12月、寒さも本番の今日。トレセンは時期外れとも言える大嵐に襲われていた。時刻はすでに18時を回り、辺りは暗くただ闇の中で雨風の音のみが響いている
念の為の装備品。ヘルメットや長靴、その他も用意済み。……まぁ大丈夫だとは思うが、こういうのは念には念を入れておくに越したことはない

「んじゃ、また明日。うっす」

姐御の心配そうな声に返事をして通話を終える
今日、この日のミッションは極めて単純明快だった
この嵐がプレハブ小屋を損傷させる恐れがあり、もしも万が一本当に屋根や壁、窓などに被害が出た場合。トレーナー及び姐御に連絡すること
可能ならば修理を行うが、無理はせず安全を第一にして場合によっては避難すること
泊まりがけになるので、最初は姐御も一緒にやると言い出していたのだが本人が少し後にレースを控えてる身だったのでトレーナーと相談した結果ストップをかけた
エールちゃんソングラインちゃんも声を上げてくれたが、流石に後輩達に押し付けるわけにもいかないので同上
姉貴、聖剣先輩、魔女っ娘はレースその他で不在。むしろ出先は大丈夫なのだろうかと逆に心配になってくる

「さて、これで準備はオッケーッスね」

というか、本来は自分もやらなくていいと言われたのだが、こればっかりは性分だ。まさか倒壊ということはないだろうけど、雨漏りくらいは普通にあり得そうなので気になってしまってしょうがなくてここに来たわけだし
一応生徒会側にも泊まり込みの申請は通してあるので問題はないだろう
…………仮に問題があるとするならば、それは

「ぷっきゅい。電話終わったプイ？」

ここに、なぜかこの人がいることくらいだろうか

「……今からでも戻りません？送りますんで」
「いやプイ」

なんでいるんだ、この人

●

「どっから嗅ぎつけてきたんスかまったく」

窓の外の暴風の音の中、ココアを淹れて大きなため息
こたつに入ってぬくぬくと目を細めているプイ先輩に呆れながら同じくこたつに入り、テレビをつける

「ていうかマジで許可とってきたんでしょうね」
「その辺りは問題ないプイ。ちゃんと外泊届け出して受理されたプイ」

手間取ったけど、とボソリと聞こえたのは無視しよう。そうしよう
一体どこから情報が漏れたのか、「一緒にお泊まりするプイ」とか言い出してお泊まりセット担いでやってきたのが今日の午後
一人で静かな見張り当直だったはずなのに、まさかの遠足気分になってしまうとは
まぁ、正直一人きりでいるよりはいいのかもしれないけど

「万が一の時は速攻で避難してもらうんスからちゃんとヘルメットとかの位置確認しておいてくださいッスよ」
「ちゃんと自分の一式揃えてあるプイ。ヘッドライトとかも万全プイ」
「……さようで」

いつの間にかヘルメットや長靴、安全靴、つなぎ、その他安全装備一式……それを自分用のを揃えるところまできたかと実感する
すっかりここに染まっちゃったなぁと思わないでもないが、本人がいいならそれでいいかと。今後もやっていくのであれば絶対必要なんだし
そもそも普通のチームにはこんなもん必要な……いや、菜園がどんどん拡大してる覇王のところとか例外は他にもあるけど

「つっても、マジでただの見張りなんでやることもないッスよ」
「それでもいいプイ。色々持ってきたし時間なんてすぐ潰せるプイ」

そう言ってバッグを取り出してくる。本気で遊ぶき満々じゃないかと

「明日には晴れるって話ッスけど、どうなることやらッスよ」
「こんな大嵐久しぶりプイ」
「大雪も参るッスけど、嵐はシンプルに面倒ッスからね。ガラスでも割れたらコトなんで、寝る時は離れた場所に布団敷くッスよ」

テレビでもあちこちで被害が出ているという報道がなされている。油断はできない
本当に普段忘れがちなのだが、プレハブ小屋は簡易建築だ。普通の建造物が耐えられる嵐であっても、何が起きたっておかしくはない
前に調べたら台風で壁が剥がされた写真とかも出てきたし……いやそこまでは流石にないと願いたいけど

「まぁ、とりあえずはゆっくりするッスよ。気を張り過ぎても疲れちゃいますし」
「プーイ。後でDVD見るプイ」
「ええ、いいッスよ。とりあえずこのニュースの後の番組だけ見せてもらっていいッスか？ちょっち楽しみにしてるんで」
「オッケープーイ」

二人コタツに入ってぬくぬくと。ココアを飲みながら、外の様子とは全くうって変わっての穏やかな時間
テレビではそろそろニュースが終わりそうだ。クリスマスに向けての各地の様子とか色々。だんだん騒がしい時期になってきたものだ

「そういえば今年は帰省しないプイ？」
「あー……ウチの姉貴もパスッスね。例年の通りッスけど」
「もうちょっとご実家に顔出してもいいと思うプイ」

いやまぁぐうの音も出ない正論だけど。こっちにも事情というものがですね……

「プイ先輩はお仕事大丈夫なんスか？」
「んー、とりあえずみんなと初詣行くくらいの時間はもぎ取るプイ。あとはまあ例年通りって感じプイ」
「もぎ取るって……大丈夫なんスか本当に」
「そのくらいのワガママ通って当たり前の仕事はしてるプイ。文句は言わせないプイ」

プンプンプイとご立腹。さてはここ最近また忙しくなってきたのでストレス溜まってるな？と
今日ここに来たのもその発散の一環なのだろう。実は相当疲れてるのかもしれないし、だとすれば無碍にはできまい
いやまぁ、そのためにはまずこんな危ないところ来るなよとなるのだけど、最早言うだけ無駄か
テレビは番組が変わり、ウマ娘アイドルによる無人島開拓番組へ。最近また色々やってるなぁこのユニット

「こういう番組好きプイ？」
「いや、普段あんまりテレビってみないんスけどね。これ少し前にちょろっと見て、今やってる企画の顛末だけ気になっちゃったんですよ」
「うーわ、凄いこと平気でやってるプイ……これ出来るプイ？」
「いやこんな職人技は流石に無理ッスよ」

人のことを何だと思ってるんだ

「え」
「え？」

………え？

●

ｷｼｬｰ!!! ｷｬｰ!!! ｷﾞｬｰ!!!

「ぷ、ぷきゅう………！！！」
「ホラー苦手ならなんでこんなDVD持ってきたッスか………」

テレビ画面の中では、何と言うかその、こう……若干チープなモンスターが若者たちに襲い掛かっている
先ほどプイ先輩が持ち込んだDVDを再生してみたのだが、開始少ししてからずっとこの有様と言う訳だ
自分としては所々ツッコミを入れたかったりするのだが、プイ先輩は相当刺さったらしくプルプルとさっきから震えっぱなしだ
コタツで対面に座ってたのがいつの間にか隣に移動してきてるし。某破壊神どもの置いて行ったクッション、二人並んで座れるせいで大活躍だな最近

「そ、ソダシちゃんがおススメしてたってエールちゃんから聞いたプイ」
「オッケー納得ッス」

プイ先輩は気づかなかったみたいだけど、多分その時のエールちゃんの目は少し濁ってたと思う
最近もまた上映会やってたみたいだし……割とソングラインちゃんも巻き添えになりつつあるとかなんとか

ｼｬｰ!!!!!!!!

「ぷ、ぷきゅう！！！！！！！！」
「いたたたたたたたたたた。ちょ、力強、あだだだだだだだ」

もうベアハッグかって勢いで抱き付かれて思わず悲鳴をあげる
もう映画どころじゃない。ていうか背骨折れあだだだだだだだ

「こ、こういう映画得意プイ？怖くないプイ？」
「こ、怖い云々依然の問題が多々ですね。あだだだだだだ」

パニックホラー系統は別に苦手でも得意でもないけど、これはその、作風と言うか完成度が
それに加えてプイ先輩による圧力（物理）があって画面に集中などできはしない
ていうかこれ、エールちゃん多分『普通に怖くない』やつを善意で選んでくれた可能性があるな？多分あの子の事だ、本当の特大地雷は避けてくれてるだろうし

「ほ、ほら。ココア飲んで落ち着くッスよ」
「う、うぅ……こんなに怖いなんて聞いてないプイ」

ｷﾞｬｵｰ!!!!!!!!!!!!!!

「ぷきゃあ！！！！！！！」
「ああ、もう。ほら、大丈夫ッスよ」

必死に尻尾を自分の尻尾に絡めてくるプイ先輩を頭を撫でて落ち着かせようとする
この人、こんなにホラー駄目だったのか……いつぞやのヘビが出た時のことを思い出す。あの時もこんな感じだったなぁ……この人にとってヘビも怪物ジャンルなのか
心霊系もダメなのか、怪物系がダメなのか。それはわからないけど、とにかくこの人に気軽にホラー映像を見せるのはやめておこう。コンディションに影響しかねない
と、そんな時

ﾊﾞﾂﾝｯ

「ぷきゃーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー！！！！！！！！！！！！！！！！」
「お、落ち着くッス！！！ただの停電あばばばばばばばばばばば」

唐突に暗転する視界。参ったな、停電か
その瞬間プイ先輩の抱き付く力も一層強くなって、マジで息ができなくなってくる
ええい、この怖がり三冠バめ。人の背骨をへし折る気か

「大丈夫、大丈夫ッスよ」
「ちゃんといるプイ？そこにいるプイ？」
「めっちゃ抱き付いてるじゃないッスか。大丈夫、ここにいますよ」

そう言ってそっと頭を撫でる
暗くて見えないが、これ多分もう涙目とかじゃなくてスンスン泣いちゃってるやつだ
普段なら停電くらいでこうはならないんだろうけど、ホラー映画効果ですっかり怖がりセンサーが過敏になってるようだ
ソダシちゃんセレクト映画の効果は絶大だったわけだ。ここまでいい反応してくれるとはあの子も思うまいて

「まだプイ？まだ直らないプイ？」
「多分すぐ直るとは思うッスけど……」
「うぅ、こんなに怖いとは思わなかったプイ。ホラー映画はもうこりごりプイ」

……あのチープなストーリーからどんなオチになるのかは逆に気になっているんだけど、それは今度にしておこうか。エールちゃんツテでまた借りて一人で……いやエールちゃんと一緒に観ようか
とにかく頭を撫でて落ち着かせる。まったくもう、手のかかる先輩だ
つーか髪サラサラだなこの人。若干嫉妬するくらいに
と、そんな事を考えていたら……窓の外に、眩い閃光が走った

「ぷきゃあ！！！！！！！！！」
「お、落ち着くッス。雷ッスよ雷。もうなにしても驚いちゃってるじゃないッスか」

ちょっとした雷にもここまで怯えてしまうとは。何とか落ち着かせる方法はないものか

「･･･あ、そうだ。プイ先輩。服掴んだままでいいんで、ちょっと移動するッスよ」
「ぷ、プキュ？どこ行くプイ？怖いプイ」
「すぐそこの棚ッス。それと台所ッス」

携帯のライトを付けて、後ろにくっついたままのプイ先輩を引き連れて席を立つ
足元に注意しながら目的の棚について……おし、あった

「非常用のランタンライトッス。これ点ければ………」
「あ、結構明るいプイ………」

見た目はアンティークなそれだが、中身は立派なLEDライト。防災用具を選定する時に姐御リクエストで買った物だ
携帯のライトと違って周囲をしっかり照らしてくれるそれはこういう時に重宝する。それに携帯の電源は非常時には温存しておきたいし、懐中電灯とかはちゃんと別個に買っておくに越したことは無い
ついでに移動用に懐中電灯を一個とって台所へ。ラップをかけられた皿を手に取って、コタツに戻る

「これは？」
「……内緒ッスよ」

その皿の上に乗っているのは、なんの変哲もないおにぎり。ただ、ちょっと多めだけど

「一人で暇になるしってことで、夜食用に握っておいたんス。一緒に食べるッスよ。お腹いっぱいになれば落ち着くッス」
「……美味しそうプイ」
「中身は梅干し、鮭、焼きたらこッス。さ、いただきますッス」
「いただきますプイ」

パクリとおにぎりを頬張って、ようやっと絞ってた耳が元に戻ってくれたようだ
ランタンの明かりの中で食べるおにぎりっていうのも中々非日常感があっていいものだ。飯食った後だから本当はちょっとアレかもだけど、内緒って事で

「美味しいプイ。焼きたらこだったプイ」
「梅干しもいいッスよ。やっぱ定番ッスからね」
「なんだかやっと落ち着いてきたプイ。うう、ホラー映画は当分いいプイ……」
「それならよかったッス。まぁ人によって合う合わないはあるッスから……」

いろんな意味でね

「さ、食べたら歯磨いて、早めに寝ちゃうッスよ」
「そうするプイ。怖すぎてとてもじゃないけど夜更かしできないプイ」
「インスタントの味噌汁あるッスけど、飲みます？」
「欲しいプイ。なめこがいいプイ」

こうして、夜は更けていく
その後。停電は結局寝入るまで直ることは無く、暗い中で布団を敷いて二人並んで寝ることになって
それでも、雨漏りやガラスが割れたりといった被害が出なかっただけでもヨシとするか、なんて

（思っていたより、騒がしい見張りになっちゃったッスねぇ）

少なくとも、騒がしくはあったけど
平和に終われた方なのだろう、お。自分に言い聞かせて

「おやすみなさいッス」
「おやプイー」

まだ怖いのか、背中合わせで尻尾を自分の尻尾に絡ませてくる先輩に苦笑いしながらも
騒がしい外を忘れるかのようにして、二人して眠りへと落ちていった

●

「……ふふ」

早起きは三文の徳………なんていうけど
昨日のことが心配になって早めに起きて様子を見に来たけど、これが見れたならその甲斐はあったかな、なんて

「……先輩方、ゆっくり寝てますね」
「まだ時間はあるし、少し寝かしておいてあげようか」

メッセージで停電の件も含め聞いていたけど、特にそれ以外の被害はないようでよかった。まぁもしも何かあればすぐ電話するとは言ってたし
同じことを考えて早出してきたソングラインちゃんと、その後ろでちょっと眠そうなエールちゃんもニコニコ笑って

「カレン先輩。それじゃ、こっちは先にロードワークに出ますか？」
「いきますか！」
「ふふ。そうだね。じゃあ、行こうか」

そっとドアを閉める前に、こっそり中をもう一度
抱き付かれて若干寝苦しそうなあの子も、とても安心した顔で抱き付いてるあの子も
普段頑張り続けてるんだから、少しくらいお寝坊しても許されるだろうし

「じゃ、まずは準備運動からしてロードワークね。早朝だし、昨日の大嵐の後だから、ぬかるみとか落下物には気を付けて」
「はい！頑張っていきましょう！」
「鍵、閉めておきますね」

そうして、そっと戸を閉めてトレーニングへ
きっといい夢を見ていると思うから、もう少しだけ。そうして、一足先にグラウンドへと駆け出していく

（お疲れ様）

後で労ってあげないとね、と
ちょっとは先輩らしいことをしてあげようかななんて、そんな気分で走り出した

以上。いいウイスキー貰ったので酒飲んで舎弟した

もっと酒飲め

さりげなく尻尾ハグしやがって…

上等なつまみでいい酒呑みおって…

イチャイチャしおってからに

尻尾ハグしても何一つ動じない…

もう年末だけど長いこと舎弟してるな

>尻尾ハグしても何一つ動じない…
熟年夫婦…

ふふ…次はもっと怖いの持っていくし…

>もう年末だけど長いこと舎弟してるな
気付けばもう７４本目になりました
年末にまたまとめようと思います

>気付けばもう７４本目になりました
なそ
にん

なそ

>>もう年末だけど長いこと舎弟してるな
>気付けばもう７４本目になりました
>年末にまたまとめようと思います
なそ
にん

驚きすぎ！

明日はエールちゃんの香港スプリントかぁ…勝つのは無理だろうけど頑張ってくれ…

寒い夜に濃厚なオルプイ…最高だな

>明日はエールちゃんの香港スプリントかぁ…勝つのは無理だろうけど頑張ってくれ…
大外だもんな…

酒を呑ますとオルプイを吐くらしい

>明日はエールちゃんの香港スプリントかぁ…勝つのは無理だろうけど頑張ってくれ…
がんがえー！する準備はできてる

この三冠馬コンビいつ見ても可愛いな…

ちょいちょいプイの闇が深くて笑ってしまう

URAがね…

すっかり舎弟の隣が定位置になってるなこのマスコット

>明日はエールちゃんの香港スプリントかぁ…勝つのは無理だろうけど頑張ってくれ…
納得できる走りを見せてくれたらな…

そもそも🍔だからどうなるか分からない…

>プンプンプイ
>おやプイー
こういうところ俺の中の🦐心が刺激される

プイをよくない目で愛でることを🦐で説明できるの笑ってしまう

その強さのあまり望まずとも孤高の頂に立ってしまう三冠バの隣に一緒にいてあげられるのは三冠バだけなんだ…

あぁ～^心が🦐になるんじゃあ～^

畑の様子見てきちゃダメプボ？

>畑の様子見てきちゃダメプボ？
おうちに入ってなさい

かわいいプイプイを見てにやける🦐を無言で部屋に引っ張っていく📞くんの幻覚が見えた

>畑の様子見てきちゃダメプボ？
ハーッハッハ！！ダメだ！！！

ﾍｯﾍｯﾍｯ
用水路の様子見に行ってきます～
ﾍｯﾍｯﾍｯ

>ﾍｯﾍｯﾍｯ
>用水路の様子見に行ってきます～
>ﾍｯﾍｯﾍｯ
ハーッハッハ！！この時期の水田に何が植わっているというんだい？！

>>ﾍｯﾍｯﾍｯ
>>用水路の様子見に行ってきます～
>>ﾍｯﾍｯﾍｯ
>ハーッハッハ！！この時期の水田に何が植わっているというんだい？！
季節すら間違えるズブウマ…

クソ映画ハンターソダシ…

もう結婚すればいいのに