興味深い記事がありました。
ひきこもりの分析で対立 厚労省「精神障害」、内閣府「社会風潮」
産経ニュース2010.12.5 09:06
産経ニュース2010.12.5 09:06
「ひきこもり」の原因は精神障害か、それとも社会風潮か-。ひきこもり支援のあり方を検討するため、厚生労働省と内閣府がそれぞれ実施した調査で異なる原因分析が提示された。「原因は精神障害」とする厚労省に対し、「原因は生きづらい社会風潮の進行」とする内閣府。関係者の間には困惑が広がっている。
厚労省は5月「ひきこもりの評価・支援に関するガイドライン」を発表した。策定責任者の斉藤万比古(かずひこ)・国府台病院精神科部門診療部長によると、ひきこもりは全国推計で約26万世帯にのぼり、専門機関で受診した場合、ほぼ全員に何らかの精神障害がみられたという。原因が精神障害にあるとすれば、国が検討している「障がい者総合福祉法」(仮称)の適用対象となる可能性もあり、NPO法人「全国引きこもりKHJ親の会」の幹部は「背景に精神障害があると示された意味は大きい」とする。
斉藤氏は「従来は社会風潮を原因とする解釈が主流だったが、効果的な支援策が打ち出されてきたとは言い難い。新しいガイドラインは、現実に苦しんでいる人々を支援する指針となることを目指した」と話す。
一方で厚労省のガイドラインについて「『ひきこもりは病気や障害である』との誤解と偏見を広げる」との批判の声もある。NPO法人「ニュースタート事務局」の二神能基(ふたがみ・のうき)代表は「厚労省の調査対象は専門機関で受診した若者だけで、しかも184人と非常に小人数。非科学的で実態とはまったく異なる」と指摘する。
厚労省に対し内閣府は7月「ひきこもりに関する実態調査」を公表した。5千人を対象とした無作為アンケートを実施したところ、「職場問題」「病気」「就職活動失敗」が3大要因だった。内閣府調査で企画・分析の座長を務めた明星大人文学部の高塚雄介教授は「厚労省の調査方法が妥当かどうかは疑問がある。精神障害も一部にあるが、われわれは、スムーズな人間関係を実践できない人を『欠陥品』として放逐するような社会風潮の拡大がひきこもりの主な原因と分析した」と話す。
国の異なる見解について、NPO法人「全国不登校新聞社」の石井志昂(しこう)編集長は「ひきこもりの子を持つ親には『うちの子は病気なのか』『育て方が悪かったのか』などの戸惑いが広がっている。ただ一番の問題は、ひきこもり当事者の多くが求める支援に出合えず、『もういいや』と思ってしまっている点。適切な支援がなされていない証明だ」と指摘している。(小野田雄一)
なぜ意見が対立するのでしょうか?それは、真実ではないデータが含まれているからです。では、誰がどういう意図で嘘を散りばめるのでしょうか?これを見れば明らかになるでしょう。
斉藤万比古氏:
http://blogs.yahoo.co.jp/kebichan55/50489718.html
全国引きこもりKHJ親の会
http://www.khj-h.com/
ひきこもり親の会は、SADネットと連携し、もはや精神医療産業の傘下にあるのです。しかし、そうなってしまうのも無理はないという一面もあります。
彼らには支援がないのです。ひきこもり当事者も、その家族も、自分たちの力ではどうにもならないところまできているのです。しかし、彼らが助けを受けるための法的根拠はほとんどありません。
そこに精神科医がささやくのです。精神障害と認定されたら、福祉という救済の道が開けますよと。
これは実際、悪魔の取引です。確かに、精神障害というレッテルをもらえたら、それなりに支援を受けられるでしょう。しかし、それと引き換えに失うものは非常に大きいといえるでしょう。ひきこもりを支援する精神科医は「SSRIや抗不安剤を使うと、社会参加が早まります」と堂々と述べていますが、本来薬が必要でなかった人々にこのような薬が投与されることで、どんな悲劇が待ち受けているでしょうか?何もしない方がはるかにましだったというストーリーはいくつもあります。
このパターンは、発達障害支援にも当てはまります。支援を欲する親の思いを、精神医療産業は、自分たちの市場拡大に利用したのです。
これらの現象は、医療化(medicalization:もともと医療的問題でなかったことが、近代医療の対象として取り扱われていくことをさす)の一種として捉えられます。もっとも、操作的診断を基盤とする現代精神医療を、はたして本当の意味で医療というカテゴリーに含めてよいのかは別問題ですが。
約26万世帯という大きな潜在的市場を獲得したいという精神医療産業の隠された意図の前に、内閣府側の最後の良心が立ちはだかっているという構図です。
問題は精神医療産業だけではありません。そもそも、彼らに付け入る隙を与えている我々にも問題があります。「発達障害」「精神障害」というレッテルがなければ支援が受けられないという社会は、やはりおかしいと言わざるを得ないでしょう。
精神医療における問題のほとんどが、実は全く同じ構図だということがそろそろ理解できてくることでしょう。
問題が発生する(その原因は、ほとんどが個人や組織の無責任)
↓
問題の本当の原因に直面しないため、解決策がわからない(ほとんどの人は、自身や他人の無責任さに直面できません)
↓
問題を解決する専門家として精神科医が自分たちを売り込む
↓
それを受け入れ、責任を専門家に丸投げする
↓
さらなる混乱、問題、悲劇
↓
問題の本当の原因に直面しないため、解決策がわからない(ほとんどの人は、自身や他人の無責任さに直面できません)
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問題を解決する専門家として精神科医が自分たちを売り込む
↓
それを受け入れ、責任を専門家に丸投げする
↓
さらなる混乱、問題、悲劇
本来、心の専門家と呼ぶに値する人は、人が問題に向き合えるように手助けし、その人が本来持っていた責任や決断能力を回復させることができる人です。向精神薬によって本当の問題から避けるように人々を導き、クスリに逃げる人々を大量に作り出すような精神科医ではありません。