【完結】ファイアーエムブレム 烈火の剣~軍師と剣士~   作:からんBit

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間章~フェレ城(後編)~

城壁の上で肩を寄せ合う2人。

 

「あ、あのな・・・リン」

「なに?」

「き、今日はいい天気だな!!」

「え、ええ、そうね」

「・・・・」

 

ハングは一人で頭を抱えて俯き、身悶える。

 

天気の話なんてどうでもいいだろ!

 

「大丈夫?」

「・・・ああ、大丈夫だ」

「とても、そうは見えないけど」

 

隣に座るリンはずっとハングを待ってくれている。

ハングは自分の情けなさに本当に嫌気がさしてきた。

 

自覚したのはいつからだったのかもう覚えてもいない。

自分の感情に驚かされ続けた今までの旅。

そして、アトス様から貰った『アフアのしずく』

 

覚悟を決める時間は山ほどあった。伝える機会だって何度もあった。

 

ここまで引き伸ばしてきたのは単に自分の中途半端な気持ちと復讐への渇望のせいだった。

それが今では復讐よりも大事な何かで胸を埋め、隣の彼女への想いは今までのままじゃいられないくらい強くなっている。

 

もう、躊躇う必要も何も無い。

 

「なぁ・・・リン・・・」

「なに?」

「あの・・・その・・・」

 

リンの顔をまっすぐ見れず、自分の膝の中に顔をうずめながらハングは言った。

 

「その・・・アトス様からさ、御守り貰ったんだ」

「うん。そんな話したわね」

「これが、そうなんだけどさ」

 

ハングは月明かりにかざすように手のひらを広げる。リンはそれを覗き込む。

 

「綺麗・・・」

「だろ?」

 

青みを帯びた液体の揺れる小瓶は月明かりの中でよく映える。

 

リンがハングの手のひらを支えるようにその指を優しく掴み、小瓶をまじまじと見つめた。内心では心臓が壊れそうになりながらも、ハングは平静を装った。

 

「これはアトス様が加護を与えた御守りでな、どうせ戦場に出ない俺が持ってても意味ないらしいし、えと、俺が一番信頼している奴に渡せとかなんとか言われて」

「え?」

 

リンが顔をあげた。

 

「あの・・・今誰に渡すって?」

 

月明かりでもはっきりとわかる程に彼女の顔は赤くなっていた。

わずかに火照った彼女の頬は逆に彼女の白い肌を強調しているようで、月明かりに輝くその姿にハングの思考は止まってしまう。

 

「だから・・・俺が・・・信頼・・・してる・・・奴に」

 

しどろもどろになりながらハングはそう言った。

さっき固めたはずの決意が既に揺らぎそうだ。

ハングの顔は耳まで真っ赤に染まっていた。

そして、口からは考えるより先に言葉が出ていた。

 

「あ、いや、だからな、その・・・誰に渡そうかな、なんて考えててさ。お前に相談しようと思って」

「あ・・・そう・・・そっちか・・・そうよね」

 

みるみるうちに血の気が下がっていくリンの頬。

それを見て、ハングは冷水に頭から突っ込んだ気分を味わった。

 

この世で最も死ぬべき奴はネルガルかもしれない。

だけど、次に真っ先に死ぬべきは自分であろうとハングは思った。

 

今すぐ自分の腹をかっさばいてやりたかった。

どうせその程度の傷で死ぬような体じゃない。剣を部屋に置きっ放しにしていたことが悔やまれてならなかった。

 

「あぁ・・・もう・・・なんなんだよ!!」

 

ハングの頭の中でついに何かが飛んだ。

 

「あぁもう!ちくしょおおおおおおおおおおお!!」

 

ハングは勢いに任せて立ち上がり、城壁の外に向かって吠えた。

 

「こんちくしょうがぁあああああああああ!!」

「は、ハング?」

 

驚いたのはリンの方だ。復讐以外の単なる感情に任せて荒れるハングを見たのは初めてだった。

 

「いつまで御託並べてんだ俺は!!いい加減にしやがれぇえええええ!」

 

ハングの声は徐々に熱くなっていく。ハングは息を切らすまで声を張り上げ、声が枯れるまで叫び続けた。

しばらく吠え続け、ようやく気がすんだのかハングは疲れ果てたように膝をついた。

 

「あ、あの、ハング・・・大丈夫?」

 

恐る恐るという感じに声をかけるリン。

ハングはそんなリンを睨みつけ、背筋を伸ばして立ち上がった。

 

「おい!リン!!」

「は、はい!」

 

ほぼ条件反射でリンの背筋が伸びる。

 

真っすぐに見つめ合う2人。

 

涼しい夜風が2人の間を駆け抜けた。

ハングは大きく息を吸い込んだ。

 

「お前に伝えときたいことがあった」

 

そして、ハングはリンに向けて真剣な顔を向ける。

 

戦場に向かう時の緊張感とは違う。偉い人との謁見に臨む姿勢でもない。

作戦会議で見せる余裕そうな笑みはなく、雑談をするときのような気の緩みは欠片もない。

わずかな気負いを口の端に忍ばせ、清々しい程に迷いの無い瞳でハングはリンを見つめた。

 

それは人が1つの決断を下した時に見せる顔。

誰しもが一生に何度か見せる決意の表情。

 

「リン・・・」

 

そんな顔でハングはこう言った。

 

「俺はお前のこと好きだ」

 

決して感情的にならず、それでも本心をはっきりとのせたその言葉。

若干照れたような声音ではあったが、それでもはっきりとハングはそう言ったのだった。

 

「だから、これ、受け取ってくれるか?」

 

ハングはリンに『アフアのしずく』を差し出した。

 

リンは動かない。

 

ハングから見たリンはなんだか呆然としているようだった。

 

断られるか・・・

 

ハングの頭の片隅にその恐怖がよぎる。

 

だがそれは最初から覚悟の上だった。その程度の腹も括れなければこんなことをしたりはしない。そのはずなのに、ハングの足は今にも震えそうだった。

 

どこまで弱いんだ、自分は。

ここまでくると笑えてくる。

 

ハングは静かに呼吸を繰り返す。

 

それからどれ程の沈黙が続いたのだろうか。

永遠にも感じられる静寂の中、ついにリンが口を開いた。

 

「一つ・・・お願いがあるの・・・」

 

審判の時。

 

ハングは逃げたしたくなる自分を必死に押しとどめる。

 

「なんだ?」

 

リンを真正面からみつめる。

 

「その・・・受け取るから・・・これからは・・・二人の時・・・リンディス・・・って呼んで欲しいの」

 

瞬きを繰り返すハング。ハングは今の台詞を一言ずつ分解して意味を考えた。

 

「リンディス様と呼べばよろしいのですか?」

「違う!!そうじゃなくて・・・そうじゃなくて・・・」

 

少し俯き気味になるリン。その耳が月明りの中でもわかる程に真っ赤に染まっていた。

 

ハングはもう一度その意味を考えてみる。

 

『リンディス』

 

その名は、リンの本当の名前だ。

その名を呼ぶのは貴族やキアランの人々、そして彼女の家族だけだ。

 

ハングはそのことに思い至り、目を見開いた。

 

「・・・い、いいのか?」

 

自分の口は震えていた。リンは黙って頷いた。

自分の頬が熱くなるのをハングは自覚した。

 

ハングは彼女の本当の名前を口にする。

 

「・・・リンディス」

「・・・はい」

「これ・・・受け取ってくれるか?」

 

ハングは再びリンに『アフアのしずく』を差し出した。

 

「よろこんで・・・」

 

その手のひらから小瓶を受け取るリンディス。

 

「いいのか?俺・・・なんかで・・・」

「当たり前よ・・・だって、私も・・・あなたが・・・」

 

リンディスが深呼吸をする。

そして、優しく、幸せに満ちた笑顔で彼女はこう言った。

 

「ハングが・・・好きだから」

 

その一連を遠視の魔法で見ていた人物がいた。

アトスは自分のあご髭を撫でながらぼそりと独り言を呟いた。

 

「そういうつもりで、渡したわけじゃなかったんじゃがな・・・」

 

アトスの表情は複雑だった。

 

 

 

――――――― ※ ――――――― ※ ―――――――

 

 

中庭でニニアンの見せてくれた踊りは本当に『とっておき』だった。

少なくともエリウッドはそう感じた。

 

彼女の飛び上がる姿は空を舞う大鷲のように雄大で力強く。

彼女が天に向けて手を伸ばす姿は日差しの中で育つ草木のように伸びやかで、喜びに満ちていた。

 

祈りを捧げるでもなく

感謝を表すわけでもない

 

それは世界の生まれを表現するかのような舞。

 

彼女の動きに協調するように風が駆け抜ける。

彼女の舞を盛り上げるように木々が揺らめく。

 

彼女の周りに理が集うような錯覚を覚えるほどに、彼女の踊りは周囲の世界を巻き込んでいく。

 

間近にいたエリウッドにはまるでニニアンが別の世界で踊っているようにまで感じる程だった。

 

時に荒々しく、時にお淑やかに

 

まさに、彼女の『とっておき』だとエリウッドは思ったのだ。

 

「フェレにはね、年に一度、収穫を祝う祭りがあるんだ」

 

ニニアンの踊りに自分の持てうる全ての賛辞を尽くしたエリウッド。

彼はニニアンへの休息の意味を込めて中庭の片隅の長椅子に彼女と共に座っていた。

 

隣の彼女は長い舞をしたからか、まだ身体が火照り、白い肌をわずかに昂揚させていた。

 

「領地内に暮らす人が、みなお酒を飲んだり、踊ったり・・・」

「とても楽しそうですね」

 

汗ばんだ彼女はいつもより興奮しているのか、その声は少し上ずっていた。

 

「その時はぜひニニアンも来るといい。きみの踊りを見れば皆大喜びすると思う。僕はあれ程に心震わせたものに出会ったことがない」

 

エリウッドもとても興奮気味だ。

 

「ありがとうございます」

 

彼女は照れながらも嬉しそうだ。自分の得意とするものを褒められて悪い気分になる人はいない。

 

「ニニアンを見たら踊り好きの母はきっと喜ぶだろうな。もう眠られてしまったのが残念だ」

「また、機会があればよいのですが・・・」

「あるさ、きっと。全部解決したらまた君の踊りを見せてくれ。今度は、母や・・・友とも一緒にね」

「はい!」

「それじゃあ、約束だよ」

 

エリウッドはニニアンに向けて小指を差し出した。

 

「・・・?」

「知らないのかい?約束する時に、お互いの小指を絡めるんだ」

「こう・・・ですか?」

「そうだよ」

 

指を絡めて、エリウッドが呪文を唱える。おまじないに近い約束法だ。

 

「僕達二人の約束だ」

「はい、約束です」

 

ニニアンは離した自分の小指をそっと握りしめた。

そこがエリウッドと繋がってるような気がして、ニニアンは胸の奥が浮き上がりそうな気分だった。

 

「昔、ヘクトルとも約束をしたもんだよ」

「小指の約束ですか?」

「いや、もっと過激かな・・・お互いの掌を自分で傷つけて流れ出した血を合わせる。古代より伝わる勇敢な戦士の誓いの慣わしだよ」

「・・・・・」

「ニニアン!決してやっちゃダメだからね!!君は戦士じゃないんだから!」

「え、どうしてわかったんですか?」

「わかるよ・・・」

 

今にも刃物を取り出しそうな勢いの視線だった。

いくらなんでもこんな女の子と殺伐とした儀式を交わすわけにはいかない。

それになにより、ニニアンの肌に傷をつけるような誓いの慣わしなど決してやりたくないのだ。

 

「ニニアンって意外と思い切ったこと考える時があるよね」

「そうでしょうか?」

「そうだよ。本当に自分のことは大事にしなよ」

「・・・ごめんなさい」

 

謝るニニアンの頭を一回撫で、エリウッドは城壁の方に視線を向けた。

 

ふと、友人がどうなったのか気になったのだ。

さっき、狼の遠吠えが聞こえてきたので何かしらの進展はあったと思うのだが。

 

「エリウッド様?そちらになにか?」

「ちょっと、気になってね。でも、ここからじゃわからないか」

「ハングさんのことですか?」

「うん、明日には結果がわかると思うけど・・・」

 

結果次第ではハングはしばらく何も手につかないかもしれない。

 

その時は誰が指揮をとるか・・・

 

そんなことを考えていたエリウッドは服の裾をニニアンに引っ張られ、意識をそっちに戻した。

 

「どうしたんだい?」

「エリウッド様・・・あれ・・・」

 

ニニアンの指差す先、そちらに視線を動かす。

 

「ふぅ・・・まったく」

「結果が出ましたね」

 

視線の先にはハングとリンディスが二人で中庭を歩いていた。

しかも、二人の手は固く繋がれている。

 

「散々人を心配させておいて・・・」

「収まる鞘に収まりましたね」

「本当に・・・もう・・・なんというか」

 

エリウッド達が中庭にいることに気づいたのか二人は慌てて手を離し、こっちにやってきた。

 

「よう、エリウッド」

「ニニアン、こんばんわ」

 

呆れた二人だ。エリウッドとニニアンはそんな二人を前にクスクスと笑う。

 

「なんだよ、二人とも」

「いや、良かった、と思っただけだ」

 

ハングが気恥ずかしそうに視線を逸らした。

 

「リンディスも良かったね」

「・・・そう、かもね」

 

リンディスの方がまだ肝が据わっている。

 

「それで、ハング」

「ん?」

「お酒はどうする?」

「・・・少し、もらうかな」

「酔えないのにかい?」

「酔えないからだ」

 

エリウッドは楽しそうに笑い、ハングは鼻をならした。

 

それから、4人はエリウッドの部屋に移動し、軽めの酒を酌み交わす。

どこから話を聞きつけたか知らないが、いつの間にかヘクトルも参戦していた。

 

「しかし、ここまで来るのに随分遠回りしたな。ん?」

「何回その話をする気だ馬鹿野郎」

 

散々からかわれ続けてそろそろ飽きてきたハングだ。

 

「そういえば・・・」

 

踊りの疲れとお酒があいまって少しふらつき気味のニニアンがリンの方を向いた。

 

「ハングさんからは何か約束の品はいただいたんですか?」

 

ハングは口の中の酒を吹き出しかけた。

約束の品という想像が膨らむ話に動揺したのだ。

 

「約束の品・・・とは、少し違うのだけれど、これを貰ったわ」

 

そんなハングに気づかず、リンは自分の胸元から薄汚れた小さな布袋を取り出した。

その中から、リンは大事そうに小瓶を取り出す。

 

「綺麗ですね」

「ええ、とっても」

 

それを見ていたエリウッドはその布袋を見て、ハングを見て、そしてリンディスの顔を見た。

 

「リンディス、その布袋、随分と年季が入ってるみたいだけど。古いものなのかい?」

「これのこと?」

 

リンディスが自分の布袋を持ち上げた。

それを見て、ハングが気恥ずかしそうに顔を背ける。

 

「これは一年ぐらい前に買ったものなの。年季が入ってるのはいつも身につけてたからだと思うわ」

「へぇ・・・大事なもんなのか?」

「袋は別にたいしたものじゃないわ。中に大事なものをいれてるの」

 

ハングは皆から自分の顔を隠すように酒に口をつけた。

 

「リンディス様、何が入ってるんですか?」

「大切なものよ」

 

リンディスが中から取り出したのは緑がかった透明な鱗。

 

「これも、ハングから貰ったの」

「鱗・・・ですか?」

「鱗よ・・・私の大切な御守り」

 

今もなお鱗の中には細い筋が走り、一つの命のようにわずかな温もりを保っている。

 

「持ってみても・・・」

「ええ、構わないわよ」

 

両手で丁寧に受け取った鱗をエリウッドとヘクトルものぞき込む。

 

「ハングから貰ったってことは、竜騎士時代のもんかなんかか?ドラゴンの鱗とか」

「いいえ、ハング自身のよ」

「ああ、あの左腕か。鱗が剥げるってことはあれは脱皮もすんのか?」

「さぁ・・・それは見たことないわね」

 

ハングは皆からの視線を避けるように壁の一点を見つめていた。

 

「なるほどね・・・へぇ・・・」

 

エリウッドがさも面白い玩具を見つけたかのような顔をしていることはそちらを見ずともわかった。彼の言いたいことはわかっている。

 

『これだけ想われていながら、君はあんなに迷っていたんだね』

 

エリウッドの心の声が聞こえてきそうなハングであった。

ニニアンはリンディスに鱗を返す。

 

それから、しばらくハングへの攻撃が続き、酒も話もようやく一区切りついた頃合いだった。

 

「明日からベルンだな」

 

ヘクトルがふと漏らした。その一言にエリウッドとリンディスの目が変わる。

 

「なぁ、ハング。俺はベルンには行ったことがないんだが、どんな国だ?」

「どんな国・・・」

 

ハングは考える時間を稼ぐように酒を手にとった。

 

「そうだな・・・」

 

酒をグラスの中で揺らしながらハングは昔の自分に思いをはせる。

 

「今はどうか知らないが・・・あまり、いい国じゃなかった・・・かな」

「あ・・・悪い・・・無神経だったか?」

 

ハングは裏切られてベルンを追われた。あまりいい記憶があるわけがない。

 

「気にするな、ヘクトルにそんな気づかい求めてないよ」

「てめぇ!」

 

声を荒げるヘクトルをハングは乾いた笑いで受け流す。

 

「あそこは・・・賄賂が横行しててな・・・その為に町の人は搾取する側とされる側に二分されてることが多かった。俺の町では・・・」

 

ハングが言葉に詰まる。

ハングが最初に思ったのは自分が産まれた村。

 

それを語るにはあの時の自分はまだ幼すぎた。

そして、抱えている思い出は決して話したいものでは無かった。

 

そのわずかな葛藤を皆は察してくれた。

 

ハングはわずかに間を置いて、別の町を話すことにした。

 

「・・・まぁ、竜騎士時代の時は城下町に住んでたからな。そこそこ栄えてたけど」

「そういえば、ハングが竜騎士だった時の話って聞いたことないな」

「ヒースからは聞いてないのか?」

「噂程度だね。詳しくは聞いてないよ」

 

ハングは視線だけで残りの三人に問うたが、三人共首を横に振るだけだ。

 

「ちなみに、噂ってどんなんだ?」

「あまり喋らないけど目線だけは鋭かったとか・・・」と、エリウッド。

「殺気立ってたくせに槍の腕はいまいちだったとか・・・」と、ヘクトル。

「だいたい、当たってるかもな」

 

ハングは昔の自分に思いをはせる。

 

「良かったら聞かせてくれないか?どうして、ハングは竜騎士になったんだい?」

「どうしてって・・・」

「どうせ、行き倒れたとこを拾って貰ったんでしょ」

「・・・まぁな」

 

リンディスの言う通りだ。

 

「ま、でもやっぱり人の縁だよな・・・」

 

ハングは何となく、窓の外に視線をやる。

 

夜はまだ長い。

 

「・・・どこから話すかな・・・」

 

いろいろな思い出が駆け抜けていく。

相棒と共に舞った青い空。

訓練で駆け回った緑の森。

城壁で仲間と見た赤い夕焼け。

 

その全てはあの時の出会いに始まっている。

 

「やっぱり、隊長と出会ったところからか・・・」

 

そうして、ハングの昔話は始まった


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