黒部市で明治時代から続く老舗の酒蔵で、この秋、県内ではじめて酒造りの最高責任者、女性の杜氏(とうじ)が誕生しました。
1度は諦めた夢を追い、特別な思いを胸に奮闘する姿を取材しました。
辺りを包むお米を炊いた時の甘い香り。
寒さが一段と増すこの季節。
酒蔵では、日本酒造りが最盛期を迎えています。
名水の里、黒部市生地にある創業140年を迎えた皇国晴酒造。
蔵を仕切る、岩瀬由香里さん。
この秋、県内で初めて誕生した女性の杜氏です。
*皇国晴酒造杜氏 岩瀬由香里さん「絞りあがった一つひとつが違った味わいなのでそこが(酒造りの)魅力かなと思う」
室温30℃を超える麹室での力仕事。
気の抜けない作業が続きます。
*皇国晴酒造杜氏 岩瀬由香里さん「ひっくり返したりするとき力がいるが、それもおいしいお酒になるためかなと思って」
由香里さんは和歌山県出身。
大学時代に麹の研究をしたことがきっかけで酒造りに興味を持ち、地元の酒蔵で働き始めました。
その後、大学時代に知り合った皇国晴酒造の今の社長と結婚。
長年、酒蔵の味を守り続けてきた杜氏が引退することになり、由香里さんが受け継ぐことになりました。
*皇国晴酒造杜氏 岩瀬由香里さん「昔描いていた夢をもう一度、皇国晴酒造でスタートしたらいいのではないか。杜氏やってみたらいいのではと(社長に)言ってもらったので、本当に経験不足だが皆で造りたいなと思って、今杜氏をしている。お酒を飲んだ人が笑顔になってその場をやわらかい雰囲気にできるような、そういうお酒を造っていきたい」
この日は、由香里さんにとって特別な日でした。
*皇国晴酒造杜氏 岩瀬由香里さん「きょう絞っているお酒です。今シーズン1本目ですね。これが今発酵中の(お酒)。プクプクしているのを見るとなんだか楽しくなりません? いい香り。(新酒は)すっと飲みやすくて、ふわっと香るようなお酒になるんじゃないかな」
由香里さんが杜氏として初めて仕込んだ新酒です。
*皇国晴酒造 岩瀬新吾社長「バランスがいい、辛みもしっかりして、これだったら"生"でも出せるし」
*皇国晴酒造杜氏 岩瀬由香里さん「これからもっといいお酒が出来るように」
*皇国晴酒造 岩瀬新吾社長「できるできる、大丈夫。心配する必要ない」
*皇国晴酒造杜氏 岩瀬由香里さん「おいしいです。もっとこれからたくさんの人が飲んで笑顔になってくれるような酒を造っていきたい」
皇国晴酒造、杜氏、岩瀬由香里さん。
伝統の味を守りながら、より愛されるものへ…。
試行錯誤する日々が続きます。
由香里さんは、伝統を受け継ぎながらも、新たな麹菌を使った酒造りにも挑戦していて、お酒の新たな可能性を発信していきたいということです。