて下っていた男が、右側に立ち止まって乗っていた被害男性に因縁をつけた。

「邪魔なんだよ」

左側は止まって利用する人で埋まり、追い抜こうにも追い抜けない。詰め寄る男に男性は「エスカレーターは歩くもんじゃない」と言い返した。激高した男はエスカレーターを降りてすぐに男性を暴行。様子を目撃した利用者が110番通報している間に走って逃げたが、現場の防犯カメラ画像に、男が男性の体をつかんだ後に蹴って投げ飛ばす姿が収められていたことが決め手になり、逮捕に至った。

変わるルール

エスカレーターを巡っては近年、自治体や鉄道事業者が歩かずに両側で立ち止まるよう呼びかけている。

一連の取り組みの背景にあるのが、高齢者や体の不自由な障害者、小さい子供を持つ親など、立ち止まる列の反対側を使いたい人が使えない現状だ。

また、エスカレーター上の歩行は事故の原因にもなっている。日本エレベーター協会の調べによると、平成30年1月~令和元年12月にかけて、全国のエスカレーターでは1550件の事故が発生。うち5割に当たる805件の原因は「乗り方不良」だった。

埼玉県では昨年10月、エスカレーターの徒歩移動を禁止する条例を施行。罰則はないが、駅や商業施設のエスカレーターには左右それぞれに立ち止まるよう促すステッカーが貼られている。

県政世論調査によると、令和3年度の調査で駅のエスカレーターで立ち止まると回答したのは64・9%だったが、今年度の調査では75・5%に増加。県消費生活課の担当者は「商業施設などと急ぐ人も多い駅とでは環境が違う」とした上で、「一定程度、歩く人は減っている」と分析する。

トラブルも発生

呼びかけは徐々に広まりつつあるが、今回の傷害事件のように、立ち止まって利用している人がトラブルに巻き込まれるケースも少なくない。

エスカレーターの安全な利用について研究している筑波大の徳田克己教授は「条例があれば、立ち止まる人も心強い」と制度化のメリットを指摘。一方で条例が施行された埼玉県を定点調査した結果として「当初は立ち止まる人も多かったが、時間が経過して慣れてしまい、元へ戻っている部分もある」と分析する。

では、どうすればいいか。「子供はそもそもなぜエスカレーターを歩いてはいけないのかを知らない。歩くことで人に迷惑にかかることを子供に教えれば、大人への波及も考えられる」と徳田氏。さらに、一連の取り組みが新たなルールとして浸透するよう「エスカレーターの両側に足跡を模した絵を描くなど、さまざまな工夫を組み合わせて、利用者に周知していくことが大事だ」と話した。

エスカレーター条例 埼玉県で昨年10月に施行された条例。正式名称は「埼玉県エスカレーターの安全な利用の促進に関する条例」。エスカレーターの利用者に立ち止まって利用することを義務づけるほか、管理者には立ち止まった状態での利用を周知するよう義務づけた。罰則はない。名古屋市も同様の条例の制定を目指し、パブリックコメントを実施している。

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