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家賃滞納による明け渡しは「不当」…最高裁、保証会社の「追い出し条項」で初判断

読売新聞 / 2022年12月13日 10時51分

 賃貸住宅の借り主が家賃を2か月以上滞納するなどした場合に、部屋を明け渡したとみなす家賃保証会社の「追い出し条項」の是非が争われた訴訟の上告審判決が12日、最高裁第1小法廷であった。堺徹裁判長は「消費者の利益を一方的に害する」と述べ、消費者契約法に基づき条項の使用差し止めを命じる初判断を示した。借り主の保護を重視した判決で、不当契約の抑止につながるとみられる。

 問題となったのは、家賃保証会社「フォーシーズ」(東京)が借り主との間で結んだ保証契約の条項。▽家賃を2か月以上滞納した▽連絡が取れない――といった場合に部屋を明け渡したとみなす内容で、保証会社などは家財道具を運び出すことができた。

 同小法廷は、賃貸住宅の貸主と借り主が結ぶ賃貸借契約は双方の信頼関係に基づく継続的契約だと指摘。契約が解除されれば、借り主が生活基盤を失う重大な事態を招きうると述べた。

 その上で、保証会社は賃貸借契約の当事者ではないのに、その一存で借り主が部屋を使う権利が制限されるのは「著しく不当だ」と言及。「条項は借り主と保証会社との間に見過ごせない不均衡をもたらすものだ」として差し止めを認めた。

 1審・大阪地裁判決は、原告の特定適格消費者団体「消費者支援機構関西」(大阪)の請求を認めたが、2審・大阪高裁判決は「条項には相応の合理性がある」として認めず、同団体が上告していた。同小法廷は2審判決を破棄し、同社の逆転敗訴が確定した。

 民間信用調査会社などによると、同社の2021年7月期の売上高は約60億円。業界内では中堅に位置づけられている。

回収方法 トラブル多発

 国土交通省によると、不動産の賃貸借契約で家賃保証会社が利用されたケースは2010年時点で39%だったが、21年は80%に増加した。

 一方、トラブルも多く、同省などによると、全国の消費生活センターに寄せられた相談は17年以降、毎年500件台前後で推移。滞納分の回収方法に関するものが目立ち、「深夜に訪問されるなど、回収が強引で 執拗 しつよう」「『借金してでも返せ』と言われた」といった事例もある。

 判決後の記者会見で原告側代理人の増田尚弁護士は「他社がどういう条項を使っているかは厳密には分からない」としつつ、「類似の条項を設けている保証業者は見直しを迫られることになる」と話した。

 谷本圭子・立命館大教授(民法・消費者法)は「最高裁は借り主の生活基盤の維持を重視した判断を示しており、不当な保証契約の抑止力となるだろう。不当な条項を設けさせないようにする制度を国が作ることも検討すべきだ」と指摘している。

◆家賃保証会社=借り主が家賃を滞納した場合に貸主に立て替え払いし、その分を借り主から回収している会社。近年は親が高齢で連帯保証人を頼めないといったケースが増え、貸主側が借り主に保証会社と契約を結ぶよう求めることもある。2000年代に新規参入が相次ぎ、現在は250社以上存在する。

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